第2話
レイブンは騎士見習いとは思えない速度で迫ってきた。炎の四大貴族は攻めの戦いを行う。並の騎士であれば、その猛攻に押され防戦一方。相手の体が縮こまった瞬間に強力な横なぎの攻撃。防御した剣ごと敵を吹っ飛ばす。荒々しい戦いを行うのがレイブンといった騎士だ。
しかし、神様転生を行い、誰にも負けぬ剣と魔法の才能を貰った私の敵ではない。猛攻は足のステップを使い一定の間隔を保ち防ぐ。相手が踏み込んできたら、攻撃を剣で内側に流す。懐に入ったら、敵の勢いを使って体当たりを行ったり、敵の手首を掴み引っ張る。それを繰り返し、体力を削るのだ。剣で仕留めることは容易だが、すぐに仕留めてしまっては観客に申し訳ない。それに自分の力をアピールすることは王剣に推薦されるために重要なことである。
「アルス、随分俺を舐めてるな」
攻撃を当てられないレイブンがつぶやいた。
「それは実力差ってやつだよ」
アルスは当然のことを伝える。
「アルス、お前はわかってないよ。王国騎士の誇りを、王剣の魅力を、炎のレイブンを何もわかってない。そのまま続ければ良いさ」
レイブンの目は自信に満ちていた。僕はそれから何度も同じことを繰り返し体力を奪う。次第にレイブンは立つことも辛そうになっていった。
「もう、やめればいいのに」
全く諦める気のないレイブンを僕は挑発する。レイブンは自分の体を剣で支えながらもコロッセオに響き渡る声で叫んだ。
「諦めないって言っただろう!剣を抜いて俺を倒せよ!じゃないと俺は倒れない!」
レイブンの覚悟は死ぬことも厭わないように見えた。きっとこいつは降参しないんだろうな。アルスはそう思った。すると観客の一部から声援が飛ぶ。
「レイブン負けるな」「最強の騎士はアルスでも、王国騎士の頂点はお前みたい男だぞ」「お前が買ったら17倍だぞ、俺は穴狙いだ」レイブンの何度も立ち上がる姿がコロッセオの観客に火をつける。
「アルスに賭けてたけど、もうレイブンを応援するぜ、俺たちは」「王国騎士はこんな奴じゃないと務まらないよな」「レイブン絶対に勝てよ」
アルスはコロッセオのこの雰囲気を長引かせるのは危険だと感じた。確かにレイブンはアルスには絶対に勝てない。しかし。
「剣を抜くよ。レイブン。さよならだ」
アルスはレイブンを沈めるために剣を抜く。レイブンはより一層死ぬ覚悟強めたように見えた。ゆっくりとアルスはレイブンに向かって歩き、剣を振り上げた。レイブンは最期の力を振り絞って、魔力をすべて防御に回した。アルスはその剣を振り下ろす。
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