5.【ケンジャの指輪】

ザザァ〜 ザザァ〜

海岸に打ち上げられた俺は自分の体を見て叫ぶ。


「これは一体全体どういうことぁぁぁ〜!!」


「おいおいうるっせえな・・・・誰だお前。」

「そんなん状況的にわかるだろぉ!!ミネオ!!ただ胸も何もない女になったミネオ〜!!

て言うかお前は何なんだよそのギャルみたいな見た目は!!」

 

 起き上がったハバキはなぜか赤い髪に日焼けで黒くなり、男の時よりもなぜか身長がのびているので双丘が着流しに締め付けられてめをひく。


「やだぁ〜おじさまだっさ〜。まじウケるんですけど〜!!マジヤバたんで草生えてぴえん。ぱおん無くなって草。」

「何でそんなにギャル語ペラッペラなんだよ。それに俺はおじさまとよばれる年齢じゃない。」


 そしてもう一人・・・女神?が浜辺でうつ伏せになっていた。確実に起きている・・・両手で顔を押さえている。


「女神様・・・」

「嫌・・・絶対見ない。いい?流石にこの格好で男神になったらただの変態よ・・・わかる?こんなガチムチになったなんて考えただけで・・・」


「ヒャッハぁぁぁ〜おいハバキそっち持てぇぇぇ!!」

「り〜!!」

「やめろぉォォッォォッ」


 男神の両手を引き剥がしてその姿を海に映す。

「あ・・・・あっれ〜俺はなんか展開間違えた?」

「これはあり寄りのあり的な〜?」

「ふふふっフハハハハ!!貴様等良いか男になっても有り余るこの魅力の前に平伏すが良いわ!!」

 

 目の前の男神の顔は引き締まった男顔で金髪オールバックに、フリフリのミニスカからは丸太のように鍛えられたバキバキの大腿筋、大胸筋は服に断末魔を上げさせたそのスタイルはー

             

              『筋肉神殿はい建立!!』


「ただその服じゃなければかっこいいんだけどなぁぁぁ〜」

 パッツパッツの魔法少女のような姿は・・・・

「言うなぁぁぁぁぁ!!」


 魔法都市「ディズレディラントウ」魔力あるもののみしか立ち入ることができない魔法使い達の楽園都市だ。空には魔法使いたちが飛び回り、生活のほぼ全てを魔法で賄っている。何とか守衛さんに事情を話して都市への立ち入りを認められたはいいものの住民の視線が・・・痛い。


「女神・・・ちょっと離れて歩いてくださいよ。」

「ちょっとまさか私を置いてどこかへ行く気じゃないでしょうね。私とっても弱いのよ!!お願いひとりにしないで!!ただでさえここの住民の視線でHPがレッドゾーンなのに!!」

「とにかく金だ。金がないとほんとにやばい!!女神何とかしろよ!!たまには活躍してくれよ!!」


 一行が道のど真ん中でそんなことをしていると、一人のヨボヨボのおじいさんが近づいてきた。


「ん〜・・・なななぁ!!貴方様はまさか!!伝説の魔法神の身使い様では!!」

「おじいちゃん私女神イィッー」

「ご老体!!よくぞおっしゃった!!このお方こそ魔法神の身使いなり!!皆崇めよ!!」

 女神を咄嗟に殴りつけて黙らせてからここぞとばかりにたたえると町中の人間が拝み出した。

俺はもう気付いていたんだあっちこっちで見かけるこの街のマークが昔にやっていた魔法少女系のアニメに出ているマークに似ていることに。この見た目なら何かしらの信仰対象になるということを!!


「さあ皆様御使様を崇めるのだ。御使様〜お元気で〜!!」


「あっ!!ちょっとどこに行くの!!置いてかないでえぇぇぇぇ〜」

 女神を体よく引き剥がせたので女体化を解除する為に情報を仕入れに行く。こう言う時は何かしらのギルドとかに行くべきだ!!それか教会だ!!



「女体化・・・・?そんなんあるわけないだろ。オタクらアホ?」


「あぁ神よ。この哀れな子羊たちに救いを与えたまえ。」


 結果門前払いだった。

 教会の壁に寄りかかって頭を抱える。

あ〜まずいまずい俺の魔法のステッキが砂漠の秘宝と化してしまった。もしかしたら埋まっているかもしれない・・・というかあれか?伝説の魔法道具が封印されている洞窟の鍵だったとか?


「おいミネオっちよ。どうすんよこれ。マジオワタってやつ?」

「どうするって・・・あ〜どうするよこれは俺女体化ヒャッハ〜ってなるはずなのにまさかのサスペンス劇場だし。」


「お前なんかスキルとかないのか?最近ステータス見たのいつよ。」

「見てみるか?ステータス」


『ヤマザキ・ミネオ 24歳 :セールスマン』

『称号:常識に囚われたツッコミニスト【どんな状況でもうるさい程ツッコミをしなければならない】

    クラノーチカの御使     【女神クラノーチカの補佐・ニガサナイ】』

『 スキル : 『話術』Lv.5 『交渉術』Lv.5 『情景反射』ツッコミに限りLv.3

       『幸運』:Lv7 『引き寄せの法則』Lv.7 『普通殺し』Lv.2 』  

 何なんだ?このツッコミどころ満載のスキルは・・・クラノーチかの御使とか最悪なんですけど。


 まあとりあえず使えそうな引き寄せの法則というものを使ってみるか。


「スキル!!『引き寄せの法則』!!」


「えっ・・・お前何いきなり叫んでんのだっさ。

スキルっていわなくても勝手になるもんだし。・・うわまじドン引きなんですど・・・。」


「う・・・うっさいわぁぁ!!知ってました〜!!何だよこのスキル!!女体化解除できる奴読んでみろやぁ!!俺にヒロインとかラブコメ展開持ってこいやぁぁぁ!!と言うよりも俺に異世界無双させろやぁぁぁぁあ“あ”。」

ドゴォォォっ

 

 突然教会の壁が爆散して背後から体を掴まれる。

「お兄さ〜んお困りじゃない?・・・ンヒっく。なあなあ?そうだろそうだろ?」

 うぉっぉぉっ!!何だこの酔っ払ったロリっ子は!!ボロボロの修道服に身を包んだロリ

 

 少女が首をキリキリとロックしてくるっっっ!!しっぬ!!

「ギィブッ!!締まる!!」

「なんだい?お兄さん?助けて欲しいの〜。ハッハッハどう助けて欲しいかちゃんとおねだりしなさ〜い!!」

(息ができねぇんだからおねだりも何もできねぇに決まってんだろうが〜!!)


「ちょっとカラティナ様!!死んじゃいますよその人!!」

 先ほど女体化の解除を依頼したシスターが首を絞めてきた女を引き剥がす。

「ちょ〜ッとシスター!!私が役に立たなくなったからって私を捨てるき!?はいはいどうせまほうが使えなくなった穀潰しですもの!!あ“ぁぁぁ〜ぁ!!」


「ゲッホッー殺す気か〜!!」

「失礼しました。この方は『元賢者』のカラティナ様です。今はベロベロですけどこの街随一の大魔法使いでした。」

「でした?」


「実は3年ほど前に市場で買った指輪によって魔力が封じられた代わりに・・・怪力になってしまったのです。

外すことができず、破壊すらも困難を極めまして・・・」

 

 俺は勢いよくハバキを見る、ハバキはそっぽ向いている。

「あれお前作ったろ。」

「しもしも〜!!今暇たんでけんぴしたいからいつメンでよろ〜。」


「お前そんな言葉しらねぇだろ!!てか何言ってるかわかんねぇし!!お前作ったんだろあの指輪!!」

 

 ハバキはため息をついて説明し出す。


「あれは魔法戦士養成アイテム【ケンジャの指輪】だ。自分の魔力を封印する代わりにステータスの物理的な部分にそのまま加算する装備品だ。持ち主が願いを叶えるまで指輪は如何なる状況でも外れない。」

「おい!!女体化解除どころか運名を狂わせた人引き寄せちゃったよ!!」


 酔っ払っていた女性がこちらに近づいてくる。ゆらゆらと近づいてくる姿が恐ろしくてハバキと抱き合い悲鳴をあげる。


「「お許しを〜!!」」

 彼女は俺の顔を手で掴んで撫で回す、じっと顔を観察してからシスターに言った。


「シ〜スタ〜。今すぐ私に解毒魔法を。この人神の御使よ・・・変な魔法にかかってるけど。」

(そういえばこの人最初に会った時にお兄さんって言っていたけど・・・もしかして。)

シスターは解毒魔法をカラティナにかける。


「ど〜れ見てやろう。ん〜これはこれはまためんどくさいものにかかっておるなぁ〜。」

「この女体化は治るんですか!!」

「これはペナルティみたいなもんじゃ。」


・・・・・・は?


「お主ら神の御使になったじゃろ。それで最近何かしでかした。だから他の神か何かが罰を与えたのじゃ。まぁ心配するな何か良いことをすれば治るであろう・・・ただしこれ以上罪を重ねた場合は知らん。」


(これは・・・・あの王子を禿げさせたことの罰ってことっすか!!)

「じゃあいいことすれば治るんですね!!何か困っていることとかありますか!!」

「まあまあ焦るな。どんなに良いことをしようとしても前にしでかしたことと同レベルでないといけんわな。

お主らの場合は国を一つ救うくらいのことじゃなければの。」


 するとそこへ全身を鎧で包んだ騎士が馬の頭のような飾りがついた箒で飛んでくる。

「賢者様!!大変です、予言通り神の御使様が現れました!!今すぐに王宮へいらしてください。」


 その一言で俺とハバキは青ざめる。あの女神が何かをやらかすのかそれともこれから何かをやらかすのかの二択しかないからだ。こっそりその場を離れようとすると賢者に捕まる。


「お主ら妾の人生を狂わせたのだからしっかりとこきつかわせてもらうぞ!!この指輪が外れるまでは妾の下僕であるからな。この格好では王宮に行けんな、シスター此奴らを捕まえておけよ〜。」

 

 そう言ってすごいスピードで境界に入っていく。

 戻ってきた彼女の服装は、チャイナ。高下駄に裾が丸くなったズボン、袖がないチャイナ服で頭は左右におさげを団子みたいに丸めている。錫杖を持ってシャンシャン言わせている・・・

そうだ、天竺に行こう。


 『ディズレディラントウ』王国王宮 謁見の間


 ずんずん歩いて行く賢者の後ろで正座する。目の前では女神がムッキムキのお尻をこちらに向けながら熱弁?を繰り広げている。


「だ〜か〜ら!!私は女神クラノーチカ、初代魔王を探し出すために旅をしているの!!」

「いやいや御使様でいらっしゃるのでしょう。この予言書に書いてありますから。」 

「そもそもミネオあんたが私を置いて行くのが悪い!!」

「なっ!!貴様御使様に無礼であろう。」

「ヒィぃぃん」

 

 首元にハルバートを突きつけられる。あの女神は置いていった腹いせにさっきから何かにつけて俺の首元にハルバートを突きつけさせてくる。


「女神様〜!!お許しください〜!!」

「のう王よ、そんなことよりも予言に備えたほうが良いのでは?」


 王はひとつ咳払いをするとこうつづける。

「『予言書』はこの国が創設される時に記された確実な未来を記した書である。内容は一般の民には少し代えて伝えておるが、『神の御使が現れし時に最厄起きる』とあるのだ。」


「最厄・・・広義すぎるな。」


「この国の防衛システムとかがダウンしたりして・・・・」

俺は冗談のつもりで言ってしまった。

「そんなことあるわけなかろう。この国は魔力持たぬものと魔物を拒み、国の姿自体も惑わせる結界が張られているのだ。建国以来一度も機能を失ったことがない、そんなことは絶対にない!!」


「王よ!!緊急事態です!!我が国の結界が崩壊いたしました!!」


「おぃぃぃ!!ミネオ!!お前何してくれてんだぁぁぁ。お前のスキルのせいじゃねぇか!?」

「私も知ってるわよそのスキル!!『引き寄せの法則一級フラグ建築士』でしょ!!何ちゅうスキルよ〜!!」

 二人に肩を揺さぶられる。

「魔物の群れが迫ってきております!!王は今すぐお逃げを!!」


 王はこちらに一歩一歩近づいてくる。

「神の御使達よ。すまないが我が国のために力を尽くしてはもらえぬだろうか・・・もちろん礼はする。」

その言葉を聞いて女神が立ち上がる。


「王よ顔をあげなさい。私は女神です、この世界の子が困っているのならば助けないわけにはいきません。

この女神クラノーチカが必ず解決いたします。」

 

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