第22話
フレイと合流し、更に仲間を探す為に俺達は歩いている。
何回か気配はするが、今のところは全て魔物だった。
俺ばかりが探しているのを少しは悪いと思っているのか、出てきた魔物は全てフレイが倒していた。
俺は後ろから観戦しているが、フレイの槍さばきは女子とは思えない程豪快で力強かった。
「ふんっ!」
そして今も1体の魔物を葬り、槍についた血を振り払っている。
万全の状態の俺とどっちが強いんだろうか。
頭の中でシュミレーションしていると、フレイが俺の方を見て、
「何を変な事を考えている? 私を犯したければ惚れさせるんだな変態。」
「そんな事1回も考えた事ないわ!」
どんな勘違いしてるんだよこいつは。
女子にしては高い身長で、スタイルも抜群なこいつはモテるだろうけど。
さ、さすがにそんな変な事考えたりはしない。たぶん。
顔を赤くした俺は頭を振り、雑念を消した。
そんな俺の様子を睨みながらフレイが、
「妄想する前にさっさと探知しろ。」
「わかってるよ! あと、妄想なんてしてないから!」
できる限り心を無にして気配を探った。すると、近くに2つの気配があったのでフレイに言った。
「2つの気配なら誰か生徒かもしれないな。そちらに行くぞ。」
フレイの指示通りの方向に進むと、人影が見えてきた。
俺達は茂みに隠れながら確認するとそこにいたのは、エリス先輩とセレスティアの2人だった。
「セレスティア様。生徒会長。」
フレイが槍を背中に背負い声をかけると、その声に反応した2人が俺達の方を向き、
「フレイ! 無事で良かったわ。あら、あんたも生き残ってたのね。」
「当たり前だろうが。それよりも生徒会長って?」
「あぁ! アレクくん! 無事で良かったわ。私に会えなくて寂しかったかしら? 私はやっと会えて嬉しいですわよ。思えば入学してから会うのは初めてですわね。すぐにあなたを探したかったけれど、私も生徒会長として忙しかったから。ごめんなさいね?」
「あ、はい。エリス先輩も無事で良かったです。それよりも、先輩って生徒会長だったんですか?」
「知らなかったのかしら? そう言えば言ってなかったですわね。改めて自己紹介しますわ。セントラル学園生徒会長のエリス・ポートレイトですわ。自慢する訳ではありませんけど、ポートレイト家は公爵なんですわよ。アレクくんが嫁いでも大丈夫なので安心してくださってね。きゃ! 私とアレクくんが結婚……。素敵すぎますわ!」
「何言ってんですか! 結婚なんてしませんよ!」
久しぶりに会ったけど、エリス先輩は全然変わっていなかった。
非常事態でも変わらないこのマシンガントーク。ある意味安心するわ。
俺と先輩の会話を聞いていた2人は、
「お前は生徒会長まで手を出していたのか。女たらしめ。」
「ふ、2人がけ、結婚ですって? そんな、まだ学生なのに不埒よ!」
「そんな事ありませんわよセレスティアちゃん。私も公爵家の一員。貴族の結婚が早いのは知っているでしょう?」
「で、ですけどそんないきなりは!」
「もしかしてセレスティアちゃんもアレクくんを狙ってらっしゃるの?」
「そ、そんな事ありません!」
先輩とセレスティアが何やら話し込んでいるがよく聞こえない。
セレスティアが顔を赤くしているから恐らく何か恥ずかしい事でも言われたのかな?
そんな事よりも、今の状況でする会話ではないだろう。
俺は一度手を叩き、
「先輩、セレスティア。今は雑談している場合じゃないだろ?」
「うるさいわね! そんな事わかってるわよバカ!」
なんで俺は怒られてんの?
理不尽な怒りを向けられ納得がいっていないが、先輩が笑いながら、
「今の話は後でゆーっくりお話しましょうね。まずはアレクくんの言う通り、この状況をどうにかしませんと。早く不届き者を見つけなければいけませんわ。」
先輩が何やら怒っているような感じで俺達を見ながら言った。
生徒会長だから怒ってるのかな?
少しズレているとは知らず、俺はそうだろうと勝手に予想をつけた。
4人でしばらく話をしていたら少し離れた所で、大きな爆発音が聞こえた。
「きゃっ! な、なに今の音!」
セレスティアが驚いたのか悲鳴をあげながら爆発音が聞こえた方向を見た。
先輩が少し考えてから、
「もしかしたら誰かが今回の件の元凶と戦っているのかもしれませんわ。行きますわよ。」
先輩が走って行き、俺達も後ろに続いた。
爆発音のした所へ到着すると、そこにいたのは、フードを被った男とセレスティアやマルスから聞いていたネクロス先輩だった。
「ネクロスくん。そちらの方が元凶かしら?」
「態度からして元凶というより主犯格の1人ですね。」
「くはは! 今のソルジャーは優秀なのが揃っているんだな。少ないやり取りの中でそれだけ情報を集めるとは上出来だ。」
フードの男が感心したように喋っている。
しかし、すぐさま怒っているような雰囲気になり、
「俺達を犯罪者扱いするのはやめてもらおう。なにせ星を守る為に結成された組織なのだから。」
「そんな大層な事を言っておきながらやっている事はテロリストと変わりませんわよ?」
「星からエネルギーを吸収し、使っている人間こそが害悪。害虫共を駆除して何が悪い?」
「御託を並べるのはもういいです。さっさと捕らえるか殺しましょう。」
ネクロス先輩が自分の背ほどある長い刀を鞘から抜き、フードの男に先端を向ける。
くははは! とフードの男は笑い、
「俺を殺すだと? それは実力がある奴が言うセリフだ。貴様ら学生如きに俺の相手が務まるとでも思っているのか!」
突然フードの男から尋常ではないオーラが溢れ出した。
しかし、すぐさま抑えると、
「この人数相手に俺が1人なのは不公平だな。ならば、俺も味方を呼び寄せるとしよう。」
フードの男は、懐から出したクリスタルを握りしめると、黒い光が光りだした。
光が収まりそこから現れたのは、全長で4メートルから5メートルくらいありそうな巨大な蟷螂だった。
「いでよグレートマンティス! ここにいる奴らを皆殺しにしろ!」
「キシャアァァァ!」
グレートマンティスは俺達を視界に捉え、戦闘態勢に入る。
エリス先輩が両手に銃を持ちながら、
「グレートマンティスを新人に相手させるのはさすがに厳しいですわね。ネクロスくん。少しの間、そちらの方の相手をしておいてくださる?」
「俺1人で充分です。」
「頼もしいですわね。では1年生達。あなた達は、私と一緒にグレートマンティスをやりますわよ。私がメインで動くからサポートお願いしますわ。」
エリス先輩がグレートマンティスの前に立ち、銃を構えながら俺達に指示を出した。
銃が武器って事は遠距離がメインのはず。
俺とフレイが先輩の横に立ち、
「先輩。近距離は俺達がやります。先輩は後ろから攻撃お願いしますよ。」
「生徒会長。こいつ1人では死にますけど私も一緒に戦うので遠慮なく後ろで戦ってください。」
少しきょとんとした顔をした先輩は、すぐに笑顔になり、
「ふふっ。今年の1年生は勇ましいですわ。では近距離はお願いしようかしら。グレートマンティスはBランクの魔物で正直、今のあなた達では荷が重い相手ですわ。危ないと思ったらすぐに援護するから離脱する事。それを約束してくださる?」
「「はい。」」
俺達は先輩と約束し、グレートマンティスに向かって構える。
先輩は後ろに下がりセレスティアの隣に立った。
「アレクくんとフレイちゃんは敵の攻撃をやり過ごす事を優先にしつつ相手をしてくださいまし! セレスティアちゃんは召喚獣で2人の援護を! 私は援護をしつつ、攻撃をしますわ! 相手はBランクとはいえ魔物。ソルジャーとして民を守る為には避けて通れないかべですわ! さぁグレートマンティスを退治しますわよ!」
「「「了解!」」」
俺達の返事と同じタイミングで、ネクロス先輩の方も戦闘が始まったようだ。
どんな戦闘をしているのか気になるが、よそ見をして勝てる程甘い相手ではなさそうだ。
一度深呼吸をして身体を落ち着かせた。
そして、俺とフレイはグレートマンティスに向かって駆け出した。
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