4.【ブラジリアンライトニングステッキ】
砂漠ーそれは果てしなく続く砂の大地、灼熱の暑さ。見渡す限り砂の平原。
そんな砂漠を歩むガリッガリにしぼんだ三人の姿がある。
「あちぃ〜。」
「ちょっと・・・あんた水よこしなさいよ・・・・」
「ないですよ・・・だってあんたら二人に盗られましたから・・・・・」
「ハバキ・・あんたなんかいい道具持ってないの・・・」
「俺は鍛治師だぜ・・・何でもかんでも作れる訳じゃねえよ・・・・」
三人は魔王城を出てから女神が気まぐれに決めた方向に向かってひたすらに進んでいた。
「あの時の私を呪うわ・・・神様なのに行先を運任せにしたんだもの・・・」
「まあ冷静に考えたら前の一件で他の神から恨み買ってますもんね・・・・」
「仕方ない・・・あれを使うか・・・」
二人がキラキラと目を輝かせてハバキの肩を掴む。
「やっぱりあるんじゃないですか!!先に使ってくださいよ!!やっぱりあれですか天才鍛治師は奥の手を最後にとっておくもんだとか言うかっこいい系のやつですか?」
「さすが我が下僕ね!!さあやっておしまいなさい!!やってください!!」
「最初に行っておくけど・・・あんま期待すんなよ。」
ハバキは懐から笛を取り出した。見た目は押すと鳴るチキンにそっくりだが目がキリッとしている。
「こいつは転移魔具【パックンチョット】という笛だ。近くの街に移動することができる。」
「じゃあさっさと使いましょうよ!!」
「私が吹くわね!!」 「あっ!!まだ説明がっ!!」
ピヨよよヨォぉっぉ〜ん
ザザザザザザザザッッ
何かが地中から砂煙を立てて近づいてくる。
「この道具は近くの街に移動できるんだが・・・近くにいる大型魔物の口の中に入って移動する道具だ。」
「「つまり一回食われると・・・」」
二人の馬鹿が青ざめた顔でハバキを見る。
ザバンッ
(((なんということでしょう、目の前から5mくらいの巨大ミミズの顔が出てきたではありませんか。つぶらな黒い二つの目がこちらをっー)))
バクンっ
◆
ペッー ドサッッッ
ミミズは街の門の前で顔を出すと吐き捨てるようにさっていった。
「まぁひどいわ!!散々弄んだ上に捨てるのねぇ!!」
「そうよっそうよ。これじゃあお婿に行けないわぁ!!」
「女神を捨てるなんて、三代の呪うわよぉ〜。」
二人のオネエと堕女神が生まれた。
「そんなことよりついたな。次の街『サラサーテ』。」
「なんかオムツみたいな名前ですね。」
「ねえ。なんか門番の人にドン引きされてるんですけど。」
見ていた門番が近寄ってきた。
「ハバキ様でございまっ・・すよね。数年前このっ・・・国の井戸を見てもらって助かりました。
そのっ・・・ウッ、大変申し上げにくいのですが今すぐお風呂にはいっっっ・・・てください。」
どうやら離れていても匂うほど臭くなっているらしい。恥ずかしくてもう・・・
「「「もうやんなっちゃう!!」」」
◆◆
街について風呂に入り、宿の酒場で作戦会議を行う。
「まず皆さんにミネオから重要なお知らせがあります。金がありません・・・」
「な〜んだそんなことか。そんなの私の少しだけ残っている神の力で魔王からお金を借りましょう。」
『ねえねえ魔王ちゃん!!私女神!!今テレパシー送っているの!!お金かしっっっっ』「ぶベェッー」
後頭部にピンヒールが突き刺さる。
「仕方ないわね!!この美貌でお金を恵んでもらうわ。」
三人組のゴロツキの前に歩み寄り上目遣いでお願いをする。
「ね〜ぇ、おじさま〜。お金ー」
「「「うせろガキ」」」
体育座りで床に座る女神・・・だめだ返事が無いただのゴミのようだ。
「普通にお金稼ぎますか?今余ってる装備ありますか?」
「今あるのは【錆びないナイフ】、【伸びる竹竿】、【毛を代償に雷を落とす杖】くらいだな。」
「うっわよりにもよって微妙。」
目の前のテーブルには、値段が均一なところとかに置いてあるプラスチックの包丁、竹の棒、旅行のお土産屋さんにありそうな棒が置いてある。
「まぁとりあえず売ってみますか。」
◇
「さあさあ 皆様!!今回あの伝説の鍛治師ハバキが皆様にお送りしたい商品はまずこちら!!
何を切っても錆びつかない魔法のナイフ『錆ナイッフ』
気を送ると伸びる『竹ニョッキ改』
自分の体毛を触媒に神の雷を落とす【ブラジリアンライトニングステッキ】でございます。どうぞ手に取ってお試しください。」
興味を持った冒険者達が群がりどんどん試していく。
「おぉこいつは白いな。軽いしかさばらなそうだ。」
「フンッ、ハッー。これは伸びるから不意をつけそうだ!!」
「ハァァッ!!おぉ!!
女達に気持ち悪がられていた胸毛がなくなっていく。毛が多い俺には剃るのよりも戦っているうちに手入れもできて一石二鳥じゃねか!!」
(うわぁぁ〜。こんなほぼ二束三文の、約一つは呪われたアイテムだけど欲しがる人がいるなんて・・・)
そんなこんなで騒いでいると宿の入り口が勢いよく開かれる。入ってきたのは豪華な衣服を身につけたイケメン男。
「サラサーテ王国第一皇子『カッツウォーレ・メド・サラサーテ』様の御前である。」
「まあ良いじいよ。ここにハバキ殿はおられるか!!あなたの武器を拝見致したい!!」
ちょうどテーブルに武器が広がっている時に王子が来た。
「そこの黒髪の男。お前はハバキ殿の仲間か?」
「へぇ、一緒に旅をしておりやす。あっしはハバキが作った商品を売るのが仕事でございやす。」
(うわっ緊張して変な喋り方になった〜。)
「そこのうずくまってる女は?」
勢いよく顔を上げると何故か眉毛が太くなっている。
「へい!!アチキは女神でやんす!!この二人を下僕にして優雅に旅をしておりやす!!」
(いやお前もその喋り方なんかい!?)
「なるほど・・・かわいそうに。頭が呪いにかかっているのだな。」
(やめたげてよぉ〜。もううつ伏せになったじゃないのぉ〜。)
「其方がハバキ殿だな。ここにあるのが貴方の作った武器か。」
「そうでありんす。全部あっちが作りんした。ぜひお試しえぇ〜。」
(なんでお前はお姐様〜!!)
王子は街の通りに出ると一つ一つの武器を自らの手で試していった。
「おおぉ、軽いぞ爺や。錆びないのだから新しいものを作らなくても良いではないか!!」
「そちらの商品は軽くてかさばりませんので旅にうってつけですお客様。」
「おおこの棒はしなやかで、はぁっ!!おおお!!伸びたぞー!!」
(ここの世界の人、気を使いこなすのが普通なのか?てか気って何?俺も出せるのか?)
最後に王子は 【ブラジリアンライトニングステッキ】を手に取った。
勢いよく構えるが杖から出たのは、ほんの小さな雷が一筋だった。
「なんだこの武器想像よりもショボイではないか。まあ少し足の毛がすっきりしたが、元々少ないからな。」
(なんだか嫌な予感がする。)
「よし!!次は最大級の雷だ!!」
「お待ちくださいお客様ー!!考え直しを!!」
「はなさんか!!無礼な!!爺、その者を遠ざけよ!!」
(まずい!!)
俺はハバキと女神を必死に引きずってその場から逃げた。
「いくぞ!!出よ雷ぃー!!」
王子が目を輝かせながら杖を突き出す。晴天には次々と真っ黒い雲が出来上がり、冷たい空気が降りてくる。
ドォッーードゴォォッォォ
衝撃波で三人一緒に弾き飛ばされる。振り返ると雷が落ちたところは熱でドロドロに溶けている。
サラッーサラサラサラサ
王子の金髪が一本また一本と抜けて不毛地帯が出来上がる。
王子がプルプルと震えて顔が真っ赤になっている。
「その者らを即刻とらえヨォォォッ!!」
「「「ヒィぃぃぃぃぃ」」」
迫り来る兵士の波に三人は泣きながら必死で走る。
「お前が売るって言ったのが悪いんだろ!!ほら謝って来いよ、先生怒らないから。ここで見てるからぁぁ!!」
「はぁぁ!!お前がいけやぁ!!そもそも目的地を決めた女神のせいだろ威厳ゼロ女神ィィィ!!」
「私何も悪くないもん!!こんな変な武器作るやつが悪いんでしょぉぉぉ!!この無能鍛治師ぃぃぃ!!」
「おいおいおいおいおいおい目の前からも来てんぞォォッォォッ」
目の前からも兵士の軍団が来る。
「あれ出せあれ!!馬鹿鍛治師!!」
「あれか!!」
ピヨよよヨォぉっぉ〜ん スガがガガガが
地面が震えて三人の足元に巨大な口が出てくる。
「「「ほんとこいつらといるとろくなことがねぇ!!!」」」
バクンッッッ
巨大なミミズは三人を飲み込んだ後凄い勢いで地中へと帰っていった。
◇◆
気がついたら見知らぬ海岸に三人揃って打ち上げられていた。
人数は合っているんだけど・・・なんか違う。
赤い髪の毛のダボダボの白い着流しのロリッ娘。
ピンクの頭で魔法少女みたいなフリフリのミニスカートのムキムキ男。
「いやムキムキって気色悪いわ!!誰得だよ!!・・・・あれ声高くね?」
次の言葉はなかった・・・俺はもう勘づいてしまった。でも俺も変なやつらしい。
「どうせ女になるならボンキュッボンにしてください〜!!」
ー俺はある物が無くなって、あってほしいものもなかった。
⭐︎ 次回 女神一行が辿り着いたのは海岸沿いの魔法の国
ははっ!!あれじゃないよ!!
空には魔法使いが空を箒で飛んでいる あれ絶対痛いよね!!
次回 「賢者になるにも杖がないっ」
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