4.【激動の始まり2】
彼女が仕事働いてから一週間ほど経ち、一人前の添乗員になった。
初日は機械や列車を見たことがなかったらしくひどく驚いていた。
ランプやタイプライターなども使ったことも無かったらしいが、今や完璧に使いこなしている。
「新入りは才能があるにゃ。あのスピーディーな身のこなしは一級の添乗員にゃ。」
「へへ~ん!!もっと褒めてもいいんっすよ♪」
僕とナトレータさんと常連客の獣人『コルカ』さんの三人で談笑していた。
「でしょでしょ♪だってミフネさんに手取り足取り教えてもらった成果だから。えへへへ。」
「浮気にゃ!?ミャーのことを差し置いてそんなけしからん子と一緒にゃにをしていたにゃ!!」
「いやいや何もしてないし、コルカさんともそんな関係じゃ無いでしょ!!」
僕はふと、周囲を見渡す。
常連のコルカさんと寝ているドワーフのおじいさんの二人と他の乗客が二人だけ。他の車両には乗客はいない。
「それにしても今日は乗客が少ないね。」
「最近ここら辺で行方不明事件が起きているからにゃ。宿で泊まっていた観光客や遊んでいた子供が突如消えてしまう事件が頻発してるのにゃ。それも『霧江』で・・・。」
「へぇ~そんなことが。」
「くれぐれも気を付けるのにゃ。おミャーは女の子と言われてもわからにゃい顔をしてるからにゃ。」
「確かに!!先輩女顔。」
「そんなっ!?これでも鍛えているしちょっと男らしくなったかもと思ってたのに・・・・」
「先輩は見た目はちょっと可愛いですけど私を街の悪漢から助けてくれたっすよ!!
こんな感じでスパンッっと、カッコよかったんですから。」
「おミャーなかなか罪作りな男にゃ。ミャーが護衛に雇うかにゃあ。」
「そんなに強くないよ。ただの護身術だし。」
『霧江』駅のホームへ着き他の社員と交代する。
会社へ入り休息をとりながら『霧江』の街並みを見下ろす。
この一週間くらいは列車だけではなく心なしか『霧江』を訪れる人の数が減っていた。
背後からナトレータさんと麗奈さんがやってきた。
「春二くん、どうしたの?」
「いや・・・今日も乗客がほとんどいなくてちょっと寂しいな~と思いまして。
最近行方不明事件が起きていると聞いたのでそれが関係しているんでしょうか。」
「え!!そうなの・・・。物騒だわ、ナトレータさんも気をつけないと。」
「あ・・・はい。」
ナトレータはさんは少し落ち着かないように返事を返す。
たまに周囲を警戒するような素振りを見せるのだが・・・。
ブレーキ音が響き、会社の前に三台の車が止まる。
中から衛兵とスーツの男、太った禿げた男が出てきた。一人の衛兵が会社の扉を叩く。
「『霧江大陸鉄道会社』の諸君、
『ウォーレン』連合王国の東海岸地区を統治されている『グラー・マクダラム』伯爵の命によりこれからこの場を調査する!!」
扉が開かれて衛兵たちが入ってくる。社内は騒然となり、課長が対応する。
「なんですかな!!ここはお客様の大切なお荷物をお預かりする場であります。どうかお考え直しを。」
太った男が集まった社員を見渡す。ナトレータが震えながら僕の後ろに隠れる。
「フン、揃いも揃ってこちらを見おって。こちらを見るな愚民どもが、まあ良い・・・帰るぞ。」
その男が会社を出るとその後に続いて衛兵たちも出ていく。
「なんだったんだ?ナトレータさん・・・大丈夫?」
僕の後ろに隠れていたナトレータさんに声をかける。僕の腕を掴んだまま青い顔をしている。
「あ・・・だ、大丈夫っすよ。ちょっと立ちくらみが。ははは。」
ーこの一件から世界を大きく揺るがす大事件が始まった。ー
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