第4話
「あ、榊君おはよう」
「相良さんおはよう」
それからは学校では彼女と話す機会が増えた。もちろん藤岡には怪しまれたけど、「そういうのじゃないから安心してくれ」と強く言っておいてはある。
どうも学校ではそういう話ができる友達がいないようで、彼女はいつもテンション高めに話をしてくれる。仲間ができて僕なんかよりも、ずっと嬉しかったんだろうなって言うのがとてもよくわかった。
相良さんの作品は段々と軌道に乗ってきていた。
投稿を開始した初期からは比べ物にはならないくらいに人気が出てきているのだ。僕はまるで産みの親のような感じで初めからずっと見てきた。彼女は覚えていないだろうし、その上余計だったかもしれないけど、時にはコメントを残したりアドバイスのようなものをしたこともあった。
彼女の持つ世界観は本当に素晴らしく、見ていてドキドキもハラハラもワクワクもすべてのものが美しく弾けて、僕を惹きつけ続ける。だからそのことが素直に嬉しかった。
「榊君は最近更新してないの?」
「そうだね。ちょっと書けなくて……」
「あー、あるある。スランプだよね。そういう時って好きなことをして、全部一旦忘れるといいかも」
というアドバイスを受けて僕は今映画館に来ている。少し気になっていた映画がやっているのを思い出したからだ。そして隣の席には相良さんがいる。
当たり前だけどこれはデートではない。ただ藤岡や他のクラスメイトに目撃されたら完全に誤解されるのは間違いないな。
映画が終わると近くのコーヒーショップに入り、その内容についてああでもない、こうでもないという会話をする。
周りからみると、こういうのは付き合っているように見えたりするのだろうか。いくら僕でも意識をしないわけじゃない。自分で言うのもどうかと思うけど多感な時期でもあるわけで。
「なんか付き合ってもらう形になっちゃった?」
「ううん、気にしないで。私もあれ見たかったから。で、どうかな? いい気分転換にはなった?」
「おかげさまでなんとか。相良さんありがとう」
「どういたしまして。それは良かったです」
学校以外でも本屋だったりゲームセンターだったりと色んなところへ一緒に行くようになった。それにしても相良さんは何とも思わないのだろうか。それとも僕の考えすぎなのかどうかは分からないけど。
ただ共にすごす時間はとても楽しいものだった。
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