第22話

 キョロキョロと周りを見渡すも声をかけられるような人物は俺しかいない。つまり俺に声をかけているんだよな?


 「はい?私ですか?」


 「そうじゃそうじゃ、お主はこの道具に興味を持ったのかのう?」


 やっばいなあ、変な爺さんに捕まっちまったよ。どうやってこの場を切り抜けようか。


 「いえ、興味を持ったというより周りをいろいろ物色している最中でして。」


 そう言ってこの場を抜け出そうとするも


 「いやいや、お主は先程からつまらなさそうな顔をしておったがコイツを見て顔色を変えたじゃろ?お主にはこれが何かと言うことが分かる。つまりじゃ、お主は目を持っていると言うことじゃろ。例えばスキルとかの」


 ほっほっほっと怪しそうな爺さんが笑うがこちらは顔が引きつる。何も言っていないのにこの爺さんはあの短時間で俺を観察して推測、その上で話しかけてきていたのだ。何が目的なんだ?


 「え、ええ、まあ。失礼しました。ではこれで、」


 じゃあ、と言ってさっさと逃げようとするもその老躯からは信じられないような強い力で腕を掴まれ逃げられなくさせられてしまう。


 「ワシはのう、ダンジョンから出てくる魔法具というものを再現しようとしておるのじゃよ。世の中にたくさんの便利な魔法具がダンジョンから排出され流通しておる。しかし、それはあくまでもダンジョンから出てくる有限のものじゃ、宿屋にあるような灯りであれば流通量も多く困らないが火や水が出るようなモノはまだまだ出ておらぬ。ワシはそれを実現したくてこうして作った試作品を売ってるおるのじゃ。」


 …何も言ってないのに語り始めたぞこの爺さん。しかし、言っていることはマトモだし、俺が知らなかった内容を捕捉してくれているのはとてもありがたい。もうちょい話を聞いてみるか。


「なるほど、では、どこかの王宮や帝都にでも行って研究者として雇って貰えばよろしいのではないでしょうか?」


「そうじゃろうな、だがワシは嫌じゃ。結局は戦争や貴族達のために使われ、平民や奴隷達は虐げられたままじゃ、ワシは皆にこの道具を届けたいのじゃ、だからの、お主はこれを買うべきなのじゃよ!!!」


 「なにがなのじゃよ!だ、この糞爺が!!話を聞き込んだ俺が馬鹿だったよ!!!そんな不良品のポンコツ売りつけようなんぞ許すわけないだろ!!!!」


 つい咄嗟に反応してしまった。あまりにも糞爺過ぎたのだ。


 「なるほどのう。お主にはこれが失敗作だとやはり分かっておるようじゃのう。鑑定持ちかの?」


 やられた。この爺さんわざと俺を煽りやがったな。


 「はあ、何が望みなんですか?結局それを買わせたいのですか?」


 「いいや、そんな事はどうでも良いのじゃよ。お主の鑑定眼でどうにかワシの作品を完成させるのを手伝って欲しいんじゃよ。そうじゃの、報酬はワシが今まで使っておった魔法陣についてじゃ、どうじゃ?」


 どうじゃと言われてもなあ、魔法陣についてなんぞ知ってどうするんだ?だがすることがないのも事実だしな。


 「では、条件として冒険者としての活動を終えてから余った時間で手伝うと言うのでどうでしょうか?報酬はそれに追加で僕の下す道具類を露天販売してください。製作者は僕だとバレないようにお願いします。」


 「なんじゃそんなことならば別に良い良い。ここで露天商をしているのは魔法具を普及するためでもあるが、資金稼ぎの面もある。お主の利益から1割貰えるかの?」


 「ええ、それくらいならいいでしょう。これで契約成立ですね。」


 「何を言っておるのじゃ?ちゃんと契約魔法を使わなくても良いのか?」


 「契約魔法?すいません、世捨て人のエルフから育てられたもので世間に疎いのです。」


 「なるほどの、契約魔法というのはの互いの魔力を使いこの世に理を作り保存する物じゃ、個人間の契約で良く使われるの。だが、理不尽な魔法が使えなくなるや世の理そのものを変えるような契約はできぬ。あくまで今回のようなレベルに限った話じゃの。大体は商業ギルドで代金を払って契約魔法が使えるものに仲介してもらい第三者の契約魔法を使うものが相互の理を保存させるイメージじゃの。」


 なるほど、これは便利そうだな。だが商業ギルドに契約内容がバレるというのは頂けないな。安全装置として他のものにバラせないなどをつけるものもいるだろうが抜け道なんぞいくらでもある筈だ。例えば事前に使った契約魔法の方が優先度が高いなどを設定して優先権を作っておけば上位者が聞き出した時無抵抗で話せるとかな。


 うん、今回は俺が契約魔法を覚えてみるか。これはちょっと宿屋に戻って要検討事項だな。


 「なるほど、よく分かりました。少し試したいことや確認したいことがあるのでまた後日こちらにきてもよろしいですか?」


 「ふむ、まあ調べたいことや考えたいこともあるじゃろう。ワシは大体このあたりにいつもおる、好きな時にでもきてくれい。」


 そう言って変な爺さんと別れた。あ、名前聞くの忘れた。

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