第14話 M
あれから、流石に私もリェースも眠れなかった。
リェースと、大きな羽は素材として売るかどうかを話し合った。
結局、すぐに売っては小さな鷹の王の存在が見つかってしまうかもしれないと、リェースの魔法カバンでしばらく眠ってもらうことにした。
小さな金色の羽は、ありがたく記念に二人の装飾品を作ることにした。
この羽は、まだ生まれたての産毛で柔らかく加工がしやすいと思われた。
きっと強力な鑑定魔法でもない限り、誰も鷹の王の産毛だとは思わないだろう。
どんな装飾品にしようかと、話を弾ませて朝を迎えてしまった。
徹夜でしょぼついた目を擦りながら、出発の準備をして簡単な朝食を済ませる。
今日は、森を抜けガングリードの街へ向けて街道を逸れて進む。
ゆっくり歩いて3~5日の工程を、一般的な狼くらいの大きさに育ったイオルをなるべく悪目立ちさせずに進む予定だ。
昨晩の冒険者たちの痕跡も、なるべく探しながら進もうと決めていた。
昨日の男性の死体は、身元の証明に繋がる冒険者証と身に着けていた装飾品を除いて森に埋めた。
魔鉄鷹に空中で突き刺された体は、見るも無残な状態だった。
血の匂いと死体の臓物の感触に猛烈な吐き気に襲われ涙目で我慢しながら、埋めたことは鮮烈に記憶に残ってしまった。
彼の冒険者証と腕に嵌めていた腕輪を小さな布で包んで、ガングリードまで届けなければいけない。
辛い記憶を振り払う様に、昨晩の徹夜同様に明るい話題を話し続けながら歩いて体力を余分に消耗してしまったことは、誰も怒れないことだろう。
森を出るまでに、戦闘の痕跡は見つけたものの冒険者は見当たらなかった。
流石に森を出てから寝るのがまっ平らな平原のど真ん中とは行かず、街道沿いの拓けた休憩場所に落ち着いた。
街道沿いに所々に設けられた休憩場所には、火を熾すための道具や場所も設置されていて中々に便利だ。
何組かの冒険者が一緒になることもあるのだろうけど、幸いなことに今日は私達だけだった。
「マイン、最初に薬売りたい。」
眠たそうに目を擦りながら、リェースが話しかけてくる。
「いいよ。どこで売るかは決まっているの?」
私が返事と一緒に聞くと、リェースは冒険者組合の隣に薬師協会があるはずだと教えてくれた。
どうせ冒険者組合に届け物をするのだから丁度いいねと言うと、リェースは少し口の端を持ち上げて頷いたまま寝てしまった。
可愛らしい寝顔とその隣の白い小さなもふもふと、私の後ろにぴったりと寄り添っている暖かなもふもふに小さくおやすみと言ってから私も目を瞑った。
それから歩き続ける事3日目、やっとガングリードの外壁が見えた。
大きく堅牢な要塞を思わせるガングリードは、リェースの知識曰く「昔、魔物の氾濫から人々を守るために要塞化した街」だそうだ。
イオルを街に入れて良いのわからないことから、先に私が行って詳しい人を探してくることにした。
リェースは人と喋るのが苦手だからと連れてくるのは断固拒否の構えだったが、なるべく喋らなくていい様にするからとねじ伏せた。
私は、門兵の一人に声を掛ける。
「こんにちわ。あの、従魔がいるのだけれど、ちょっと特殊でだれか詳しい人に教えて貰いたいことがあるのだけど、どうしたらいいですか?」
「魔獣か?別に構わないが、なにが特殊なんだ?」
口ひげを綺麗に手入れしているらしきおじさん門兵が、聞いてくる。
「えっと・・・種族が?多分・・・?」
私の曖昧な答えに、うなりながらも隣の若い門兵を振り返って伝言してくれた。
「副隊長連れて来い。若い鬼人の女の子が従魔の事で困ってると言えば、飛んできてくれるだろうよ。」
若い門兵は、頷くが早いか駆け足で街の中に消えて行った。
「ちょっと待ってろな。別にとっ捕まえようとは思ってないから安心しろな。ただ・・・色々、気を付けてくれ・・・信用できるが、ど変態だから・・・」
口ひげ門兵は、かなり複雑な表情で私を見てから、深いため息をついた。
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