第14話


 八月二十五日。水曜日。


 受賞が発表してから、五日立っている。


 メールで担当との連絡をして出版社では編集担当がついている。


 今回の受賞作品は、ネット上でフリータ作家や無職作家だと呼ばれている。


 タイトルから判断して異世界物が受賞している過去の作品と違って、今回はすべて無職かバイトしているフリーターが主人公である。


これからは無職シリーズという新たなジャンルが産まれるのかもしれない。


そして、今日が授賞式の当日である。


蒼には僕があの本の作者だと感ず枯れないようにごまかしたので、多分わからないと思う。


あの小説を見てしまったら、この家に住むことができなくなるかもしれない。


昼に授賞式があるので、朝ごはんは蒼と家で一緒に食べてた。


蒼が会社に向かってから、授賞式に行く準備をした。


この前フレンチを食べるときに買った黒のスーツを着て、髪とひげを整いて家を出た。


「行ってきます。」


家から徒歩五分の駅まで歩き電車に乗る。


授賞式は出版社の近くにあるホテルで行われるが、担当さんからのメールで出版社で今後の打ち合わせ等をすることになっている。


電車で一本乗れば、つくことができるのであっというまに到着した。


朝の時間帯なので、たくさんのサラリーマンが乗車していた。


会社の通勤ラッシュ真っ最中の時間帯、しかもそこは新宿の駅だったので、電車から

出ることも困難だった。


駅から降りるときのエスカレーターは一段に一人と並んでいる。


遅刻しそうな人は、右側を早歩きで降りている。


久しぶりに見る新宿の光景は変わっていた。


新宿の南口にある改札機から外に出る。


たくさんの高層ビルが建っていて、そこから片手にスマホのマップを見ながら編集部へと向かった。


新宿は、建物が多いのでどれが出版社のビルが判断できない。


マップに住所を検索するとそこまでの行き先に線が出てくる。そこに辿っていくとたどり着くことができる。


大通りに沿って歩いて、駅から徒歩五分で着いた。


ここが出版社だと縦門尾の外見で分かった。


入る前の扉の前に見える所に文字が書いてある。


「新宿HOBBYビル」


会社名がそのまま乗っている。


HJ文庫は2006年から創刊したが、今では有名なライトノベルが大量に出ている。受賞作を研究していた時もアニメ化作品されている作家もいた。


面白いと思いながら見ていた異世界物もここのレーベルのものがほとんど。


こんなところで出版できるなんて夢のようだった。


「よし、入るか。」


勇気を振り絞り中に入った。


編集部の外見は、黒のビルで五階建て。三回のほうの窓が飛び出ていて不思議な設計で独特な感じである。


自動ドアをあけ、ロビーに入る。


そこには、受付の人がいたので担当の名前を教えた。


すると、電話をかけて三階の編集部まで、直接行くようになった。

エレベーターに乗ると三階まで上った。


扉があくまで緊張をしている。手を心臓に当てて深呼吸をする。


ウィーン。


目の前にはたくさんの本やポスターなどが散らかっている。


想像通りの編集部があった。原稿をチェックしている人や田派をかけて作家と打ち合わせしたり。


「ここだよ。リク君だよね。」


目の前にいたのは、僕と大して年が変わらない編集者だった。


「はい、そうです。」


僕を編集部の端っこにあるミーティングルームに連れて行った。


「コーヒー飲める?」


「飲めますけど…。」


担当は奥のほうにあるコーヒーメーカーで作りだした。


編集部にはその匂いが香っている。昔のイメージだとたばこを室内で吸っていて、匂いがあると思ったが、前にたばこの日で火事が起こった出版社があるので今では、外で吸うのが常識になっている。


コーヒーを机に置いて、ポケットから名刺を取り出した。


「水瀬あかりと申します。これが名刺です。」


名刺にはメールアドレスと電話番号があるので連絡先をスマホの中に登録した。


それからは、今後の活動や契約内容の確認などをした。


本の印税は本の定価から何パーセントがもらえるらしい。あとは、月間の雑誌などで掲載料と年間契約料。


詳しく税金の話をしたが、それはブログで稼いだ時に蒼から税理士を紹介されたので


それについては問題がない。


そこから、作品について語り始めた。


受賞したばっかだけど、アニメ化の話が来ているらしいので今後の展開をどうやって延長するのかを話した。


このストーリーは、蒼と僕が夏祭りでキスするのがラストになっている。


応募の時の作品は、これでストーリーが終わっている。


アニメ化するには、今のままでは短すぎる。なので、新たに文章を書くことでアニメ化の検討がされるらしい。


僕も書籍だけではなく、アニメにしてほしいと考えているので、続編を考えることにした。


あれでハッピーエンドになっているので、そのあとのストーリは考えていなかった。


僕の夢をこの小説に書いる。


それは、蒼と同居から同棲に変えることが夢である。


それが目標だったので、そのあとのアフターストーリは、想像がでてきなかった。


「それは、今後に考えておきましょう。今日は、授賞式を楽しんでください。」


悩んでいる姿を見て、担当はフォローしてくれた。


「わかりました。」


そう言って、小説大賞の表彰上へと向かう。


近くにあるホテルを貸し切っているらしい。そこには、編集部の偉い方やスポンサー

もいるので挨拶もかねてるそうだ。


タクシーに乗車して、ホテルまで行く。


担当の人は、僕と同じ年だった。


 静かに二人で乗っているので、場を保つために話題を振った。


 「大学はどこ出身で?」


 こんな状況で会話をすることはコミュ障の僕には少なかった。何を話せばよいかわからないので、万人向けの大学を聞いた。


 担当が話した大学は僕と同じ大学だった。


 「水瀬さんと同じ大学だったんですね。」


 同じ大学で驚いた。


 「あかりでいいですよ。」


 あかりは、受験勉強に必死な学生で僕と同じだった。


 大学の授業でもたまに一緒の授業を受けていたこともあったらしい。


 僕は、彼のことには気いていなかった。


 「リクを取り戻さないと…。」


 小声で担当さんが何か喋っていた。


 「なに?」


 「何でもない。」


 そう話していくうちに授賞式のホテルに着いた。


 タクシー代は会社の経費なので、担当が払った。


 「ありがとうございました。」


 タクシーから降りるとそこは豪華なホテルだった。


 スーツを着ている担当さんが大勢いる。


 その中には、テレビで見たことある声優さんまでいた。


 多分アニメ関連であいさつに来たのかもしれない。


 「お待ちしてた。リクさん。」


 受賞者はもうとっくについている。ラストの僕が入ってきたことによって授賞式は始まった。


 「では、2021年小説大賞の授賞式が始まります。」


 マイクを持った司会者が授賞式を始める。


 表彰台の前にはたくさんの記者がいる。そこに今から立つのは、陰キャの僕には少し苦痛だった。


 でも、最優秀賞をくれたので、堂々としないとほかの作家さんに迷惑がかかる。


 深呼吸をして名前を呼ばれるまで待つ。


 「今回の受賞作は、すべてが無職物です。」


 司会の人は、一人で数分話していた。なぜかと思ったら、表彰する人がまだ来てなかったらしい。


 なんで気づかないのかと、この場にいる誰しもがツッコミをしている。


 受賞者は今回の賞に出資をしてくれた社長らしい。


 窓の外のほうに見覚えがある車が来た。その車は国産車の黒色である。


 中にいる人が降りると驚いた。そこにいたのは、蒼だった。


 「蒼⁉」


 司会は窓のほうに車が到着したのが分かったので、授賞式を始めた。


 「では、受賞した四名表彰台の前に立ってください。」


 一列に並んでいるのを順番に表彰台の前に立った。


 まさかと思ったのだが、本当に蒼が受賞をすることになった。


 表彰を持って一人一人手渡しで配っている。


 そして、僕の番になった。


 「では、最優秀賞の作品・仕事を辞めたら、幼馴染と同棲⁉の作者リクに賞状と現金三百万を受理します。」


 大きな賞状と三百マンと書いてあるプレートを渡した。


「あの…。」


蒼に受賞死すなんて思いもしなかった。


「大賞おめでとう。」


 というと一列に並んで記者の撮影会が始まった。


 あとの時間は記者のインタビューや撮影会の時間となった。


 そこでは、蒼がいるので変な回答をしないように頑張った。


 「作者本人の出来事なんですか?」


 気まずい質問をされた。本当の話だけど、蒼が麺お前にいるのでどう回答するのか考えた。


 「ほとんどが体験談です。」


 ある程度ごまかした言い方でフォローをする。


 この後も、色んな質問が来たがそれらを答えていった。


 「では、授賞式を終わります。」


 司会が終わらせると、あとは担当が色んな責任者たちのあいさつに行った。


 編集長にもしたり、アニメ関係のプロデューサーとも会話をした。


 名刺をもらうこともできて、アニメ化の可能性を実感した。


 「つかれたー。」


 この昼だけで、もう疲れ果てていた。


 椅子に座ると、蒼もこちらに来て話をした。


 「小説に応募してたんだ。」


 蒼には受賞していたことを話していなかった。


 「いつから気付いていたの?」


 今回の受賞式に出資をしたのは、テレビで結果発表の日に決まったらしい。なので、いつから気付いたのか聞いた。


 「ペンネームがそのままローマ字表記だから普通にわかるよ。」


 蒼の会社の真似をして、そのままローマ字表記をしてのがばれた理由らしい。


 「そうだったんだ。」


 内容は多分蒼に見られているかもしれないと考えたら、これからの同居生活は終わりになってしまうこともある。


 けど、授賞式の雰囲気でそのことはどうでもよくなってきた。


 どうせ、小説の中のストーリーと割り切り男性の蒼と同居していくことに決めた。


 もし、蒼が君が悪くなって家から出てほしいと思ったらその時はその時。


 「今日はこのパーティーを楽しむか。」


 ホテルの中にある厨房で作られた料理がテーブルに並んでいる。


 それらを今日の昼ごはんにした。


 スマホで写真を撮って自分のブログに書くことにした。


これから、小説家として生きることになるが、料理のブログを書くことは今となっては趣味になっているのでこれから持つ続けていく。


今日この日は、小説の賞に本当に受賞できたことを洗てめて実感できた。

今日は、よく眠れそうだ。

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