第13話 仕事は沢山あります

 先ずは国民になりたい人達をアレグーラにお願いして案内して貰っている。ウチが終わればカオウの国にも案内する予定なんだ。


 僕は来てくれた商人達の相手をする事にした。バイトとヤエも一緒だよ。


「リッター国王陛下、建国おめでとうございます」


 そう言って僕に頭を下げたのは、ボーラギで一番大きい商会、アスプリン商会の会長アスプリンだった。


「やあ、会長自らが来てくれたんだね。有難う」


「ワハハハ、それは勿論ですよ。リッター様が魔境に開拓に行かれたとお聞きして、呼び出されるのを今か今かと待ち構えておりましたぞ」


「僕が開拓に失敗するとは思わなかったのかな?」


「我ら本日、ココに集まった商人五人は皆がリッター様が開拓に成功される事を疑ってなぞおりませんでしたぞ。それと、この五つの商会はボーラギ王国から本部をコチラに移すつもりでございます。リッター様の事ですから、近い将来には海向こうの大陸とも取引をなさいましょう?」


「さすがだね。アスプリン。実は既に少しだけど取引は始まっているよ」


「何と!」


 僕の言葉に商人達が驚いている。けど内心で驚いているのは僕の方だった。だって、本部を移転してくれるんだよ。それもボーラギの五大商会が。アスプリン商会は鉱石や貴金属を取り扱っている。バイペン商会は服飾関係。ゲタミン商会は家具や雑貨。リイカ商会は食料品。オキソニン商会は薬品を。という感じなんだ。そこで僕は商人達に提案した。


「アスプリン、それに他の人達にも聞いて欲しいんだけど、この魔境に新しい国は二つあるんだ。一つはココ、僕が国王のリッターセンキロ王国だけど、東にある山にカオウメイジンという王国が時を同じくして出来たんだ。カオウメイジンは海向こうの大陸に住むマ族が建国した国なんだけど、ウチとは兄弟国になるから、そちらにも商会の支部を建てて貰いたいんだけど、どうかな?」


「リッター様、マ族と言われましたか。それならばあの【マイ】と呼ばれている穀物は栽培しておりますでしょうか?」


 そう聞いてきたのはリイカ商会番頭のメガバリアだ。僕は知らなかったからバイトとヤエの方を見た。そしたらヤエが答えてくれたよ。


「メガバリアさん、現在【水田】という畑とは違う耕地で育てているようです。収穫にはあと三ヶ月かかると聞いてます」


「おお、やはり有るのですね。私はマイを食べた事が一度だけありまして、また食べたいと願っていたのです。コレは朗報をお聞きしました」


 そうして、話合いは進んでいき、各商会は王都の南側の中心地に近い場所に建てる事が決まった。それから、商人達を連れてヤエがカオウメイジンに向かったんだ。


 入れ違いで国民達が戻ってきたんだけど、人数が五十人から三十五人に減っていた。どうやら十五人はカオウメイジン国への移住を希望したようだ。

 

 戻ってきた三十五人の中には、休憩場所にいた三十人がいる。そして、代表のお爺さんが僕の元にやって来た。


「国王陛下、我らは実はボーラギに亡命していた他国の者です。陛下が亡命者だった我らを庇護して下さっていたのを、陛下が居なくなってから知りました。実は陛下がこの魔境に向かわれた当日に、新しい宰相がやって来て、お前たちへの支援は終わりだと一方的に告げられたのです。更には、陛下に斡旋して頂いた仕事場からも一方的に解雇されて、我らはこれまでに貯めたお金で何とか食い繋いでおりました。今回、陛下が国民を募集されているとお聞きして、我らは希望を持ってココに来ました。仕事は何でも致します」


 そう言って僕に頭を下げたお爺さん。ん? 庇護なんてしてたかな? そう考えていたらカオリがコッソリと教えてくれた。


「リッター様、確かにリッター様のお言葉によって亡命者を受け入れて、生きる為に仕事を斡旋する様になった筈です。確かあの時は、せっかく国民になってくれるんだから、ちゃんと仕事もしてもらおうよと、仰っていたとカーナ様に伺いました」


 ソコで僕は思い出した。ああ、八歳の頃の事だね。だいぶ前だから忘れていたよ。


「うん、取り敢えず皆は以前にどんな仕事をしていたのかな? そして、得意な事なんかも教えて貰いたいね。それによって住む場所が変わったりするからね。例えば農業が得意なら、耕作地が近い東側に。加工なんかが得意なら西側に住んで貰うようになるから」


「あの、陛下。家はどうなるのでしょうか?」


「フフフ、何と先着一万名様は家も用意してあるから心配しなくて良いよ。それと、生活が安定するまでは国から補助金を出すから、そのお金で今ある商店で必要な物を買ってね」


「な、何と! そんなにして頂けるとは!」


「先ずはこの王都に一万人の人に来てもらう事が目標だからね。仕事についても、ほらアソコに見える建物が分かるかな? アソコは職業斡旋所でもあるんだ。何をして良いか分からない時はアソコに行って相談してみたら良いからね」


 僕がそう言うと皆が安心した様な顔でハイって返事をしてくれた。それからアレグーラと共に王宮の前庭に作った移住者登録所に皆が入って手続きを始めたんだ。


 そうそう、我が国では海向こうの大陸式の硬貨を採用したんだ。


  (大陸式)  (ボーラギ通貨)

  小粒金   銅貨

  小穴金   大銅貨

  小金    銀貨

  中金    大銀貨

  大金    金貨

  板金    聖金貨 


 こんな感じの換算になります。だから、移住者の中でもボーラギ通貨を持ってる人は換金して貰ってるんだ。それから、当面の生活費として一人につき中金二枚、小金五枚、小穴金二十枚、小粒金を六十渡している。王都では一日に食べる平均的な食料品を三小粒金で買えるから、暫くは生活出来る筈だよ。


 今回、移住してくれた人達は好きな場所の住居を選ぶ事が出来る。けれどそれは今回だけで、今回以降の移住者には住む場所は提供するけれど、場所は抽選になる事を商人達に伝えて貰う事になった。

 来る人皆が好きな場所を好き勝手に選んでたら争いも起きそうだしね。


 




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