第5話 石像が有りました
翌朝、皆が
うん? アソコに石像があるみたいだ。入口の目印になるかな。僕はそう思って皆に右に向かって五百メートル進もうと言った。
進んで行くと背中に羽がある女性の石像と、その石像に向かって空中に浮いている槍があった。無造作にその槍を掴んだバイトだけど、掴んだ瞬間にふっ飛んだ。
「あー、飛んで行きましたね」
「あ、兄貴ーーっ!!」
「アレは放っておきましょう。後先考えずに直ぐに行動するから、リッター様にご迷惑がかかります」
一番上はカオリ。次にハンド。一番下はヤエの言葉です。うん、兄妹仲が良いね。
ハンドはふっ飛んだバイトの方に行きたそうだが、ヤエに止められていた。
「アレぐらいじゃ掠り傷一つ負わないわ。大丈夫よ」
ヤエは優しくハンドに言っている。その優しさの一部をバイトにも分けてやってね。
さて、僕は石像と槍をスキルで視てみた。そしたら、石像の中に囚われた女性がいると分かった。けれど、この女性が石像から解放された瞬間に、槍が女性に向かって飛んで行く仕組みになっている。
僕はスキルを使って槍の向きを変えようとしてみたけど、どうやら星ごと動かすような力が必要みたいで、向きを変える事が出来なかった。
ソコで僕は槍を改造した。その上で女性を石像から解放した。
「ハッ! 解放されてる! ちょっ、ちょっと待って、槍は!? 向かって来てるっ!! キャアーーーーッ」
ファサっと音がして、キレイなシーツが全裸だった女性に被さった。
「エッ? アレ? 神殺しの槍は?」
僕は女性に言った。
「大丈夫ですよ。槍は構造を変えてそのシーツにしましたから。さあ、目のやり場に困りますからそのシーツで、その神々しい裸体を隠して下さいね」
凝視しながら言ってるから説得力が無いかと思ったけど、女性は素直に僕の言う事を聞いてくれた。僕は内心ほんのチョットだけ残念に思いながらも、中に囚われた人が居ない石像を復活させた。コレで入口の目印が出来たよ。
「貴方方は誰? ってその前に、助けてくれて有難う。私は忘れられた女神○■●□よ。今はこの世界の創造神だと偽っている女神ケロリーナの姉になるわ」
うーん、名前は聞き取れなかったけど、聞いてはダメな言葉が沢山あった気がする。取り敢えず、
「僕はリッターと言います、女神様。囚われていた様でしたので、スキルを使い解放させて貰いました」
そう返事を返した。そしたら、女神様がビックリしたように喋り出した。
「そう、そのスキルよ。如何なってるの? 仮にも神が施した封印の構造を変えるなんて、あり得ないわ。それに、貴方方は全員がスキルレベルに気がついてるみたいだけど。オマケにそちらの女性二人と、後ろにいるボロボロの男性一人は異世界人だし……」
あっ、バイトがいつの間にか戻って来てたんだね。気がつかなかったよ。ハンドが早速、兄貴、大丈夫か? 何て聞いてるけど服がボロボロなだけで、怪我は無いようだね。流石はスーパー執事だ。
「僕達はボーラギという国から命令されて、この魔境の開拓に来たんです。そこでこの入口の森に目印が何か無いかと探していたら、女神様が封じられた石像を発見したんです」
「チョット待ってね。少し神力が戻ってきたから。ウーンと、ナルホド、そう言う事だったのね。分かったわ。それじゃ、私の名においてもこの場所を開拓する事を許可するわ。コレでケロリーナが何か言ってきても大丈夫だから。それと、ココにいる皆に、異世界人を除いて
そう言うとシーツを纏った女神様は消えてしまった。バイトが、
「すっごい見目良い女性でしたな。リッター様」
そう言って後でスリーサイズを教えて下さい、と言う含みを持たせて僕の名前を呼んだ。僕は分かったと合図しながら、森全体をスキルで視てみた。そしたら、聞いていたより広い。僕はアレグーラとレイラを見て言った。
「この森は三十キロ四方だと聞いていたけど、どうも五十キロ四方もある様なんだ。森を抜けると広々とした草原があるのも分かったから、先ずは馬車が通れるだけの道を作りながら、草原を目指して進もうと思う」
「リッター様の思われるままに。我らはリッター様に従いますぞ。急ぐ開拓でもありませんしな」
「リッター様、森を進むとして、魔獣などへの対策はどうなさいますか?」
「レイラ、道を作る際には聖別を付与して通すから、悪意ある魔獣は道には入れないようにするよ。僕の聖別じゃなく、ヤエの聖別を付与するから、邪神でもない限り入って来れない筈だよ」
こうして、方針を決めた僕達は先ずは僕がスキルで草原までの一直線の道を作り、ヤエが出来た道に聖別をして行きながら、ユルユルと進み始めたんだ。
進みながら道を作る僕にカーナが話しかけてきた。
「リッター様、女神様から頂いたギフトは確認されました? 私はギフト聖を授かりました。スキル癒しの効果が何倍にもなって、スキルレベルが上限になっても出来なかった筈の欠損状態も癒せる様になりました」
「うわ、ソレは凄いね。カーナ。ひょっとしたらソレって人だけじゃなくて、物も対象になってないかな?」
「物ですか? えっと少しお待ち下さいね」
そう言って目を瞑って考えるカーナ。そして、目を開いて僕を見ながら興奮して言った。
「凄いですわ、リッター様! どうしてお分かりになったのですか!? 確かに対象に物も入ってますわ」
うんうん、コレで何か壊れてもカーナに直して貰えるよ。
「分かった訳じゃないんだ。ただ、女神様からのギフトだから、そんな感じかなと思ってたんだ。僕のギフトは今日の夜にでも確認してみるよ。取り敢えず、少しでも草原に近付ける様に今は道を作って行くよ」
「あっ、そうでしたわ。お邪魔をしてしまってゴメンナサイ」
シュンとするカーナに僕は言った。
「邪魔なんてとんてもない。カーナがこうして話し相手をしてくれるから、僕も楽しく道を作れるんだよ。さあ、もっといっぱい話をしようよ」
そう言って僕はカーナを促して、二人で話をしながら道作りをして行った。そして、日が陰り出したから、今日はもう止めにして馬車の中に入ったんだ。因みに今日は十二キロの道を作れたよ。
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