第13話
若干イライラしながら歩いていると、苦笑しながら一緒に歩いているマルスから、
「まぁよく我慢したよ。これからはあんな事言われる事もあるから気にせず流せるようにならないとな。」
「わかったよ。」
2人で喋りながら寮の前に着くと、見覚えのある人物が立っていた。
「やっと来たか。遅すぎるぞ。」
「師匠! どうしたんですかいきなり?」
「入学早々派手に戦ったみたいだな。それで? 結果は?」
ニヤニヤしながら聞いてくる師匠の顔を見て、結果は知ってるけど俺から直接言わせたいと伝わってきた。
俺はマルスの方を見ながら、
「こいつと模擬戦をして負けたんですよ。初めて見る武器で翻弄されましたね。」
「ほう。どんな武器だったんだ?」
「トンファーですね。間合いが取りにくかったです。」
マルスとの模擬戦を思い出しながら感想を師匠に伝えた。
師匠は俺の話を聞き頷きながら、
「トンファーか。確かに珍しい武器だが、そんな事で弱音を吐いてたら強くなれないぞ? 初見の武器なんてこれからもあるからな。」
「わかってますよそれくらい。」
「ならよし。じゃあ今から鍛錬に…。」
「ちょっと待ったー!」
今まで静かにしていたマルスが急に叫んだ。
大人しいなと思っていたんだが、やっぱり我慢出来なかったか。
俺は指を指しているマルスの方を向き、
「なんだよマルス。」
「ちょ、おまっ。え? この人ってもしかしてパラディンのリベットさん?」
「そうだけど?」
「お前、リベットさんが師匠なのか?」
「見たらわかるだろ?」
「なんで剣聖が師匠なんだよ! この人は弟子を取らない事で有名な人なのに!」
俺の両肩を持ち、振り回しながらマルスは叫んでいた。
俺は頭をグルグル回しながら、
「気持ち悪くなるからやめてくれ。それに剣聖ってなんだ?」
「お前はどこまで世間知らずなんだよー!」
マルスは両膝をつき上に向かって叫んでいた。
なんか面白いなこいつ。
マルスの態度に笑いを堪えていると師匠が、
「はははっ! そういえばこいつには俺の事を伝えていなかったな。」
「普通わかりますよ…。」
そんなに有名なのか剣聖って?
田舎暮らしの俺にはわからないぞ?
でも、マルスがこれだけ驚くという事は有名なんだろうな。
「まぁそんな事はどうでもいい。ほれ。」
師匠が俺に向かって木剣を投げてきた。
それを掴み取ると、
「これから俺が街にいる間は毎日鍛錬だ。この街……いや、この国で最強を目指すんだろ?」
「この国1番……。もちろんです。」
「なら鍛錬と実践あるのみだ。ほら、寮の庭に行くぞ。」
「じゃあ俺は先に戻ってるな。」
マルスは手を上げて先に寮の中に入っていった。
それから約2時間……。ひたすら師匠と模擬戦を行いコテンパンにやられた。
ふぅ、と一息ついた師匠が、
「今日はこんなもんだな。明日から朝の鍛錬にこれを追加しておけ。」
そう言い、紙を渡された。
中身を見ると、とんでもない量の鍛錬が書かれてあり流石に驚いた。
「し、師匠。これだけやっていたら学園に間に合わないような気がするんですけど。」
「間に合うように早く起きてやれ。今のお前にとって必要な事だ。」
俺に必要な事……。
忙しい中、師匠は色々考えてくれたのだろう。
ならしっかりやらないとな!
俺はメニュー表を再度確認してから頷いた。
「まずは、1ヶ月後に行われる大演習でトップを取ることを目標にする。お前が見た感じでいい、実力のありそうな奴はいたか?」
「うーん。マルスは実力はありますね。後は雰囲気だけですけど、セレスティアって女子生徒が強者の雰囲気が出てました。」
「セレスティア様がいるのか。それじゃあ鍛錬メニューを考え直さないといけないな。」
師匠が何やら物騒なことを呟いているが、聞こえないフリをしておこう。
それよりも俺は気になる事を師匠に尋ねた。
「師匠。大演習ってなんですか?」
「大演習ってのは、全学年合同の演習だ。魔の森と言われるシンシア大森林をモチーフにした演習場で戦いが行われる。もちろんただ生徒達だけで戦う訳じゃない。教員や依頼されたソルジャーが各々の召喚獣を召喚し、妨害にくる。今のお前の実力じゃ上位に食い込めるかどうかわからんな。」
そんなに難しいのか……。
いや、この首都でトップを取るにはこれくらいクリアしなきゃいけないな。
いつの間にかこの街じゃなくて国で1番が目標になっているけど、まぁ目標は高い方がいいか!
まずは大演習でトップを狙う。明確な目標ができ俺は気力を漲らせた。
「鍛錬メニューは考え直すから明日はとりあえずその紙に書いてある内容をこなしとけ。俺は1週間は街にいるから、その間は毎日この時間に鍛錬するぞ。」
「はい! お願いします!」
これはいつまでものんびりしてられないな。
マルスやセレスティアには負けねぇ!
俺がこの国1番のソルジャーになってやる!
その後、1時間程師匠と鍛錬を行い解散した。
部屋に戻り、師匠から渡されたメニュー表を見てあまりもの量に再びため息をついた。
これ全部こなすって、何時に起きたらいいんだよ……。早く寝よ。
寮の食堂へ行き、遅めの夕食を食べた。
ここの料理が絶品なのは、寮初日で体感したから知っている。
毎日ここの料理が食べられるってある意味最高だな。
夕食後は、部屋に戻りお風呂に入る。
風呂場もまぁ〜広いんだよここは。
部屋に備え付けの風呂場は、1人で入るには充分過ぎるほどの空間があり、逆に少し寂しく感じるくらいだった。
村での暮らしとは全然違うなぁ。
これだけでもソルジャーになって良かったと思う。
その分、任務や勉強に集中しろって事かな?
寝室のベッドに入り、そんな事を考えながら俺は意識を手放した。
翌日……。
師匠に指示された極悪メニューをなんとか消化し、俺は食堂で朝食を食べていた。
か、身体が痛い。
ここまで身体を痛めつけるって逆効果なんじゃ……。
いや、何か意図があるはず。師匠を疑うな!
「朝から何やってんのお前?」
朝食を持ってきたマルスに言われ、今の自分の状態を思い出してみる。
朝食を食べながらウンウンと悩んだり、急に頭を振り上げたり……。
これは正直……周りから見たら変人だわ。
「考え事をしてたんだよ。」
「そ、そうか。動きがなんか気持ち悪かったぞ?」
「だよな?」
面と向かって言われると恥ずかしくなり、俺は朝食を急いで食べ終わり自分の部屋へと帰った。
汗を流す為に軽くシャワーを浴び、さっぱりしてから制服に着替え準備を終わらせる。
「よし! 今日からの授業頑張るか!」
「頑張るかじゃねえよ! 遅刻するだろうが!」
「おぉ! びっくりしたなぁ。」
「ギリギリの時間にそんな余裕な態度のお前に俺はびっくりだよ。」
マルスの言う通りもう少し早く準備しないといけないな。
急ぎ足のマルスについて行きながら俺はそんな事を考えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます