第47話 英雄の到来
「ロッソ・アルデバラン。私はお前のような英雄の到来を、千年待っていた。いや、千年経たなければ到来しないように調節した。私の蔵【魔界】を攻略する者こそが、燦砂を倒し、和泉の支配を打ち砕くことができると、信じていたからな」
「そのためだけにあんたは、あんなおぞましいものを造ったっていうのか?」
俺は、怒りよりも疑念の方が勝ち、そう問うていた。
「もちろん、千年前の西大陸は、乱世だったからというのもある。皆が共通の敵に向かって団結しなければ、平和の実現は不可能だった。だが私の最終目標は平和などではない。兄の打倒だ。和国に負けぬ強力な国家に成長するまで、魔界は攻略されてはならなかった」
閑厳は滔々と語るが、もう姿がぼやけ始めている。早く核心に迫る情報を訊き出さなければ。
「燦砂を倒す策は?」
「再生不可能になるまで破壊する。それしかない。奴自身の身体が蔵だ。まずは脳を破壊し、動きを止めたうえで粉砕するしかない」
「どうすればそんなことが……」
「そんなことより、警告しよう。エレナ・メルセンヌ。己の犯した罪を忘れぬことだ。望まずしてなったとはいえ、【大罪魔妃】の地位は何かと恨みを買う。そしてロッソ・アルデバラン。そんな彼女を罪の意識から救ってやれるのは、お前だけだ。片時も傍を離れぬように」
閑厳はそんなことを言ってきた。
「なんだと? 誰のせいでエレナがこんな目に遭ったと思っている? お前にそんなことを言う資格があるのか? なぁ!」
俺は怒鳴りつけるが、閑厳は靄のように消え去った後だった。
「くそ! これじゃあ何も分からずじまいじゃないか!」
【いえ、そんなことはありません】
この声は……アヴァロン? 精神共有か。
「アヴァロンさん、聞こえるんですか? 無事ですか?」
【情報は私が【他心通】で全て読み取りました。いずれ伝えます。私もナブー帝国に向かいますから、帝都の中央広場で落ち合いましょう!】
声色からして、大丈夫そうだな。
「分かりました。どうか気を付けて」
【いえ、気を付けなければならないのはあなたの方かもしれません。燦砂が気付いたようです。おそらく何らかの攻撃が来ます】
俺は思わず天空を見あげる。
和国の結界は迫って来ていない。俺とて魔力は感知できるので分かる。
ならば、別の遠距離攻撃が来るのか?
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