第15話 R

目の前に、エルフの美丈夫が現れた。

来る途中マインは笑って話していたから、悪い人ではないのだろうけれど・・・

よく見るとマインの笑顔が引きつっている気がしなくもないのは、気のせいだろうか?

「君がリェースだね?こっちがスフェル君で、こっちがイオル君。」

エルフ特有の長くとがった耳に、蜂蜜色の金の髪、澄んだ翡翠の瞳を輝かせてエルフの美丈夫が話しかけてくる。

私は、見事に人見知りを発動させてコクコクと頷いただけだった。

マインが一通り話してあるよと言ってくれたので、その後のエルフの美丈夫の問いかけにも、頷くか首を振るかで答えた。

まるで宝物を見つけた少年のように、抱いたり撫でたりしながらスフェルとイオルに話しかけるエルフに2匹も驚きを隠せないで戸惑っているみたいだった。

「名前・・・」

エルフの美丈夫に、やっと話しかけた一言だった。

毎回嫌になるほど、言葉が口から出てこないことが悔しくて、下を向いてしまった。

「・・・?そう言えば、まだ名乗って無かったね?失礼した。悪気は無いんだよ?」

エルフの美丈夫は、考えながらも理解してくれたらしい。

「私は、ラスバル。見ての通り、エルフだ。従魔術師をしているよ。私の従魔は、我が家でお留守番中だが、今度会いにおいで。」

従魔の事を話す時だけ、にっこりととろけそうな笑顔を見せて自己紹介してくれる。

悪い人じゃない、そう信じても良さそうだと思った。

「ラスバルさん、それで?この子達は、街に入っても大丈夫?」

マインが待ちくたびれて呆れた様に、ラスバルさんに問いかけた。

「もちろんさ。ちゃんと証も耳にあるし、様子を見る限り悪い子じゃないのがわかるしね。何かあれば私の名前も出していいよ。」

イオルの頭をご満悦で撫でながら気前よく太鼓判を押してくれた事に、マインと2人でホッとした。

ラスバルさんと共に門まで来ると、門兵の2人に「ようこそ!」と、声を掛けられた。

びっくりして、小さく頭を下げるのが精一杯だったが何も言われなかった。

道すがら、マインが門であったことを教えてくれた。

ラスバルさん、変態なんだな・・・

だから、マインが引きってたのか・・・

マインは、こっそりずっと口説かれていて躱しながら説明するのが大変だったと愚痴っていた。

無事に街に入れた事だしと、ラスバルさんと別れて冒険者組合を目指した。

街には、言葉がわからなくても見ればわかるように大きな看板が至る所にぶら下がっている。

街の入口には大きな案内板があって、それを見ればどこに何があるのかわかるようになっていた。

私たちは、街の入口から真っ直ぐに伸びる大通りを進んで冒険者組合に辿り着いた。

私はマインが振り向いて小首を傾げたのを見て、無意識にマインの服の裾を掴んでいた事に気付いた。

慌てて手を離すと、マインがそっと手を繋いでくれる。

その温かさに力を貰って、組合へ足を踏み出した。

「とりあえず、受付に行こう。話をしなくちゃ。リェース、傍にいてね。」

マインの言葉に頷いて、握った手に少しだけ力を籠めると同じ力が返された。

「すいません。」

マインが受付の男性に声を掛けて、小さな包みを差し出して説明を始めた。

私は、途中で相槌を打ちながら過ごした。

受付の男性は、話の後すぐに駆け出して階段を飛んで上がって行った。

帰ってきた時には、体の大きな男性を引き連れていた。

「おれは組合長をしているアグリだ。話をもう少し詳しく聞かせてほしい。すまないが、上まで来てくれないか。」

有無を言わさぬ感じだったので、仕方なくついていった。

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