第9話 R
ぜったい、勘違いさせた・・・
ぜったーいっ、出て行ってって意味にとられた・・・
違うのに、なんで一緒に行きますって言えなかったの!私!!
だって、あんなに悲しそうな顔するから、驚いた。
びっくりして、何にも言えなくなった。
もしかしたら、マインさんもここに居るの辛かったかな?
ばぁさまの部屋は薬草の匂いしみついてるし、居間も狭いし。
緊張とか遠慮とか、色々あったかもしれない。
気付いてあげられなかったこともいっぱいあったかな。
あぁ・・・どうしよう・・・
このままじゃ、解体終わっちゃう。
言わなきゃ、ちゃんと・・・
マインさんはいつでも、ちゃんと私の話聞いてくれたじゃない。
ちゃんと話せば大丈夫、きっと。よしっ!
「マインさん、あの、後で、話・・・ちゃんと・・・」
私の渾身の勇気と共に口から出た言葉は、幼児かと突っ込まれそうだと思った。
「わかった。夕飯後に、話をしようか。とりあえずは、片づけてくるよ?」
私がこくんと頷くと、サッと大きくて重たいものを選んで納屋に片づけてくれる。
私が持てる限りで肉を持って食事の用意、マインさんが片付けの後に残りの物を運んでくる、というのがここ最近の流れだった。
人族の私よりだいぶ背が高くて、力が強くて、優しくて、瞳がきれいで・・・
ばぁさまの他に初めて、そばに居ても辛くないと思える人。
もう少し、一緒に居たい。
ちゃんと、話せるかな・・・もっと、知りたいし知って欲しい。
今日の食事は、簡単に下味をつけたステーキに切った生野菜と燻製肉のスープにした。
食後の果物もそこそこに、マインさんが話をしようとお茶を持って外に出る。
スフェルもイオルも口数の少ない私たちの雰囲気に何かを察したのか、そそくさと毛布を敷き詰めた寝床に行ってしまった。
「そんなに寒くはないね。いい天気だし、星も見える。」
マインさんは、何か吹っ切れた様に笑った。
「あの、私、話すのが・・・下手で、ごめんなさい。一緒に行きたい。」
私の一言で察してくれたのか、マインさんは驚いたあとで微笑んでくれた。
「ごめん、私の勝手な勘違いで辛い思いをさせたんだね・・・」
マインさんの言葉に、フルフルと頭を横に振って否定した。
「私が・・・ちゃんと、私が言えばよかった・・・」
ふと、マインさんの手が伸びて私の手を掴んだ。
「リェースさんが話すのが苦手なのは、分かってたのに待てなくてごめん。」
マインさんの手を握る手に少しだけ力を込めて、またフルフルと頭を振る。
「私、昔からなの。怖くて。笑われて、無視されて。」
少しづつ、昔話をした。
「魔力強すぎて、捨てられた。ばぁさま、たくさん教えてくれたけど。街で話できなくて、笑われて。それから、怖い。」
私の時間のかかる話し方も、自分が一番嫌い。
でも、考えないと喋れないから、もっと嫌い。
「私も、拾われっ子。私の養父は、ドワーフのじぃさま。鬼人のくせに魔力が低くてね、育たないと思われたんじゃないかって。じぃさまが浮世離れした人だったから、私も変人扱いでね。じぃさまが死んでから、村を追い出せれちゃったんだ。それが、この森に来た理由。」
マインさんと私の共通点に驚いて、マインさんを見ると紫の瞳には懐かしさとか寂しさとかが溶けている気がして、また少し手に力を込めた。
「同じね。私、ばぁさまが死んでから、ここで3年一人だった。喋るの久々で、言葉出すの忘れてた。」
「それ、わかるよ。私も、じぃさま死んでからあんまり喋らなくなった。同じだね。ねぇ、もう「さん」つけるのやめない?友達で姉妹みたいだと思ったんだ。だめかな?」
その提案に笑って頷くと、マインも笑って頷いた。
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