第11話 マ族の王子様

 翌朝、早速数名のドワーフと共に人と変わらない姿をしたマ族がやって来た。その数は十五名。挨拶に来たにしては多いなと思ったけど。


 僕達は早速出来たての仮住居に招いたんだけど、どうやら挨拶に来た代表者さんと、お付きの二人だけが中に入るらしい。他の十二人は護衛さんだったみたい。


 早速中に入って貰ったマ族の代表者に挨拶をした。


「初めまして。僕はリッターと言います。この魔境を開拓して王国を創る予定ですが、大陸から来られたドワーフ、ノーム一族の方達は、僕の領民になる事を了承してくれました。マ族の方々はどうでしょうか? 領民になってくれますか?」


「ウム、中々に難しい質問だ。先ずは名乗らせて貰おう。私は大陸にあるマ族の王国で第二王子に認定されている、カオウと言う。私は一族の中では厄介者扱いをされていてな、この向こうの山にある薬草を採取して来いと父上に言われて、コレ幸いと私を慕う者達三十名を連れてこの地にやって来たのだ。だから、私もこの地に独自の王国を建国しようと思っていたのだが…… 元々、この地はボーラギ王国の所有だと言うのは知ってはいたが、王国からは誰も来ぬようだからと思い、勝手にさせて貰ったのだ。ソコは謝罪しておく。すまなかった。そして、出来ればで良いのだが、東の山の一つを我らに譲って頂けないだろうか? ソコに我らは我らの国を創りたいのだ。勿論、リッター殿の王国とは友好的な関係を築きたいと思っている」


 ソレを聞いて僕は即座に決めたよ。


「カオウ殿、勿論お譲りしますよ。僕と貴方は同じだ。僕も国から追放された身なんです。そして、この王国では見捨てられている魔境を開拓して自分で生きよと言われました。僕も今、僕を慕ってくれている仲間達と国を創ろうと頑張っています。カオウ殿もそうでしょう? ならば、東の山は半分をカオウ殿の領地としましょう。そして、僕が創る国と兄弟国になって下さい。よろしくお願いします」


 そう言って頭を下げた僕を見て、マ族の王子様、カオウ殿は言った。


「私の方からこそ頼まねばならぬ事だ。そうだ、それではこうしよう。年齢は私の方が上になるが、国としてはリッター殿が建国される国が【兄】で、私が建国する国を【弟】と位置付けようではないか。更に、我らは山で取れる恵みをリッター殿の国に毎月、一割を納める事にしよう」


「そんな、兄弟の仲になるのなら、そんなモノは不要ですよ!」


 僕がそう言うと、カオウ殿は


「我が国には【親しき仲にも礼儀あり】という言葉があってな、やはりこういう事はちゃんとせねばならぬと思うのだ。それに、コレは互いにちゃんと国を興せた後の話になる。直ぐにと言う訳ではないから」


 そう言って僕を説得したんだ。ソコで僕は大胆な提案をしてみたんだ。


「兄弟なんですから、お互いを呼び捨てで呼び合いませんか? ダメですか?」


「フフフ、全く不思議な人だな。良く今まで生きて来られたな。だが、ソレは私も同じか…… リッター、コレで良いかな?」


「はい、カオウ。これからよろしくお願いします」


 こうして、領民にはならなかったけれど、友好的な隣国が建国される事が決まったんだ。僕はカオウにお近付きの印として、工夫こうふゴーレムを十五人、坑夫こうふゴーレムを十人、鉱夫こうふゴーレムを五人、耕夫こうふゴーレムを十人出して、国創りを手伝う様に指示を出したんだ。その時のカオウのビックリした顔は今思い出しても笑ってしまうけどね。


 そして、我が国の進行具合なんだけど、畑がほぼ出来上がり、作物を植えましたと報告を受けた。早過ぎだよ、耕夫達。

 更に、鉱石も必要なだけ集まったそうだ。コレはガインやモームが仲間と一緒に頑張って掘ってくれたお陰だね。手空きになった鉱夫達は工夫達の手伝いを始めたから、必要な作業がみるみる進んでいったよ。


 先ず出来たのは町を囲う壁だ。木材を柱にしてあるけれど、特殊鉱石【セーメン】を使用して、柱ごとセーメンで固めて壁を作成したんだ。厚さ五メートル、高さ十五メートルの壁がぐるりと出来上がったんだよ。次は堀が出来上がり、そして、各門を繋ぐ橋が出来た。それから仮住居の北側に王宮が建ったよ。王宮の空いた敷地には迎賓館を建てた。それから、町中の道を整備してから町の東西南北に住宅街を区画した。ドワーフ達の工房は西側だ。そして、カオウと話し合ってコチラに移住したいマ族が居たら住める様にとマ族の街を東に作ったんだ。マ族は農業知識が豊富らしくて、広い畑で作物を作りたいって人が五人程居るらしい。

 そして、コチラからもマ族の国に移住する者がいたんだ。そう、子供達の中からだけどインチ八才とレーバー六才の男の子二人と、アイデ八才、カビーナ七才、シャリイ六才の女の子三人が山が良いって言うんだ。ソコで僕はカオウに頼みにいったんだけど、カオウは殊の外喜んで受け入れてくれたよ。子供達もニコニコしてカオウに、


「王様、よろしくお願いします」


 って頭を下げてた。ソレを見ていたマ族の人達はまなじりを下げて見ていたから、僕は安心して子供達の移住に賛成したんだ。


 そうこうして一月ひとつきが過ぎて、僕の王都もカオウの王都もそれなりの形が出来上がったんだ。ソコで僕は休憩場所に残ってくれていたゴーレム達も含めて、全てのゴーレムを集めた。そして、カオウ達、マ族にも来て貰い、更にはドワーフ、ノーム一族にも来て貰った。

 目的は【完成記念式典】って言う名目じゃなくて、【領民になってくれるかい?式典】なんだけどね。


 名目上の式典が進み、カオウの挨拶が終わり、僕の番になった。ソコで僕は先ずゴーレム達に問いかけた。


「ゴーレム達、人になって僕やカオウの国の領民になってくれないかな?」


 


 

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