第3話 帰らない父

家出していた父が1度戻って来た事がある。

多分私が4歳くらいの頃。


でもそんな生活は瞬く間に終わり、また母と2人の生活に逆戻りしていた。


父はまた「違う愛人」の元へと去って行った。

そう、父は女癖の至って悪い男だった。


一旦母や私の元に帰って来たのも、暮らしていた愛人と別れたからで、また出て行ったのは、また新しい愛人が出来たから。


父曰く、自分が口説くのではなく、いつも女から寄って来た。

「女から口説いてくるんや。男としてそれはほっとけんやろう?」


それは貴方に惚れたのではなく、貴方のお金に惚れただけ。


でも確かに父は今で言うイケメンだった。

背はさほど高くはないが、細身で目は二重、鼻筋の通ったいい男であった。


ならば父にそっくりと言われ続けた私は、さほど美人ではない。


せめて私が美人であるという父からの恩恵があれば、ここまで父を憎む事も無かったかも知れない。



1回の出戻りがあったものの、その後父が帰って来る事はなく、母達の長い長い別居生活が続いた。

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気が付けば極道の娘 クイーン @queen3

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