3.【対女神用最終兵器メイドさん】

「今ごろあの勇者補欠はどうなっているのかしら〜。ちょっとみてみようかしら。」

女神が下界を見ようとした瞬間に目の前に黒い亜空間が形成される。

中から出てきた者は・・・・・・



 この世界の神は創造神が眠りについている間のいわば分身体のようなものらしく、この世界がバランス良く豊かに発達するためにある程度加護を与えたり破滅しないように見守るのが仕事である。

 

 その一柱、流転と遊びの神「クラノーチカ」は他の神の要請を受けて突如発生した魔王という存在を無力化することになった。


「ーと言うのが私があのうるさい女神に転移させられた時の説明なんですが、魔王様のところにもあの女神が現れるんですか?」


「ええ、一応私も

今は魔王になってますけど・・・。


申し遅れました、私『勇者番号一番』兼『魔王二代目』ネノラと申します。」

 

 その言葉を聞いて魔王以外のその場にいたものが固まる。


「えっ!!勇者・・・だったんですか?」


「そうなの〜。元々魔女狩りで逃げる途中に足を滑らせて川に落ちて溺れたの。

目が覚めたら女神様に「『勇者』になってって」って言われて、転生したの。

転生してから色んな人のお願い事を全部叶えていたんだけど・・・いつの間にか魔王になってたの。不思議よね?」


「・・・ちなみに最後に叶えた願いってなんですか?」

「確か・・・「俺の代わりにここの王様になってくれないか?」だったかな。」


「ここって?」


「ここよ。」


 ネノラは床を指さす。


 幹部のミノスが魔王に聞こえないようにこっそりと教えてくれる。


「実は魔王様って天然というか・・・人のことを全く疑わないんです。

だから我らの願望ーいや、魔王様らしい服装も受け入れてくれたんです。」

「あんたら罪悪感とかないんですか?」

 

俺は理解した。


(この魔王は頭がふんわりしすぎている!!変なこと吹き込んだら世界が消し飛ぶんじゃ・・・)


 ハバキがメモを取り出して、ネノラをペンでさす。


「そんなことよりもどんなもんが欲しいんだ?オマエさんにピッタリの物を作ってやる。

何が欲しい、武器か?

時空を飛び越えて直接女神を破壊する爆弾とか、女神捕獲装置とか?伝説の軍勢とかか?」


「え!!そう言うのも作れるんですか〜!!凄いな〜。」


「いやいや全部物騒すぎるでしょ!!もっと穏便なものにしましょうよ。」


「じゃあ防衛系か?そもそもその女神は夢に出てくるんだったか?」


 そうハバキが尋ねるとネノラが身振り手振りで女神の真似をしてくる。


「『やあ魔王!!皆のアイドル『女神クラノーチカ』が会いにきたよ〜!!待ってたでしょ待ってたでしょ。

昨日ぶりだもんね!!』ここで後光がビカッて光るんです。


その後私の全身を撫で回した後に、


『魔王!!私は君の親友だよね。うんうんわかる。本当なら24時間会いにきたいけど他の神にバレるとまずいし、ごめんね!!でも夢には毎日出て会いにくるからね!!』


 これが挨拶でそこから寝ている間の8時間くらい夢の中で女神様のお話を聞いています。

勇者に転生してから・・」


「ハバキ裁判長あの女神を抹殺しましょう。

ストーカーです、こんなナイスバディを独り占めするなんて絶対許しません。破壊しましょう。」

 

ミネオと幹部が魔王に敬礼する。


「いや・・・でも女神様が可哀想なので。週に何度かくらい普通に眠らせてくれるだけでいいので。」


「いや!!あのストーカー厨二病女神に鉄槌を与えるべきです!!」 


 オロオロする魔王と少しでも良い顔をしたいハバキ以外の男達の間で意見が割れる。

ハバキはいつの間にか机に道具と素材を出して高速で何かを作っていた。


「できたぞ。」

「速!!そして何を作った!!」


 何かを持つハバキの後ろにはテーブルに横たわるメイド服のマネキン?がある。

「これはなんですか?ハバキさん。」

「これは対女神のお告げ妨害装置【メイドさん】とでも言おうか。

これさえあれば女神が夢に入ってこようとしてもこの装置が力づくで止めてくれる。

この【起動キー】のヘッドドレスがこいつの鍵だから魔王がこのマネキンの頭にセットすれば完成だ。見た目も性格も最初にセットした奴の意志を反映したものになる。」

  

「「「「「「「「」」」」」」」」


 ここで一番に動いたのはミネオ。

「魔王様!!そのヘッドドレス私につけさせてください!!一生のお願いです。魔王様っ!!」


土下座だ。気持いいくらいのスライディング。

 心の中では『ひひひっ魔王様はお願い事を断れないとかそういう正確があるはずだ。これでくれるはず、ひひひっひひ』などゲスい笑みを浮かべる。


「ええいいですよ」 

ミネオの手にヘッドドレスが渡される。


 「よっしゃぁ俺がご主人っーブフォぉぉっ」 

 背後からミノスがミネオの背中に向けて突進してくる。ミネオの手からヘッドドレスが飛び出す。


「悪いですね。ミネオ様、このミノスがこれを頂きます。」

               その横から氷魔法が放たれミノスが凍りつく。


「これは私不死賢者ネクローッー」骸骨の頭部が飛ぶ、

                       双頭のドラゴンが脇を掠める


「「これは俺らツインドラゴンヘッドのシヴァルッッ」」

                          ドラゴンが石化する、

     

「私はメデューサのッ」、「ボブ」、「俺がッ」・・・・・・・

 

激しい攻防の末にヘッドドレスはマネキンの目の前に立つ魔王の足元に落ちる、それを拾い上げる魔王の背後に


  「「「「「「「「ご主人様になるんだッッッッ!!!」」」」」」」」


 皆が手を伸ばした状態で魔王の背中に飛んでいく、全員の手が魔王に触れたままの状態で。


魔王がマネキンにドレスをつける。


「え〜とこの場合どうなるのでしょうか。」


 マネキンがドロドロに溶けてぐにゃぐにゃとなる、やがて人型になった。


頭にフリフリな白いヘッドドレス、金髪を三つ編みにして右肩に流す、白いフリルのついた足元まで隠れるロング黒いドレスに腰にはフリルのついた白いエプロンをつけている。案外普通?


「この度は主人であらせられる魔王様の手で顕現して頂きたいて恐悦至極でございます。

早速魔王様、お仕事に取り掛かってもよろしいでしょうか?」

「ええ、よろしいですけど。一体何を?」


「少しばかり教育を・・・」


にこりと微笑むと姿が煙のように掻き消えた

 ーそして音もなく男たちの前に立っていた。


 メイドさんは足を天高く掲げ黒く耀くピンヒールで、真下にいたミノスの頭めがけて振り下ろす。


「この駄牛がぁぁあぁっぁぁっ!!」


 強烈な爆風で周囲半径10mくらいが吹き飛びクレーターができる。

ミノスは頭から大量の血を噴き出して虫の息、周囲にいた男達は壁に刺さる。


「あ〜らいけないわっ!!うっかり吹き飛ばしてしまいましたわ!!お次は女神様を教育しなきゃ!!てへぇ!!」

時空に穴が開き入っていく。中から無数の断末魔が聞こえる。


「えっ!?何なにちょっとアンタ私がこの天界最強女神と知って立ち向かおうっていうのね!!いいわ覚悟しなさい。アンタなんて怖くないわっかかってっー。きいやぁぁぁぁぁぁ!!ごめんなさい!?

許してください!!なんでもするからぶたないでぇぇぇ!!」


「なんだあいつっっ!?ぎヤァぁぁぁぁ!!」

         

「「「「「「「「ぁぁぁぁあ」」」」」」」」


ミネオは突き抜けた城壁から空を見上げて絶叫する


「あいつの作るもん!!ロクなもんがねえ!!」


 

 玉座に座る魔王とその脇で微笑むメイドの目の前には、泣きながら正座する女神と縛られた他の神総勢100名ほど

平伏す魔王軍幹部とミネオ、それを見ながら肉を食べまくるハバキがいた。


「あの〜メイドさん?これは?」 

「はい、一名を除く無礼者を捕らえました。処刑します?」「いやいや極端すぎでしょ!!」

「処刑〜はちょっと〜」


 やがて女神が泣きながら訴える


「なんで!!ネノラちゃん、親友だったでしょ!!何が不満だったの?私が可愛いから?私が神すぎるから?嫉妬しちゃったの?まさか・・・神になるッ!!とか?」 「違うわ!!」(byミネオ)


「魔王様は勇者として召喚されてから毎晩夢に現れる貴様を教育せよと私に命じたのだ。」「私言ってないよ!?」


「え、あいつ魔王滅んだとか言ってなかったか?」「魔王いるの?」「あいつ嘘ついてたの?」


ざわざわと神々に動揺が走り、汗だくになる女神に視線が注がれる。


「だって・・・」


「だって仕方ないじゃん!!魔王が突然消えるし!!

可愛い勇者が突然魔王になってるからそりゃ隠すでしょ!!

超可愛いから勇者が終わったら天界に呼んで親友と一緒に暮らそうとか考えてたし!!

 毎晩寂しくないか心配で会いに行ってたのに!!もうお話しできないの〜!?駄目!?

人と話すのが恥ずかしいから無理矢理テンション上げて逆に喋りまくろうとしたら変な感じになって毎回収拾つかなくなって悪い!?」「なげ〜なおい!!」


「あ“ぁぁぁ〜みんなそうやって私をいじめるんだぁぁぁ」

 

泣き叫ぶ女神に魔王が駆け寄る


「女神様・・・違います。私はあなたとちゃんとお話ししたいと思っていますし親友だと思っていますよ。」

「・・・魔王?ほんとに親友になってくれるの?」


「はい!!女神様。」


「やったぁぁぁぁよろしくねネノラ!!」

 

「いやいや!!この騒音女神!!魔王倒す必要ないなら俺を日本に還せよ!!」

 俺に続いて神たちが声を上げる


「魔王どうすんだ!!」「職務放棄だ!!」「責任とれや!!」


「うるさいうるさいうるさい!!いい話で終わろうと思ってたのに!!なんなの!?このツッコミ地味男!!何をすればいいの?消えた初代魔王を探せばいいの?それとも女神やめればいいの!?あ〜もう勝手にしなさいよ!!」


 その場が収拾がつかないくらいの大騒ぎになったところで空から声が降ってきた。


「創造神からお知らせ 

 女神クラノーチカはこの瞬間から女神の権限停止、地上で初代魔王を捜索せよ。

 尚、二代目については不問とする。

初代を見つけるまで帰ってくるな。・・・・・・・・・・・・・・・・・

                                以上。」


「」


「ナナナなっ、何よ何よ何よぉぉっぉぉ!!」


ー この一件は全て女神が責任をとって終わりとなりました。めでたし。ー


「ってなるかぁぁぁ!!どうすんのよ!?えぇ私に死ねと!?いやよいやよ。

エエェェ〜ン。

そうよちょうどいい召使いがいたじゃない!!ミネオ特別に私の世話をすることを任命するわ。」


「いや、いいです。

あと女神様なんか存在感が薄いので何かしら要素を足した方がいいのでは?」


「うるさいわね!!

生まれつき頑張って自分の個性を探している過程なんだから!!

人間でいう思春期なの!!」


「そうだんたんですか〜女神様って思春期だったんですか〜。」


「魔王様、違いますよああいう人は厨二病の痛い奴とお呼びくださいませ。またはストーカー騒音駄目女神でもよろしいかと・・・」


 メイドさんの一言が突き刺さり更に涙目になる女神、ちなみにメイドさんは天界へ繋がる穴を開けて縛った他の神を音速の速さで投げ入れていく。


「あと女神様に申し伝えます。私は対貴方様用アンドロイド【機動メイド】でございます。魔王様が接近をお許しになった場合のみ手出ししませんがそれ以外の時は抹殺いたします。」


「チョー!!怖いこのメイド!!」


 魔王様がぽんっと手を叩いてまとめた。


「じゃあ。女神様のお世話はミネオさん達にお願いいたします。気が向いた時にお顔をお見せくださいね女神様。」


 ミネオのパーティーに思春期女神が加わった。



ーその後の幹部会議


「あのメイドさんめっちゃよくね!!」

「俺の理想のメイドさんもあんな感じ!!ゆるふわ魔王様に癒された後のドSメイド様に罵倒されたい。」

「サウナの後の水風呂的な。」

「ミノスはもうご褒美もらって羨ましい〜」


 この会議はその後結構白熱した。


次回  女神一行の次の行先は運次第!! 今女神が棒を投げた!!

    棒が指したのは南南東      さあ女神よ進むのだ!!

    次回 やっと商売始める?

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