第4話 皆に秘密を打ち明けた

 入口まであと少しの場所で休む事にした僕達は、皆に食堂に集まって貰った。


「今日はここまでにしようと思うんだ。翌朝七刻ななのときに出発したら午前中には入口の森に着くらしいからね。だから今日は皆も早めに就寝してね」


 僕の言葉に全員が、はいと返事をしてくれた。入口の森に着いたら先ずは確認して、ソコを大きく切り開いて開拓するか、森の奥にあるという草原を目指すかを決めようと話合いも出来ている。

 しかし、皆が不安そうな顔をしているのを見て、僕は秘密を一つ皆に打ち明ける事にした。


「皆が不安に思うのも無理がないね。魔境だもんね。けど、安心して欲しい。僕も勝算も無しにここまで来た訳じゃないからね。バイト、ヤエ、カオリ、良いかな?」


「リッター様が良いのなら、我らは構いませんよ」


 バイトの返事を聞いて僕はカオリに合図した。カオリが一言、呪文を唱えた。


解呪ディスペル


 すると、金髪碧眼のバイト、銀髪銀眼のヤエ、赤髪金眼のカオリ達が三人とも黒髪黒眼に変わった。バイトは口ひげも無くなった。ヤエはクセ毛ショートがロングサラサラヘアーに。カオリは逆にロング赤髪が、ショート黒髪に変わる。三人を見て反応したのは、アレグーラだった。


「て、転移の英雄! 剣神ヤイバ様、聖女ヤヨイ様、大魔導ハルカ様!! な、何故! 三人とも元の世界に戻られた筈では……」


 アレグーラが驚くのも無理がない。国の公式発表でもそうなっているからね。僕は事情を説明した。


「アレグーラ、それに皆にも聞いて欲しいんだ。実は父上は英雄達に嘘を吐いていたんだ。邪神を倒した暁には必ず元の世界に帰すってね。僕は当時六歳で、五歳の時に今のスキル【構造改革】を授かっていたから、帰還の魔法陣を調べて見た。そしたら英雄達を動けなくした後に、殺して姿を消してしまう魔法陣だったんだ。それを知った僕は当時はレベルが低かったから、動けなくなるのを解除する事は出来なかったけれど、気絶させて僕の作った亜空間に英雄達を移動する様に魔法陣を改革したんだ」


 僕の言葉の後をバイトヤイバが続けた。


「そうして、リッター様に助けられた俺達三人は、ハルカの魔法で姿を変えて、お側にお仕えする事にしたんだ。命を助けて頂いたのは勿論だが、俺はリッター様に惚れたからな」


「うげっ! オッサンがリッター様に惚れたとか言うな、バカ兄貴!」


「うるせぇ、惚れたモンはしょうがないだろうが。全く、お前のどこが聖女だ。性女のクセに」


 その言い合いを無視してレイラ夫人が反応した。


「やはり、貴方方は兄妹だと言うのは本当だったんですね」


 返事をしたのはカオリハルカだった。


「はい、レイラさん。私とヤエちゃんは双子で、アソコに立っている冴えない男は残念ながら兄になります」


「うぉいっ! カオリ、お前まで俺を落とすなっ!」


「だって、お兄ちゃんがリッター様に惚れたなんて言うから悪いんだよ」


 僕は直ぐに止めたよ。


「はい、そこまで。兄妹仲が良いのは皆が分かったから、その辺でね」


「リッター様、今のやり取りのドコが仲が良いのかと……」


 バイトは半泣きでそう言うけれど、義弟おとうとと僕の関係を見たら十分に仲が良いと思うよ。


 そんな時に皆が少し安心した顔の中で、カーナが僕に質問してきたんだ。


「リッター様、先程スキルのレベルと仰いましたが、スキルにレベルがあるのですか?」


 そう、コレは恐らく神が隠している事なんだろうけど、僕は皆にも知って貰おうと思う。


「さすが、カーナだね。そうなんだ、スキルにはレベルがあるんだよ。僕もバイト達に教えて貰って知ったんだけど、それを知らなければ表示はされないみたいなんだ。スキルは使えばレベルが上り、成長して行くんだ。例えばカーナは【癒し】のスキルだけど、町や兵士達相手に沢山使用してたから、ある時突然に良く効いた、何て事はなかったかな?」


「あっ、有りました! 確かに昨日より効き目が良いと思った日が有ります!」


「うん、その時にカーナのスキルはレベルアップしてたんだよ。因みにスキルによってレベル上限が違うそうなんだ。カーナのスキル【癒し】は上限が二十五だけど、後二つ上げたら上限になるね」


「リッター様はどうしてそれを?」


「僕のスキル【構造改革】は、対象の構造を調べる事が出来るんだけど、レベルが上限になって、人も調べる事が出来る様になったんだ。ただ、皆も今はスキルにレベルが有る事を知ったから、自分のステータスを頭に思い浮かべると、スキルレベルも表示される筈だよ。試してみて」


「あっ、出ました!」

「私も出ました!」


 子供達以外から声が上がる。それから僕は更に秘密を教えた。


「スキルによっては上限まで上がると進化する事もあるから、上限までレベルが上がってる人が居たら、それも確認してみてね」


 すると兵士のサーロンが、


「私のスキル【剣術】が、上限の十五で点滅しているのですが……」


 と言えば、給女のナポリンとアリナミーンも、


「私のスキル【清潔】も十で点滅してます!」

「私のスキル【飲水】も十で点滅です!」


 と言う。


「点滅してるスキルを強く思ってみて。進化の項目が出てくると思うよ」


「出ました! おお、スキル【剣武闘】になりました!」

「私もスキル【衛生】になりました!」

「私はスキル【円水】に!」


 うん、良かったよ。バイト達転移者と違って僕達は一つしかスキルがないけれど、成長するのを確認出来た。

 残念ながら僕のスキルはレベル五十で成長進化しないようだけどね。因みに人を見た時にはその人の健康状態や、女性だとスリーサイズも分かるのは、バイトにしか教えてないよ。あっ、後でアレグーラやサーロン、パース、フェイターにも教えて見ようかな? いや、やっぱり止めておこう。


 それから僕は子供達を見た。そしたら、皆が残念そうな顔をしていた。ああ、そうか。この国は平民にも嘘を吐いてるからね。僕は子供達に話しかけた。


「さあ、五歳以上の子は頭の中でステータスって唱えてごらん。自分のスキルを知る事が出来るよ!」


 僕の言葉にハンドが驚いている。


「リ、リッター様。俺達は平民ですからスキルなんて無い筈じゃ……」


「うん、そう言われてるよね。でもゴメンね、ハンド。貴族だろうが平民だろうが神様は平等にスキルを授けてくれているんだ。この国ではそれを隠して平民の皆を騙していたんだよ」


 僕の言葉に唖然としながらも五歳以上の子供達は頭でステータスと思ったんだろう。ハンドは、


「で、出た! スキル【身体強化】って!!」


 ハンドの言葉にバイトが、


「おう、ハンド。それは良いスキルを授かったな。鍛えれば皆を守ってやれるぞ」


 と言った。


「バイトの兄貴、本当かっ! それなら俺を鍛えてくれっ!」


「フッ、俺の修行は厳しいぞ!」


 何て師弟談義が始まったのを皮切りに、他の子供達も口々にスキルを言っている。僕はまだ五歳になってない子供達に、


「五歳になったら皆がスキルを授かるから、泣かなくて良いからね。大丈夫だよ。皆の誕生日もちゃんと僕が知ってるから、五歳になったら教えてあげるからね」


「リッターお兄ちゃん!!」


 いや、良い響きだね。【お兄ちゃん】って。義弟おとうとにも言って貰いたかったね。


 そうして、皆が少しだけ不安を解消したので、僕達は休む事にした。


 あっ、バイト達は元々の黒髪黒眼のままで、名前は逆にバイト、ヤエ、カオリが既にシックリ来てるからそれでと言う事に決まったよ。

 さあ、明日はいよいよ魔境の入口だ。


 


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