第28話 オルクロード
「貴様の罪も、エレナ様はお許しになるだろうよ」
どこからか、低い男の声が響いてくる。
見ると、窓は開け放たれ、金色の身体の人型モンスターが立っていた。かなりの上級魔族と見受けられる。
「我が名は煌鬼オルクロード。来い。貴様がエレナ様の眷属となるなら、罪を贖うことも可能だ」
「それはできない」
ホーンブレアの瞳には、うってかわって闘志がみなぎっていた。
「これは我々の負った罪。決して贖えない罪。魔族となったエレナ・メルセンヌの眷属となることは、罪を背負うことを放棄するのと同じ。だからできない」
ホーンブレアの決心は固いようだ。
「ならば死ね」
次の瞬間、金の炎が屋敷を燃やし尽くす。俺たち三人は辛うじて回避した。だが、
「ぐほっ、」
ホーンブレアの胸は、オルクロードの腕に貫かれていた。どくどくと血が流れ落ちる。
「これで罪を償ったつもりか? それとも、単に力が衰えただけか?」
「両方だよ」
ホーンブレアはそうとだけ吐き捨て、がっくりと項垂れた。
「つまらんな。弓聖といえど、堕ちたものだ」
オルクロードはホーンブレアを投げ捨てる。燃え盛る金炎に投げ込まれた弓聖は、あっという間に灰と化した。
「さて、次は貴様の番だ。ロッソ・アルデバラン。魔族に転生し、エレナ様の夫となるのは決定事項。逆らうのなら殺すまでだ」
「エレナの部下はどいつもこいつも同じことを言うな。これ以上俺を怒らせるなよ……」
俺はもう、オルクロードとやらと会話をする気にもなれない。
エレナを魔族の餌にするような奴らに、エレナを魔王の器にしようとする奴ら。
どうしようもない連中ばかりだ。
この世界は敵ばかり。
いや、そんなこと当たり前じゃないか。
最初から頼れるものなど、自分しかいない。
「そうか。そんな口を利くか。ならば貴様はエレナ様が復讐を成し遂げるうえで邪魔だ。人間の婚約者など必要ない。情愛など、人類の根絶に何ら役に立ちはしない」
オルクロードは貫手を放ち、一撃でアヴァロンを吹き飛ばした。 ガードはして無傷のようだが、当分戻って来れないだろう。
『精神共有【非想天】』
アヴァロンはまたしても遠隔で意識を繋いだ。
『あなたはもう法力と魔力をブレンドできる。このイメージで技を繰り出してください』
「分かった。その前に!」
俺は法力を凝集させ、オルクロードの顔面を殴り抜けた。
金色の硬皮が砕け散り、血しぶきが散る。
これで時間は稼げた。
俺は脳裏に映し出された映像と言葉を記憶に焼き付ける。
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