第14話
「な、なんとか間に合ったか。」
「マルスありがとう。遅刻しなくて済んだわ。」
「なんなのお前。誰のせいでギリギリになったんだよ!」
「悪い悪い。今度何かご飯奢るよ。お金がある時に。」
「ったく。約束だからな。」
そんなやり取りをしながら俺達は席に着席した。
俺達が着席してすぐにロック先生が教師に入って来て騒がしかった周囲が静かになった。
「おはよう。出席をとるぞー。……よし。数えたら全員いるな。じゃあホームルームを始める。」
え? 名前呼んだりとかはしないの?
生徒の数だけ数えてそれで終わりという不思議な出席確認が終わった後、ロック先生が続けて喋り出した。
「今日から授業が開始される。このクラスでは普通科と同じような一般教養を午前中に行い、昼からは実践授業になる。午前中の座学の時間には寝るなよー。内申に響いてくるからな。授業の時間割は生徒手帳に書いてあるから見ておくように。説明はこんなもんか。めんどくさいから問題だけはおこすなよ?」
そう言い終わるとロック先生は教室を出て行った。
時間割を確認する為に周りのクラスメイト達が一斉に生徒手帳を見る。
俺も確認する為に生徒手帳を開くと、午前中に座学の授業がみっちり詰まっていた。
座学苦手なんだよなぁ。寝ないようにしないと。
しかしこの生徒手帳って便利だよな。
俺は手に持っている生徒手帳の画面を見ながらそう思った。
教室に向かう道中でマルスに生徒手帳の使い方を色々聞いていたが、これ1つでさっきのような授業の時間割や生徒同士の通話機能、それにRINE?ってよく分からない機能もついているらしい。
マルスは生徒手帳の事を携帯と言っていた。
先輩に聞いたのかねぇ?
それよりも、俺はこれを使いこなす事ができるのだろうか?
まぁ分からない事があったらマルスに聞けばいいか。
こうゆう機械が好きなのか、マルスはずっと携帯を触っている。
周りを見てみると、他のクラスメイト達も携帯を触っているのがわかる。
こんなもの触り続けて楽しいか?
携帯を制服のポケットに入れると、ちょうど教室のドアが開き先生がやって来た。
先生は教壇に立ち、
「おはようございます〜。一般教養の授業を担当するソーニャと言います。これからよろしくお願いしますね〜。」
水色のフワフワとしたロングヘアーが印象的な先生だな。
毛先が浮いているみたいに漂っている。
どうなってるんだあれ?
俺の疑問をよそにソーニャ先生は話を進めていく。
「それではさっそく授業を始めます〜。」
こうして授業が始まった。
のんびりした話し方のソーニャ先生だが、授業内容はわかりやすく、さすがは学園の先生だと思った。
一般教養の授業内容は、語学、算術、歴史に貴族相手のマナーを学ぶそうだ。
語学と歴史はかなり勉強したから大丈夫だとしても、算術とマナーは苦手なんだよなぁ。
それに、座学の授業ってどうしても眠気が……ふぁ~。あ、ヤバい、寝そう。
俺は眠気に負けないように意識を集中して授業を聞くことにした。
☆
キーンコーンカーンコーン。
「今日の授業はここまでです。お昼からも頑張ってくださいね~。」
やっと終わった~。あ~疲れた。
首を鳴らしながら大きな欠伸をしている所に、
「眠そうだなアレク。授業中ちゃんと起きてたか?」
「マルスか。ちゃんと聞いてたよ。そっちこそ顔に寝てましたってゆう跡がついてるぞ?」
「げっ! ほんとかよ!」
「まぁ昼飯でも食いに行こうぜ。」
顔に寝た跡がついているマルスを連れて食堂へと向かった。
食堂についた俺達は近くの席に座ろうと探したが、空いている席が見当たらずどうしようか立ち尽くしていた。
「アレクどうする?」
「どこかないかなー。あっ! あそこ丁度空いてるぜ!」
「いや、あそこはダメだと……。」
マルスが何か言っていたが、しっかりと聞き取れなかった俺は、不自然に空いている席に座った。
こんなに広々と空いているなんてツイてるな俺。
「あなたよく座れたわね。」
声のする方を向くと、少し離れた所にセレスティアが1人で座っていた。
「セレスティアじゃん。何1人で食べてんの?」
「知らないわよ。誰も座ってこないからそうなってるだけ。」
「友達いないの?」
「あなたぶん殴るわよ?」
「仕方ないから俺とマルスが一緒に食べてやるよ。感謝しろよな。」
「結構です。」
少しムスッとした表情でセレスティアはそっぽを向いたが、1人で食事を食べるのは寂しいだろうと気を利かし、俺はセレスティアの前に席を移動した。
なんか周りからヒソヒソ声が聞こえるけど何言ってるんだろうな?
そこへマルスがやってきて、
「おいアレク! さすがに失礼すぎるぞ!」
「何がだよ? 1人で食べるとか寂しいだろ? まぁマルスも座れよ。」
そう言い、俺の隣の椅子を引いて座らせようとする。
マルスは俺とセレスティアの方を何度も見てあたふたしているが、
「お好きにどうぞ。」
「あ、じゃあ失礼します。」
少し遠慮しながらだがマルスは座った。
マルスの態度が不思議で仕方なかったので、俺は聞いてみることにした。
「なぁマルス。なんでそんな遠慮してんだ?」
「おまっ! はぁ。お前の世間知らずには早く慣れるようにするよ。」
「なんの事だよ?」
「あのな? この方は。」
「おい平民! なぜ貴様がセレスティア様と同席しているんだ!」
俺を指差し誰かが叫んできた。
確かガリオンだったかな? ガリベンだっけか?
とにかく昨日から気に食わない奴が喋りかけてきたので、
「なんだよガリベン。俺がどこに座っても自由だろ?」
「ガリベンじゃない! ガリオンだ! それとこの方は、この国アストラル王国の第3王女セレスティア・アストラル様だぞ!」
「……はぁ? 何言ってんの?」
そう言いセレスティアの方を向くと、本人はため息をつきながら、
「一応この方の言っている事は本当よ。」
「嘘だろ? 街中で変な男に絡まれるくらい目立ってなかったくせに?」
「あなた本当に失礼ね。」
「セレスティア様になんて事を。今すぐ頭を垂れて這い蹲れ!」
「嫌だよ。制服が汚れるじゃねえか。」
「アレク言い過ぎだって。さすがに無礼だぞ。」
「もういいわよ。それじゃあね。」
俺達の言い争いに疲れたのか、セレスティアは食器を片付けに席を立った。
しっかし、セレスティアが姫様とはなぁ。
「おいアレク! 早く食べないと昼からの魔法学に間に合わないぞ!」
「本当か! 早く食べよ。」
「ちょ、おいお前ら! 俺の話を聞け!」
ガリベンくんの叫びを無視して俺達はすぐに食べ終わり席を立った。
1度ガリベンくんの方を向き、
「早く食べないと遅れるぞガリベンくん。」
「俺はガリオンだ!」
怒っているガリベンくんを無視して俺達は準備の為に教室に戻った。
☆
教室に戻り暫くすると、予鈴が鳴り先生が入って……先生?
俺達の前に現れたのは、とんがり帽子を被ったちびっ子だった。
ちびっ子は教壇の前に立ち、
「今から魔法学の授業を始めるぞ。妾の名はプリンじゃ。プリン大先生と呼んでおくれ。」
こ、このちびっ子が先生だと?
大丈夫かこの学園?
急に子供が先生と名乗り始めたのを聞いて俺はこの学園を心配した。
「そこのお前。黒髪の目付きが悪いお前じゃ。何か言いたそうじゃな。」
「い、いえ別に?」
「まぁよい。この姿だから嘗められるのは慣れておる。あまりにも馬鹿にする奴にはキツめのお灸を据えているがな。」
そんなに睨まないでくれよ先生。
怒ってる姿も全然怖くないんだが、それが逆に怖くなるわ。
プリン先生が教壇の前を歩きながら、
「まずは魔法について説明してもらおうかのぉ。誰かおらんかえ?」
「はい。私で良ければ。」
「おぉ! じゃあそこの
「フレイと言います。」
「すまんすまん。じゃあフレイに頼むかの。」
「はい。魔法とは、自分の身体の中に眠っている魔力を使い使用する超常現象です。魔法の使用方法は、クリスタルに魔力を流し込み、中に秘められた魔法術式を起動させる事によって使用する事が出来ます。クリスタル毎に違う魔法が入っており、現在判明している属性は、火・水・風・土・雷・光・闇・無の8属性になります。」
説明を終えたフレイという名の女子は言い終わると席についた。
パチパチと拍手をしながらプリン先生が、
「うむ! 最初の授業を受ける生徒にしては優秀じゃ!魔法とは、まだ全てが解明した訳ではない不思議な力じゃな。魔法使いと呼ばれる者は普段、クリスタルを身に付けて行動しておる。妾の場合は、この杖に2つ付いておる。他にもあるが、それは内緒じゃ。ちなみに属性についての補足じゃが、基本は今言った8つの属性じゃがそこから派生し属性が微妙に変化する場合もあるのを覚えておくのじゃ。」
えへんと威張っているプリン先生。
やっぱりどう見ても子供じゃん。
「それじゃあ、今から鍛錬所に行くかえ。魔法は知識も大事じゃが、実践も大事なのじゃ。先に待っておるから準備が終わったやつから早く来るのじゃぞー。」
プリン先生はそう言い残し、トコトコと擬音が出てそうな感じの歩き方で教室を去った。
さて! 初めての魔法をようやく使えるな!
俺は平静を装っていたが内心かなりワクワクしていた。
「どうしたんだ? なんかずっとそわそわしてるけど。もしかして魔法使うのが初めてなのか?」
マルスに何故か態度がバレた。
そんなにわかりやすく態度に出てたのか。
「あぁ。村にいる時はクリスタルなんて持つこともなかったしな。」
「それじゃあ楽しみな気持ちもわかるな。お前に魔力があるのを願ってるよ。」
「なに? 魔力がない人もいるのか?」
「魔力がないっていうか、身体の中の魔力を上手く使えない人だな。魔法を使えない人はほとんどが体内の魔力を上手く扱えない人の事なんだよ。」
そ、それは不味い……。
魔力が扱えないと師匠に習得しろと言われている飛斬が使えない。
一気に青ざめた表情になった俺を見てマルスは慌てていた。
頼むぞ俺。魔力が使えないとこの国1番になんかなれないぞ!
心の中で祈りながら俺は鍛錬所へと向かって行った。
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