第24話
〜アレクside〜
ネクロス先輩と戦闘をしているフードの男が、フードを取りその姿を現した。
あれは……獣か?
「あのフードの男は獣人だったのね。」
俺の隣に来たセレスティアがそう呟く。
俺はセレスティアの方を見て、
「獣人? なんだそれ?」
「やっぱり知らないと思ったわ。獣人っていうのは、簡単に言うと獣の特徴を持った人間って思っておきなさい。身体能力は私達人間とは全然違うわよ。」
そうなのか。大丈夫なのかネクロス先輩は?
少し不安そうな表情で見ていると、エリス先輩も近くにやって来て、
「ネクロスくんなら大丈夫ですわ。悔しいですけれど、今のセントラル学園ナンバーワンはネクロスくんです。あの子が負ける所は想像出来ませんわ?」
あの人が学園の頂点……。
俺もいつかあの人に挑戦する事になるのだろうか。
エリスさんが笑いながら俺の背中に抱きつき、
「うふふ。アレクくん戦う男の目になっていますわ。古来から男が戦う目というのは、私達女の心を鷲掴みにするのですよ? あぁ! なんて素敵なんでしょ!」
「ちょ、ちょっと先輩! 離れてください!」
「そうよ会長! 今は大事な所なのに、こんな男に抱きついて。だ、ダメですよ!」
セレスティアが先輩を剥がそうとしているが、思いのほか先輩の力が強く全然離れない。
ってゆうか、抱きつく力が強すぎて痛いレベルだよ。
3人でじゃれあっていると、獣人の男から黒いモヤが漂ってきた。
先輩は俺を離し、黒いモヤを見て睨むと、
「あれは……魔に取り憑かれた者に現れる黒い魔力。もしかしてあの男は魔人ですの?」
「魔人?」
魔人については、セレスティアも知らなかった為、俺と同じように頭を傾けている。
「姫。魔人とは会長が言っているように魔に取り憑かれた者の事です。もっと簡単に言うと、クリスタルを身体に埋め込んだ者、という認識で大丈夫です。」
「フレイ。あなたは魔人の事を知っているの?」
「少しは。私の家は軍に所属しているので。」
「そう言えば、あなたのお父様はアストラル軍の上層部でしたね。」
へぇ〜。フレイの家は軍の関係者だったのか。
少し驚いた表情で見ているとフレイが俺の方を見て睨み、
「なんだ? 喧嘩でも売ってるのか?」
「なんで俺にはそんなに刺々しいんだよ!」
「我が家の家訓だ。」
「意味わかんねえよ!」
俺のツッコミを無視してフレイはセレスティアに説明を続ける。
一応俺にも聞こえるような声量で。
「魔人になるのは簡単です。クリスタルを体内に埋め込むだけ。それで普通とはかけ離れた力が手に入るそうです。」
「じゃあなんで皆それをしないんだよ?」
「馬鹿が。そんなものがリスクもなく出来る訳ないだろうが。魔人となった者は、現在判明しているだけでも短命、精神面の異常など色々な副作用があるそうです。」
セレスティアは顎に手を当て、
「なるほど。寿命と引き換えに強大な力を手にする。という事ね。」
「そうゆう事ですわ。魔人になると非常に攻撃的な性格に変わるらしいから特級危険人物に認定されますわ。」
「先輩。特級危険人物ってなんですか?」
「特級危険人物とは、あまりにも危険すぎるので国が多額の懸賞金をつけた指名手配犯の事ですわ。アレクくんも魔人には気を付けてくださってね?」
魔人か。覚えておこう。
俺達が話をしている内に、獣人の男が両手に黒い球体を作り出し、グレートマンティスに向かって投げた。
エリス先輩が銃を構え、
「あれは不味そうな雰囲気ですわ。撃ち落とします。」
銃を連射するが、球体は弾をすり抜け勢いが止まらない。
そして、グレートマンティスの中に入っていくと、
「キシャァァァ!」
氷漬けだったグレートマンティスが目覚めの鳴き声をあげた。
そして、先輩の氷を割っていき再び戦闘可能な状態となった。
先輩が驚きながら、
「Bランクのグレートマンティスには破ることはできないはず。皆さん注意してくださいまし。今の球体がなにかはわかりませんが、推測するに強化魔法ですわ!」
強化されたのか。めんどうな事してくれるな。
俺達は復活したグレートマンティスを倒す為に再び戦闘体勢をとった。
銃を構えている先輩が、
「あなたたちは強化魔法を持っていないでひょう? ここからは私がメインで戦いますわ。」
そう言い先輩は、銃を連射し注目を集めようとする。
しかし、通常弾ではダメージが入らないのかグレートマンティスは気にせず周囲を伺っている。
俺はフレイの方を見て、
「俺達も行くぞ。」
「わかっている。」
「2人とも待ちなさい! シルフ。風の加護をお願い。」
セレスティアが俺達に先程の加護を付与してくれ、準備は整った。
先輩は歯噛みしながら、
「本当に言うことを聞かない子達ですわね! それじゃ無理せず援護してくださいまし!」
「「了解!」」
いくら強化されたとはいえ、相手は片腕を切り飛ばされている。
付け入る隙はあるはずだ!
俺達がグレートマンティスに向かって走っていく時、後ろからセレスティアの声が聞こえ、
「この状況なら仕方ない。シルフ! 一度下がってちょうだい! フレアドラゴン出てきて!」
どうやらフレアドラゴンを召喚したようだ。
森が燃える心配はあるが、昆虫型のグレートマンティスには効果がありそうだな。
後方からの援護も期待できそうなので、俺は更に踏み込んでいく。
俺の接近に気付いたグレートマンティスが、鎌を振り上げる。
動きが単調でわかりやすいんだよ!
カウンターをとるべく、タイミングを測る。
グレートマンティスの鎌が振り下ろされ剣で弾こうとすると、
「アレクくん! 弾かずに避けてください!」
先輩からの声が聞こえ、急遽横に飛び回避する。
すると、グレートマンティスの鎌が地面に刺さろうとするが、刺さらずに地面を切り裂く。
なんてゆう切れ味だよ。
あれを受け止めるには俺の剣じゃ無理かもしれない。
そう思って冷や汗を流すと、
「あなたの剣は市販の物でしょう? それでは強化されたグレートマンティスの攻撃は防げませんわ!」
今までの経験から先輩は無理だと判断したのだろう。
「助かりました先輩。」
先輩の方を見ずに俺はお礼を言った。
さて、素早い攻撃を全て回避しないとダメなのか。
中々ハードルが高いな。
俺が攻めあぐねていると、グレートマンティスの後ろから、
「何をビビっている! 怖いのなら離れていろ!」
フレイが先程と同じようにグレートマンティスに連続で突きを放つ。
しかし、攻撃が刺さることはなく弾かれてしまった。
弾かれた事で隙が発生したフレイに向け、鎌の攻撃が向かっていく。
まずい! あのタイミングは避けれない!
フレイに鎌が触れそうになった時、
「
エリス先輩が放った魔法弾がフレイに当たり、鎌の攻撃を強制的に避けさせた。
横腹を抑えながらフレイが、
「すいません会長。助かりました。」
「油断しないでください。先程戦ったのとは全然別の魔物だと思って戦いなさい!」
俺達は少し距離を取り、グレートマンティスと睨みあった。
すると後方から、
「今よ! フレアドラゴン燃やしなさい!」
フレアドラゴンが口から高温の炎をグレートマンティスに向かって吐き出す。
「ギシャァァァ!」
かなり嫌がっているのがここからでもわかる。
やっぱり苦手なのは火属性か!
俺は試しにフレアドラゴンが吐いた事によって燃えた木に剣を当て、赤くなるまで熱した。
刀身が赤くなった剣を持ち、グレートマンティスに突撃する。
グレートマンティスは炎に焼かれ注意が散漫になっており、なんとか接近する事が出来た。
「これでもくらえ虫野郎!」
接近した俺は下から剣を切り上げる。
剣がグレートマンティスに当たると、斬る感触はなかったが代わりにジュワァァァと焼き付きなんとも言えない匂いが漂ってきた。
それなりにダメージがあったのか、グレートマンティスは後ろに飛び俺の追撃から逃げ出した。
手応えを感じた俺は、
「セレスティア! もう一回俺の剣を焼いてくれ! 次こそ決める!」
「私に命令しないで! フレアドラゴンやりなさい!」
再びフレアドラゴンの炎によって俺の剣が赤く熱を帯びていく。
次は確実に斬る為に、先程よりも長く剣を焼いていく。
熱くなった剣のせいで俺の手も焼けていくが、今は我慢だ。
グレートマンティスは俺から逃げようとするが、身体が動かないようだ。
足元をよく見ると、先輩が凍らせて動きを封じている。
「アレクくん! 今の私の魔法では少しの足止めしか出来ませんわ! 今のうちに早く!」
先輩からも援護を受け、俺は再び突撃する。
逃げられないと悟ったグレートマンティスは、俺を迎え撃つべく迎撃体勢をとった。
鎌の間合いに入ると、振り下ろしの攻撃が俺を襲う。
タイミング的に間違いなくグレートマンティスの方が先に攻撃が当たる。
しかし俺は気にせずに突っ込んでいった。
鎌が俺の胴体を真っ二つにしようとした時、グレートマンティスの腕のつけ根に土で出来た棘が襲いかかり、攻撃が中断される。
「さっさと決めてこい。」
3人の援護により、俺は隙だらけのグレートマンティスの懐に潜り込んだ。そして、
「これで終わりだ! くらえ!」
熱した剣がグレートマンティスの胴体を焼きながら突き刺さっていく。
悲鳴のような鳴き声が聞こえてきて、確実にダメージが入っていると確信し剣の根元まで突き刺し、横腹を裂くように横に振り切る。
胴体の半分を切り裂く事になったが、焼きながら斬った為、体液は全く出なかった。
グレートマンティスはその場に倒れ込み、弱々しく鳴き声をあげている。
「よっしゃー!」
俺はその場で勝利の雄叫びを上げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます