第12話 国民が一気に増えたよ

 僕の言葉にザワザワしだすゴーレム達。そして、最初の工夫こうふゴーレムのリッダーが口を開いた。


「リ、リッター様。我らはリッター様に寄って創造されたゴーレムです。それが人になってという事は人のフリをして領民にという事でしょうか?」


 僕はその質問に簡潔に答えた。


「ううん、違うよ。リッダー。言葉通りに肉体的に寿命を持った人になって、領民になって欲しいって言ってるんだよ」


「そ、その様な事は不可能でございます。リッター様」


「出来るから僕は皆にお願いしてるんだよ。でも強制じゃないからね。皆の意思を尊重するから、人になっても良いってひとだけだよ」


 現在、ゴーレム達は工夫ゴーレムが百五人(女性型が四十人)。鉱夫ゴーレムが三十五人(女性型が十人)。耕夫ゴーレムが二十人(女性型が十五人)。坑夫ゴーレムが十人の合計百七十人(女性型六十五人)だ。そして、何と全員が人になる事を希望してくれたんだ。更に、リッダーは教えてくれた。


「リッター様、我らが居なくなると、困る事も多かろうと存じます。ソコで、次に各ゴーレムをお創りになる際には、イメージしてゴーレムらしい型を出されては如何いかがでしょうか? 自我は持ち、動きも我らの様にスムーズですが、男性型、女性型に分けずに、ゴツゴツした見た目のゴーレムを各十体ずつ創造されるのをオススメ致します」


「そうだね。不眠不休で休まずに働いてくれたから、ココまでの成果が出たんだし、コレからもその力を借りたいから、リッダーの言う通りに仕事に特化したゴーレムを創る事にするよ」


 それから僕はスキルを使用して、百七十人のゴーレムを人に変えた。そして、カオウの国民には六十人がなり、百十人は僕の国民になった。

 皆は人になっても元の器用さは失って居らず、そしてスキルは工夫が【工夫くふう】や【細工師】等を。鉱夫が【鉱石鑑定】や【鉱石加工】等を。耕夫が【農業】や【植物の種】等を。坑夫が【穴掘り】や【抗脈感知】等を授かっていた。


 それぞれが適した職業を始める事にしたけれど、休憩場所に居た人達四十人はそのまま休憩場所で働いて貰う事になったんだ。彼ら自身がそう望んだからね。


 それからリッダーのアドバイス通りにイメージして、工夫ゴーレムを三十体ギフトで創ったよ。カオウの国に半分行って貰う事にした。


 国名は僕の国が【リッターセンキロ】になりました。王都名は【センキロ】です。バイトやヤエ、カオリが強力に押してきて僕の名前が入ってしまった。意味は分からないけれど、コレぐらい無いとリッター様に相応しく無いとか三人が言ってたよ。

 カオウの国が【カオウメイジン】に決まった事もココにお知らせしておきます。王都名は【メイジン】です。そして、国境をちゃんと定めました。東の山を全てと、草原の東側から十キロまでをカオウメイジン国所有と決めて、お互いに証明書に署名したんだ。草原部分に国の入口の町を作るってカオウが言ってたから、僕は王都からその入口の町までの道を整備する事にしたんだ。距離があるから、道の途中で良い場所を探して僕も町を作る事にした。


 こうしてお互いに取り敢えず国として動き始めたんだけど、まだまだ国民も足りないから、僕はボーラギ王国に向けて、カオウは大陸に向けて国民募集をかける事にした。

 お互いの王都にはまだ三万人は余裕で受け入れる事が出来るからね。それから、商人達にも呼びかけを行う事にした。まだ売れる物は少ないけど、鉱石やその加工品があるし、余った木材で作った物も色々とあるからね。カオウの方も山の恵みを使った保存食や、新鮮な果物もあるからそれなりに取引可能だと思う。


 ボーラギへの国民募集と商人への呼びかけはバイトに行って貰ったんだ。心正しい人しかたどり着けないと言うのも伝えたんだけど、魔境だと聞いて皆が尻込みしていたそうだよ。まあ、しょうがないかな。けれども、チラホラと休憩場所に人が来ておりますとリッダーから報告があったから、嬉しい。そのまま、赤影と白影の二頭に馬車を引いて貰って、迎えに行ってしまったよ。

 僕を見た人達は、


「リッター様、本当にリッター様だ!」

「よくぞご無事で」

「リッター様の国なら安心して住める」

「これは親戚達にも本当だったと伝えねば」


 とか言ってたけど、休憩場所の建物の中に入ってない人達が三十人ほど居たからそちらに向かって聞いてみた。


「皆さん、休憩場所に入っても良いんですよ?」


 そしたら年老いた人が、


「リッター様、ワシらは金が無い。だから銅貨二枚だと言われたら入れないです」


「ああ、そうでしたか。でも気にしないで入って下さい。皆さんの料金は僕が三十人分、支払っておきますから。中に入って大浴場で体を洗ってサッパリしてください。それから僕の国に案内します」


「ワシらは物乞いじゃないから施しは受けられん」


 お爺さんは怒ったようだが、僕は僕の信念を伝えた。


「皆は国民になりにココまで来てくれたんだよね。そして、僕は国王だ。王にとって国民は我が子も同然なんだよ。何処に我が子が疲れ、汚れているのに放っておく親が居るんだい? 良いかい、コレは施しなんかじゃない。我が子を思う親の気持ちだ」


「おお、リッター国王、ワシが間違っておったようじゃ」


 お爺さんは僕の信念を聞いて考えを改めてくれたよ。僕はリッダーに余分にお金を渡して、服も用意して欲しいと頼んだ。リッダーは畏まりましたと言って、自分たち用の服を差し出して彼らに渡してくれたよ。


 今回、集まってくれたのは国民になりたい人が五十人、僕個人と付合いがあった商会からの商人が五人も来てくれた。

 さあ、一気に増えたけど、まだまだ足りないから、先ずはこの人達に安心して住める国だと確認して貰って、商人達にボーラギ王国だけじゃなく、他の国にも広めて貰おう。





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