4 クーデーター

「………………」


 党会館内を歩いていると、周囲から注がれる侮蔑するかのような冷たい視線……レフもと・・第二書記を取り逃がしたことで、今度はレッドが自らの立場を危うくしていた。


 レフの逃亡協力への関与が疑われ、軍事法廷では証拠不十分でなんとか有罪は免れたものの、作戦失敗の責を問われ、減俸と厳重注意の処分も食らっている。


 また、一度はレフを庇ったことでヨシフ第一書記の覚えも芳しくはなく、いつ自分に粛清命令が下されてもおかしくはない状況なのだ。


「――レッド、ちょっといいか?」


 そんな折、彼は小声でブルーに呼び止められ、誰も来ない物置小屋へと連れていかれた。


「ここなら盗聴の心配もないな……落ち着いて聞いてくれ。今朝、第一書記からおまえを粛清するようにと命令された」


「……!?」


 周囲に気を配りながらブルーの口にしたことは、驚くべき告白だった。


「でも、俺達はそれに従う気はない。みんな、ヨシフの独裁には嫌気がさしてるんだよ!」


 だが、さらに彼は驚くべきことを口にし始める。


「じつは、反ヨシフ派はもうかなりの数が集まってるんだ。レッド、スタリンジャーのリーダーであるおまえには人望がある。俺達と一緒に立ってくれ! ヨシフを打倒し、俺達で真の革命を成し遂げるんだ!」


「ブルー。おまえ……」


 それは、予想だにしない話であったが、このままでは自分が粛清されるのは明らかである……それに、現体制の行っていることは革命の理想と大きくかけ離れている……。


「……わかった。よし、やろう。俺達スタリンジャーこそが、真の革命闘士であることを見せてやるんだ!」


「よし! それでこそ俺達のリーダーだ! ――」




 そして、その翌日……。


「――ま、待て、話せばわかる…うぐあぁぁぁーっ…!」


 五丁のカラシニコフによる必殺技〝ストライキー・キャノン〟を食らい、ヨシフ第一書記が影もなく消し飛ばされる……。


 スタリンジャーを中核とする反乱軍が逆にヨシフとその一派を粛清し、新たにレッド改め本名ゲオルギー第一書記をトップとする新体制が発足した。


「ついにここまで来たなレッド…いや、ゲオルギー。さあ、俺達の理想とする革命を俺達の手で成し遂げるんだ!」


 第二書記となったブルー改め本名ラヴレンチーが、希望に満ちた瞳を輝かせてを彼を激励する。


「あ、ああ。頼りにしているぞ、ラヴレンチー……」


 だが、口ではそう言いながらも、彼は心の中でこの党ナンバー2に対して疑念を抱くようになっていた……ヨシフにしたのと同じように、今度はこの男が自分を粛清するのではないかと。


 やられる前に、こちらが先にやらねばならない……最高権力者となった彼は、冷酷にもそんな覚悟を密かに固める。


 そうして、彼らの革命はこれからも続いてゆく……。


                    (革命戦隊スタリンジャー 了)

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革命戦隊スタリンジャー 平中なごん @HiranakaNagon

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