第13話 エレナの弱点
「気になる点があります」
翌朝、王都へ向かう馬車の中で、アヴァロンは不意に口を開いた。
「なぜ、エレナ・メルセンヌは直接出向いてあなたを連行しに来ないのか、という点です」
確かに。あれだけ俺に会いたがっていたのなら、直接出向いた方が早い。実際、ドラゴンロードは生身の肉体で来たわけだし、エレナにできないはずがない。
「なにか事情があることになりますね」
「そこで考えられるのは三つの可能性です。まず一つ目が、エレナ・メルセンヌはヴァンパイア系の種族に転生し、太陽光に弱くなっている可能性です」
「転生……ですか」
信じたくないが、あれだけの力を手に入れ、魔妃として君臨しているのなら、魔族に転生したと考えるべきか。
それに、ここから魔界の最深部まではかなりの距離がある。往復の間に夜が明けてしまうから出て来れない可能性も、十分に考えられる。
「第二の可能性が、海魔系の種族に転生させられている可能性。水の中でしか生息できないので、当然地上には出て来られないわけです」
「ですが、エレナの分身は普通の人間の姿でしたよね?」
「分身ならどのようなかたちにもできます」
アヴァロンは呆れたように指摘した。
「ただ、本体がドラゴンロードのように人間形態に化けていたとしても、種族としての弱点は引き継がれますから、考える価値はあるかと」
そうか。エレナが地上に出て来られない理由は、弱点に直結しているかもしれないのか。これは考えなければならない事柄だった。
「第三の可能性は、魔界から常に魔力の供給を得ていて、外に出た瞬間魔力が枯渇するため、というものです。これが一番厄介ですね」
「裏を返せば、魔界にいる限り無敵ってことですもんね」
そうなれば、本格的にアヴァロンの異界召喚に頼るしかなくなる。だが、異界召喚は第6層、第7層を突破するためにしか使えない。
エレナとの最終決戦は俺一人でやるしかない以上、あてにはできない。
「そうなれば、魔界から引きずり出すしか方法はなくなるわけですね」
「次に魔王軍幹部が現れたら、私の他心通で情報を読み取れないか試してみます。それで弱点が分かればいいのですが……」
アヴァロンには頼ってばかりだな。それにしても、なぜ出会ったばかりの俺にここまでしてくれるのか。よほど魔王軍への恨みが強いのか?
「……言いたくない事情もあります」
アヴァロンは俺の心を読んだみたいだ。
「すみません、口には出さなかったので許してください」
「私も、不用意にあなたの心は覗かないようにします」
気まずいのか、アヴァロンは目を逸らした。
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