第21話

 冒険者ギルドを出てミィスさんがおすすめしてくれた木漏れ日亭へと向かう。冒険者ギルドから出て中央広場へと行き商店街方向やギルド街とは別方向の住宅地が多い方向へと進む。


 大きな木の看板に木漏れ日亭と書いてありよく分かる見た目をしている。ログハウスの様な形で2階立てだが横と縦に広くそこそこのキャパシティがありそうだ。落ち着いた雰囲気が漂い、入口であろう木のドアから1フロア分はテラスになっている。柱が2本ドアの前にありそこから庇の様なものが宿の端まで続いている。そこには柵と椅子とテーブルがあり夜は客で賑わうのだろう。


 「こんにちはー。」


 木のドアを開けて挨拶をしながら中に入って行くと中の光景に見惚れた。温かみのある木に包まれており壁には夜には炊かれるであろう松明置き場がある。中央には魔石で作られた灯りを灯す魔法具であろうものが吊り下げられているが木の枠で作られておりこの宿屋の雰囲気を壊さない様になっている。

 少し進んだところでバーのカウンターの様なところがあり、そこでは受付や清算ができる様になっている。そこから対面側に向かって大きく広い酒場の様なものがありとてもいい雰囲気だ。


 「いらっしゃい、本日はお泊まりですか?」


 優しそうなおじいさんが出てきて対応してくれる。


 「はい、冒険者ギルドに聞いたらここがオススメだと言われてやってまいりました。よければお値段の方をお伺いしてもよろしいでしょうか?」


 「ええ、勿論でございます。1泊素泊まりであれば銀貨1枚、湯浴みをされるのであればそこにさらに1枚、食事をつけられるなら大銅貨5枚を頂きます。そこから1週間であれば銀貨15枚、1月であれば55枚と少しお安くなっております。」


 「では、1週間とりあえずお願いします。湯浴みはなしで大丈夫でご飯はお願いします。」


 「かしこまりました。では銀貨8枚頂きます。」


 「はい、こちらで大丈夫ですか?」


 「ええ、ありがとうございます。お部屋は上がって奥の右手の部屋にございます。夕食の時間は18.00〜22.00でございます。息子が作る料理は美味しいので楽しんでください。」


 「はい、楽しみにしておきます。」


 優しそうで丁寧なおじいさんはここの前オーナーなのかな?夜の忙しい時間は息子さんが回して人の少ない深夜や今はおじいさんが手伝うのかな?とりあえずいいお店に当たった様だミィスさんには感謝だな。


 とりあえずもらった鍵を使い割り当てられた部屋に入ってみるとそこそこ大きな部屋だった。机と荷物入れ、ベットという簡素な形だが十分に休めるし音も全然入ってこないいい部屋だ。


 俺は置く荷物が無いため特にする事も無かったため街に繰り出す事にした。目的は商店街での品定めとポーションを売り出すかどうかの確認だな。俺の持っているポーションや武器はどれくらいで売れるのか、売るならどう売るべきか、武器屋に売るのかギルドに売るのか、それを確認しに行くか。


 そう決めたら俺はすぐに部屋を出ておじいさんに出ることを伝えて先程の道を戻って商店街の方へと足を向ける。商店街は露天商の様なものと屋台、それと店が点在していた。ある程度は纏まっている様でわかりやすくて助かった。

周りを鑑定しながら歩いて行くが、ここら辺は田舎でダンジョンも近くにないため必要以上の武器や防具、ポーション類はない様でレベルの低い道具が多かった。


 参考までに劣化ポーション系がメインを占めており、武器はそこそこの完成度の武器ばかりであった。このレベルだと俺の武器を売るには微妙かも知れないな…。とりあえずは1週間ここで冒険者として活動してDランクを目指すか。正直空間魔法のレベルが上がってテレポートがコンスタントにできるようにならなければ遠い街を目指すのは非効率だ。


 この街での信用を得て、自分のダンジョンを報告、その後に国中から人がこの街にやってきて賑わうってのが理想かな?その時にはこの街を支配下に置いておきたいな。そうすることでダンジョンに入っていなくてもダンジョンポイントを貯められるしな。


 そろそろ露天商も見終わりどうしようかなと思っていたところ面白いものを見つけた。鑑定をかけると魔法具が売っていたのだ。


 魔法具 試作型1.58番

 魔力を通すことで簡単に火を起こそうとして作った魔法具。だがこれは試作品で魔法具から火が出るが、魔法具自体も燃える。


 なんだこの失敗作品は酷すぎるだろオイ。

ゲンナリした顔をして見ていると変な爺さんから声をかけられた。


「もし、そこのお方、ちょっといいかね?」


「え?」

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