第9話 どこら辺に町を作る?
朝食を食べ終えて、僕とアレグーラ夫妻、カーナ、アニー、バイト、ヤエ、カオリ、セーデスは話合いを始めた。拠点となる町をこの草原のどの辺りに作るのかを決める為だ。
「草原の真ん中でも良いかな? アレグーラはどう思う?」
「リッター様、私はもう少し移動してこの森の近くが良いかと思うのですが。休憩場所から余り遠くなっては途中にまた休憩場所を作る必要が出てくるかと思います」
「うん、確かにそうだね。レイラはどうかな?」
「確か聞いていたのと違う地形だったのですよね。草原の北には鉱山があって、その先が海だと聞いていたけれど、実際は草原の北は直ぐに海で、鉱山は草原の西に、東には普通の山があるんですよね。リッター様がお住いになる町はつまり王都になりますから、私は鉱山寄り、海寄りの場所を確保して、他の場所には町や村を作るのが良いかと思います。領民が増えてからになりますが」
「うん、王都ってどうい事だい。レイラ、僕は王国を作るんじゃ無いよ。魔境を開拓して人が住める様にするんだし、ソコはボーラギ王国の領土になるんだからね」
僕がそう言うとカーナが微笑みながら言った。
「リッター様、父が持ってきた国の証明書を良くお読みになって下さい」
言われて僕はバイトにアイテムボックスから証明書を出してもらい目を通した。ソコにはこう書かれていた。
※魔境を開拓した暁には、ソコをリッターの領土として保証し、王国は関与しない事をココに証明する。
アレ? コレってつまり開拓したらココは王国の支配地から外れるって事だよね。つまりは僕が責任者って事になるから、レイラが言った通り一国の王になるのか。けど、
僕の考えを読んだのだろう。アレグーラが言った。
「リッター様、王妃様はどうせ開拓など出来ないとたかを括っておられます。が、コレには国王様の印章がありますので、開拓してしまえばこの地はリッター様の王国となるのです。私が国王様に進言して、この証明書を出して頂きました。今から述べるのは、国王様からのお言葉にございます。
リッターよ、不甲斐ない父で悪かった。だが、余はそなたの行く末に幸多からん事を祈っておる。ボーラギ王国に縛られる事なく、好きな道を行くが良い。また、英雄達にも謝っておいてくれ。王妃は当時、既に王国内で余を上回る味方を手にしておって止める事が出来なかったのだ。そなたのスキルならば或いはと思い、そなたを魔法陣の部屋に入れる様に仕組んだが、上手くやってくれて余も安心していたのだ。ボーラギ王国は恐らくそなたの義弟が王となり、国が崩壊して終わるであろうが、その時には罪なき民をそなたが作った国に受け入れてやって欲しい。頼みばかりで心苦しいが、どうかよろしく頼む」
うん、父上。本当に頼りにならないですね。そこまで分かっていながら何の手も打ってこなかったなんて、息子としては情けない限りですよ。けれども、こうしてボーラギ王国から解放して頂いた事には感謝致しますよ。
「分かった、アレグーラ。それでは開拓が終わったらココは僕の王国とするよ。話が脱線してしまったね。カーナはドコが良いと思う」
「はい、リッター様は海の向こうにある大陸についてはご存知ですか?」
「うん、コレも聞いた話だけど、知ってはいるよ。アニーと同じ獣人と呼ばれる人の国や、エルフの国、ドワーフとノームの国、勿論、人族の国もあるらしいけどね。ソレに魔族と呼ばれる人々の国もあると聞いているよ」
「はい、私もそのように聞いております。また、かの大陸にはコチラには無い食材や薬草などもあるそうです。交易をなさるなら、大陸の国々と友好関係を持ち、異国の文化を取り入れたりするのも面白いかと思いまして。私は海寄りの場所が良いかと思います」
「そうか、分かった。有難うカーナ。アニーはどうかな?」
「ひゃっ、私ですか。私は難しい事は分からないから、単純な意見ですが、人が生活を営むのには水と塩が必要です。ですから、海に近く川がある場所が良いと思います」
「さすがアニーだね。目の付け所が違う良い意見を聞けたよ」
「リッター様、私達三人は鉱山寄りの場所で、川がある場所が良いかと考えております。余りに海が近いと、大陸からもし友好的ではない者達が現れた際に、直ぐに攻撃を受ける場所はオススメできません」
「ナルホド、バイトの言う事も一理あるね。よし、それじゃあ、道を作りながら、鉱山寄りに移動して、川を見つけてみよう。海から最低でも三十キロ離れた場所を理想として、王都を作る場所を探す事にするよ」
僕がそう言うと皆が、
「リッター様の仰せのままに」
そう言って頭を下げた。
ソレから西に向かって道を作りながら進み、鉱山が見えてきたので、ソコから北に進路を変えた。僕も森と違って草原だから早く道を作る事が出来たから、思ったよりも距離が捗ったよ。今日は西に三十キロ進み、更に北に十八キロ進む事が出来たんだ。途中に小さな小川があったけど、アニー曰くこのまま北に進めばもっと大きな川があるらしい。大量の水がある匂いがするそうだよ。凄いね、アニーの嗅覚は。
子供達のタンラー(男)とプリマ(女)の十一才になる二人は女神様からギフト【料理】と【調理】を授かったんだけど、タンラーは魚や肉を捌いたりするのが上手で、プリマはソレを味付けして調理するのが上手い。この二人が揃って作ったご飯は、誰が作るよりも美味しくて、正直に言うと皆が二人の作るご飯を毎日、食べたいと思っていた。だから、僕は二人にお願いしてみたんだ。
「タンラー、プリマ、これからは二人に僕達のご飯を作って貰いたいんだけど、頼めるかな? 毎日って大変だと思うけど、勿論、働いて貰うんだから給金はちゃんと出すよ。どうかな?」
「リッター様、僕達はリッター様とカーナ様に助けて貰いました。その上、女神様からギフトまで頂く事が出来たんですから、僕もプリマもリッター様やカーナ様に喜んでいただける様に頑張ります」
「リッター様、私は皆が私の作ったご飯をニコニコしながら食べてくれるのが、嬉しいです。勿論、私とタンラーで皆のご飯を作らせて下さい」
二人ともそう言ってくれたから、僕は給金を決めて二人にちゃんと渡すからと約束したんだ。二人は要らないって言うけれど、働きに対して対価を払わないなんて王として有り得ないからね。ちゃんと受け取ってくれる様に説得したよ。そうそう、因みにタンラーのスキルは食材鑑定でレベルはまだ三。プリマのスキルは毒鑑定でレベルはニなんだ。スキルが無いと思い込んでいた筈なのにレベルが上がっているのは、無意識にスキルを使用して食べ物を選んでいたからだろうね。
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