チートなのに勝てない騎士。

@aratanico

第1話


「学園最強の騎士よ。俺に勝ってみろ」

炎の四大貴族である、レイブンが挑んできた。


‐‐‐‐‐‐


 僕は今、騎士昇格試験の準決勝に挑んでいる。簡単に言おう。僕は神様転生を経験して、この世界に生まれ落ちた。神様は剣と魔法の世界に転生すると教えてくれたので、誰にも負けない剣と魔法の才能を貰うことにした。なので僕は負けたことがない。最強である。剣も魔法も僕に並び立つ者などいない。僕は両刃の騎士の剣を持って、コロッセオに向かった。


 コロッセオは騎士見習いや国民で埋め尽くされている。それはこの戦いが学園最強の騎士を決める戦いだからである。この戦いで最強の騎士になった人間は将来を約束される。王剣への参加も夢ではない。


 王剣というのは王国騎士の憧れであり、優れた騎士のみが所属を許される王の懐騎士団である。多くの騎士見習いはこの王剣を目指して騎士学校に入学する。王国の象徴である青い騎士服を身に着け、王国周辺で起きる普通の騎士が対処できない問題を優先的に解決し、解決した後は王国の正門より凱旋を行う。この凱旋を見て、子どもたちは王剣の勇士を目に刻み、そして騎士学校に入学するのである。転生者の僕ですら、その凱旋には少しの感動があった。


しかし、僕が騎士を目指す目的は憧れではなく、金である。毎年騎士学校には60~70人ほどが入学する。途中、退学する人も少なくはない。無事、卒業出来たとしても強くもない底辺騎士になれば地方へ左遷もあり得る。だが、王剣までいかずとも王国騎士になれば職の保証はされる。公務員みたいなものだ。僕はその安定が欲しくて1年前に最強の騎士になったのだ。今年、優勝すれば二年連続で最強の騎士の称号が手に入る。安定した生活までもう少しなのだ。レイブンよ、お前は養分になってもらうぞ。


‐‐‐‐


コロッセオは熱気に包まれている。観客は今年の最強の騎士は誰になるかと予想をしている。公には言わないが賭けをしている観客もいるので必死の形相でこちらをにらんでいる客も少なくない。


「今年も最強の騎士はアルスで決まりだな」「いや。レイブン様も負けてない」「一年前の戦いは一方的で手も足も出なかっただろ、レイブン様は」「今年は勝つかもしれないだろ」「そんな訳あるか」


まぁ、僕のほうがオッズは低いみたいだけどね。アルスはゆっくりと中央のステージに向かった。すると前には赤髪釣り目の意思の強そうな男が立っていた。僕は気負うことなく、男に声をかける。


「やぁ、レイブン。いい天気だね」

それに赤髪釣り目のレイブンは不機嫌そうに答える。


「アルス、お前余裕だな」


「去年も勝ってるからね、気を負うことはないよ」

レイブンは諦めたような溜息を吐く。


「はー、お前は金のために王剣を目指しているんだもんな」


「そうだね」

レイブンはまた諦めたように溜息を吐き。目を閉じた。数秒。目を開いた時にはレイブンは去年と同じ本気の目に変わっていた。意思の強そうな鋭い目を。何かを変えたい強い意志を隠すことなくぶつけてきた。


「去年はお前の強さを見誤った。勝てると思ってたんだ。だけど全く歯が立たずにボコボコに負けた。悔しい想いはないよ。お前が最強の騎士で間違いない。だけどな、お前は王国の騎士にふさわしくないよ」


「そんなこと知ってるよ」

レイブンは被せるように僕に言い放つ。


「なら、辞退しろよ。ふさわしくないのに、なんで王国の騎士になろうとするんだ。最強だからか。才能が誰よりもあるからか。俺はお前の態度が気に食わない。お前の強さなら騎士じゃなくても稼げるのに、わざわざ俺たちを馬鹿にして、それで騎士になろうとしているんだろ」

レイブンは全身に魔力を滾らせてた。


「学園最強の騎士よ。俺に勝ってみろ」

炎の四大貴族である、レイブンが挑んできた。



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