第27話 罪の告白
「そうだ。あの時、エレナ・メルセンヌには魔王の霊が憑りついているようだった。許されないことは分かっている。俺も、分かるんだ。ジーグ、ヴィアク、アルタイル同様、まともな死に方はできないってね」
何を呑気なこと言っている? 今すぐ死んでくれよ。
お前に、弓聖を名乗る資格などないだろうが。
「精神共有【非想天】」
怒りで満たされた俺の脳内に、映像が浮かんできた。アヴァロンの精神共有か。
おそらくホーンブレアの記憶を他心通で読み取ったのだろう。
脳裏に浮かんだのは、勇者ジーグがエレナの両脚を斬り落とす場面だった。
エレナは小さく呻くが、悲鳴は上げずにこらえている。
『ジーグ様の選択なら、受け入れます。私の犠牲が魔界攻略の礎となるなら、本望です』
『すまない。エレナ。俺たちは生きて帰る。エレナへの大恩は、片時も忘れない!』
その後ろで、騒ぎたてる大男がいた。戦士ヴィアクか。
「やめろジーグ! 俺が残ると言ったんだ! その娘には、帰りを待つ家族がいる! 婚約者だっているんだぞ! 考え直せ!」
「お前は、お前が考えている以上に重要な人物なんだ! やつらの、【イズミ】の支配を打ち破るには、お前が必要なんだ!」
その後もヴィアクはジーグを怒鳴りつけるが、ジーグは頑として応じない。やがてヴィアクは、体力を使い果たしたのか、そのまま気絶した。
『これで時間が稼げる。ひとまず第七層の安全地帯に避難して、体力を回復するぞ』
ジーグは指示を飛ばし、ヴィアクを背負って上層まで歩いて行った。
後には血を流すエレナだけが取り残されていた。
「本当に申し訳ないことをした。なんと言えばいいのか、どう償えばいいのかも分からない。なぜジーグがヴィアクの生存にこだわるのか。そもそも聖剣とは何なのか? 【イズミ】とは何者なのか? 何も分からない。だが、」
気付くとホーンブレアは、這いつくばり、額を床に擦り当てていた。
「本当に、申し訳ないことをしました」
ホーンブレアは、遂に土下座して謝罪した。
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