7.【賢者の指輪】

グォォォォ

 「陛下お下がりを!!」

 「この国の主君として引くわけには行かん!!押し返せ!!」


 城壁の向こうには大量の魔獣で溢れていた。こちらも壁外へ出て迎撃するも数が減らない、壁の上から魔法で攻撃する部隊もあるが皆疲弊して倒れていく。


 「くぅっ、全ては御使様達と賢者に託すしか無いのかっ!!」


 「なぁ〜に陛下!!賢者様が暴れていた頃に比べればこんなもの赤子のような物です。」


  王はここで疑問を口にする。 


 「のう、もしこの一件が終わって賢者が以前の力を取り戻したら・・・・」


 「それこそ国の危機ですなぁ〜、まぁありえんのでしょうがね!!ガッハァハァ」


 王の顔が青ざめていく、昔賢者にされた苦い思い出がフラッシュバックする。

もし賢者が魔力を取り戻したその時は・・・・・



  石像の奥の階段を登ると頭上に頑丈そうな扉がある。


「いいか!!開けるからな。」


ギィィィィ 


 扉を開けるとそこは荘厳な装飾で飾られ、頭上にはシャンデリア。赤いカーペットが敷かれていて、その先には

立派な玉座が少しずらされて置かれてあった。


「「「「戻ってきただけじゃぁあねえか!!」」」」


「え!!ここの中央にあったってことなん?」

 

四人は中央付近の床を見つめる。


「この床って壊せるんすか?超堅そうじゃない?」


 ハバキはリュックからハンマーを取り出して叩く、びくともしない。


「妾に任せておけ。ハァァ!!」


バコココォォッォ


 中央にクレーターができる。周りに飛んだ瓦礫の中から一際目立つ宝箱が原形を留めて出てきた。

「ふぅ壊せなんだか・・・・」

「いや壊すなよ!!」


 箱を開けると両手で抱えるほどでかいダイアモンド型の宝石が出てきた。


「これが結界発生させる装置・・・」


 ミネオが触れた瞬間吸い付くような感触と吸われる感覚が起きた。


「ひやぁんぅ!!あぁぁぁぁ〜」

「おいマジきしょなんすけど!!中身おっさんが変な声上げんなし!!」

「もうだめだぁ〜動けない〜。」

「あ〜これは魔力を吸い取られておるわ。」


「ふん!!ミネオは情けない。この女神の莫大な魔力を吸わせてやろォォっぉォォフッフフンウゥッゥゥハァ〜ン」

 地面に倒れる変態自称女神クラノーチカ・・・敗北。


「こりゃああれだ結構な魔力がないと無理なやつだ。」


「妾の以前の魔力があればのう。」


「そう言えばそのケンジャの指輪は育成期間中の魔力を全て蓄える能力があったんだった。それを外してこれに使えばいいんじゃない?」


「「「もっと早く言えや!!」」」


 三人が叫ぶ。


「でも・・・もうなにを願ってつけたのかも忘れたぞ。」


「思い出せ!!その指輪をつけた日のことを!!」



 ーあれは三年くらい前ー



「ヒャァ〜ハっハッッ!!愉快じゃ愉快じゃ!!」

 酒を飲みながら宿で目につく魔法使いどもの身包みを全て剥いでいた頃、


「ガラ悪すぎじゃねぇかこの最悪賢者!!」


「うっさいわ!!暇だったんだから仕方ないじゃろ!!」


「犯罪だわ!!」


 酒を飲みに飲みまくってベロベロになったまま市場で指輪を買って・・・

「あ〜身長伸びねぇ〜かな〜。」



「無理だろこれ・・・」

「無理じゃね」

「無理だわ」


「全否定するな〜!!まだまだ成長期だわ!!」


「でも身長を伸ばせばいんだろ!!これでどうだ!!」


 ミネオはワイシャツのボタンを外して上に持ち上げてからカラティナを抱き上げて二人羽織にする。

ハバキは姿見を出してその姿を見せる。


「お客さま!!こちらが大変身したあなたです!!」

「ぬォォッォォ!!身長が伸びた!!」


 少しだけ指輪が緩む。


「今度はウチの番だ!!」

 ハバキが着流しを少し緩ませてカラティナを押し込もうとする。


バインッ バインバイン


「ぐぬぬぅぅ痛い痛い痛い!!無理乳がちぎれる!!」

「なんじゃそのでかいのわ!!」


指輪が締まる


「次はこの女神クラノーチカの番だ!!行くぞォォッォ!!」


『ハァイ!!筋肉神殿大本尊!!』


 頭だけカラティナのロリ顔で体がムッキムキの魔法少女が出来上がる。ポーズをとるたびにミチミチ音が・・・


カランカランっ


「今だ!!指輪をその装置に触れさせろ!!!」

カラティナが指輪を掴んで装置に当てる


ー眩い閃光が辺りを照らす


バンッ

 謁見の間が勢いよく開かれて王様と騎士が入ってくる


「でかした!!賢者と御使ィィィぃギヤァっあっぁ化物ォォ!!」


 カラティナと融合した女神の姿を見て倒れる王様。

そして、ミネオ等三人の体が光り始めて元の性別に戻る。


 市民たちは女神一行を乗せた馬車に手をふり歓声と拍手を送る。

街の中央へ着くと市民の前で王が四人に褒美を与える。


「女神様御一行と賢者よ。此度はよくやってくれた。」


「「「「ははぁ〜」」」」


「褒美を授けたいまずは勲章と金貨3,000枚を受け取ってくれ。」

「「「「ありがたき幸せ。」」」」


「ちなみに聞くが。賢者の魔力って戻ったのか?」

「はい王様!!この賢者以前の力を取り戻したでございます!!」


「」


 会場全体がさっきまでのお祝いムードが無くなる。


「マジか・・・」「嘘だろ・・・」

(なんでだろう俺嫌な予感がする。)


 王が両手を広げて宣言する


「女神様たちへの報酬がまだ足りないとは思わんか?我が国民よ!!

女神様たちの崇高な旅に我が国一の魔法使いをお供につけたいとは思わんか!!」


民衆が声を上げる。

「「「「ぉぉっぉ王様バンザァァイ!!」」」」


「我は女神様たちへの褒美として賢者カラティナを授けたい!!」

「「「「ちょっとォォォォ」」」」


「何か異論は?」


(この王面倒な奴を俺等に押し付けてこようってことか!!)

(おいおい俺の飯を盗み食う奴が一人増えやがった!!)

(私の下僕がまた一人増えたけど・・・嫌な予感がする。)

(くっそ〜この国の魔法使いの身ぐるみ剥いだり、国の金庫からお金チョロまかせ無くなる!!)


「貴殿等が初代魔王を探しているということで一番いそうな場所をこの国の預言者に聞いておいた。」

「「「「それは・・・あざっす。」」」」

「さあ女神様たちよ!!旅立つのだぁ!!」


四人の足元に魔法陣が展開される。

「「「「ちょっと待てぇぇぇ!!俺たちこの国の英雄ぅぅっぅー」」」」


 気がつくと四人は辺り一面銀世界のどこかわからないところにいた。

「「「「いや!!おかしいだろこの展開!!」」」」

「カラティナ!!賢者だろ!!魔法使って転移しようなぁ!!早くしてぇぇ!!」

「・・・・・無理かも。だって・・・・魔法忘れちゃった。」

「「「・・・・へぇ」」」

 素っ頓狂な声が揃う。


「仕方ないじゃろ!!三年魔法が使えなくなって飲んだくれてたんじゃもの〜〜!!」

「この役立たずクソ賢者がァァぁ!!」

「寒い・・・・・ああぁネノラ・・僕疲れたよ・・・・」

「寝るなぁぁ!!それと魔王はここにいない!!」

「はい、ということでいつものアレ使うわよ!!」

「あらお姐様あれを使うのねぇ〜。」

「なに急に変な口調になって!!」

「お黙りぃ!!小娘!!それじゃあ行くわよ〜。」


ピヨよよヨォぉっぉ〜ん


四人の後ろにはぱっと見可愛い白い柴犬みたいなのがいる・・・・大きさを除けば可愛い。

バクンッ


ー四人は犬のネトネトな口の中で次の町への到着を待つ。




次回  「まぁ口の中で弄ぶなんてぇ!!まぁひどいわんちゃん。」

    「ん〜ぅん!!もうキャワ〜ウィウィ〜!!」

    「こやつを白玉と呼ぶ!!わしの下僕にする〜。」

    「ダメじゃ捨ててきなさい!!」            次回 北の方から

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