第二章【中央都市モーレタリア 学園暗躍編】

【手紙】

拝啓


 お父様お元気ですか?最近お顔が見れないので少し心配しております。

こちらはもうすぐ梅雨が明けて流星祭の準備をし始める頃です、お父様が戻られたらぜひ私の出店にいらしてください。

 

 さて、さっきまでのお嬢様みたいな書き出しは終わり!!

親友のシアが「親しき中にも礼儀あり、お父様にも手紙のマナーは大切」って言ってたから最初の部分だけお嬢様っぽくしてみました。

 学園に入学して四度目の夏が来ます。学園の授業もちゃんと受けて今日もシアと一緒に勉強会をするんだ。

でも、執事さんのケーキがおいしくて途中から勉強そっちのけでお茶会になるのだけど。

お父様みたいに太らないようにちゃんと毎日運動してるのよ!!

 

 とにかく私は元気です。


 早く卒業して父様みたいに立派な外交官になります。

 だから早く仕事を終わらせて帰って来てください。

あと、私が誕生日にあげたハンカチちゃんと使ってよね!!

ここの雑貨屋さんで見つけた青いハンカチ、絶対父様にピッタリだから!!

                                       可愛いあなたの娘リリアより


「よし!!できた~。」

「リリア。誰への手紙?」


 大講堂の中央の席、講義を受けながら隠れて父宛の手紙を書いていると隣から親友のシアが小さな声で聞いてきた。私も悪戯でもしているかのように小さな声で話す。


「お父様宛の手紙よ。ここ二ヶ月ほど帰ってこないの。」

「あら・・・お忙しいのね。」


 大講堂は扇状になっていて、座席は段状になっている。もちろん講師から生徒の顔が見えるようにだ。


「リリア・クランス君、君はこの問題をどう捉える。」


「え・・・は、はい!!」


 その場に咄嗟に立ち上がる、しかし何の話をしているかわからない。隣のシアがノートに何の話をしていたのかこっそり書いて教えてくれる。


『西国諸国の三列強位置関係と問題』


「はい!!まずは三列強の位置関係を。

『ジエルラド帝国』軍事力と統制の取れた支配体制により、周辺諸国を侵攻し領土を拡大して成長を遂げた国家で、

大陸の位置関係としては『ウィンダルーシア王国』とはいくつかの小国を挟んで東の位置であり、

『サルバン大帝国』からは距離がだいぶ離れた北東に位置します。

 この列強の三国は百年前から対立状態にあるため西方の他の国々はこの三国に必ずと言っていいほど巻き込まれています。」


「ほう。では問題は?」


「問題は、この三国のみの対立ではなく。周辺諸国が三列強と同盟、協商を組んでいることです。

南方では各列強が後ろ楯になって紛争が起きています。」


「ほう。まあそんなところだろう。シア様に感謝しなさい、クランス君。」


 予鈴がなり講義は終わった。大講堂から出るとシアに抱きついた。


「シア~ありがとう~!!」


「お役に立てて嬉しいですわ。ほら早く手紙を出しにいきましょう。

ところでリリアのお父様は今どちらに?」


「確か大陸の東の『ウォーレン連合王国』へ行くと言ってたような。」


 手紙を出し終えた後日。

 シアから『ウォーレン内乱事件』の話を聞いた。突然蜂起した革命軍が統治軍や貴族の屋敷を襲撃、巻き込まれた民間人も多いらしくすぐに本国へ問い合わせた方が良いとのことだ。

 

 結果、父様は『消息不明』二ヶ月前からどこへ行ったかもわからないそうだ。


 私はペンダントに入っている両親達との写真を見ながら祈る。

きっと無事なはず、今頃どこかのカフェで汗を拭きながらパンケーキでも食べているだろう・・・・。


 手すりから下を覗く、雲の切間からは切り立った岩肌と緑の森林がかすかに見える。

風の音を聞きながら少女は祈り続けた。






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