第5話

「榊、いつも楽しみにしてたやつは更新されてないの? 最近何か上の空みたいだし」

「さぁ……」


 その一方で、僕は自分の作品と比べるようなことをしだした。着実に評価されていき、まだまだ伸び代のある彼女と、ある程度は伸びたけど今や下降線を辿りつつある僕。才能と言うどうしようもないくらいに差が大きく開いている現実を目の当たりにしている。表向きにはそれを出さないようにしていたものの、僕は現実世界での同級生である彼女にとある感情を抱いていた。


 一度意識してしまうと人間というものは歯止めが利かなくなる。よせばいいのに作品につけられた評価の数や閲覧数、コメント数などを比べるようになり日々落ち込むようになった。

 そしていつからか彼女の小説を読まなくなっていたし、自分の小説を書くことすらもしなくなっていた。

 あれほど頻繁だった彼女の更新の通知は来なくなっていた。意を決して彼女の作者ページを見に行ってみるものの、やっぱり更新がなされた形跡けいせきはなかった。


 学校では相変わらずの彼女がいた。でも、一人でいる時の彼女は心なしか元気がないようにも見える。彼女への後ろめたさもあって最近では学校でも会話することがなくなっていたから、気になると言えば気になった。


「どうした? 考え事?」

「……なんだ藤岡か」

「なんだとはなんだよ。おうおう、お得意の上の空か! お前まさか悩みでもあるんじゃないの?」

「やっぱりそう見える?」


 僕は核心だけを伝えないように気をつけて、それとなく悩みの部分を強調して話をする。それを聞いて藤岡ならなんて言うんだろう。


「それは……ずばり言いましょう『嫉妬』です!」

「先生……! 僕はどうすればいいのでしょうか?」

「アドバイスって程でもないと思うけどさ、自分と他人を比べだすとキリがなくない? その人にはその人だけの、榊には榊だけの言うなら『良さ』とか『持ち味』みたいなものがあるんじゃないの? 俺はそういうのだけで十分だと思うけどな」


 そう言うと藤岡はひらひらと手を振って部活へと向かっていった。

 自分の良さ、か……。それは今の自分にはよく分からないけど、色々と気にしすぎていたかもしれない。

 よし、勇気を出して直接本人に聞いてみよう。立ち上がると一人座っている彼女の席へと向かう。


「相良さん。相良さん?」

「あっ! 榊君……。ど、どうしたの!?」


 ぼうっとしていたのか彼女は急なことに驚いた様子だった。その頬はほんのりと紅潮こうちょうしているようにも見え、目もなかなか合わせてくれない。もしかして体調が悪かったりするのだろうか。でも今はとにかく話がしたかった。


「あのさ、この後何もないなら一緒に帰らない?」

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