密談2
波が船体に押し寄せて音を立てる、辺りは暗闇と海を照らす灯台の光のみが見える。
回転しながら海を照らす灯台の光を見つめながら葉巻を吸う。
月照帝国の港町から少し離れた小島、住むには小さく岩場というよりは大きい。
船のすぐ横に佇んで遠くの灯台の光を眺める。
彼らが指定したこの場所で待ち続ける。
しばらくすると明かりがこちらへと近づいてくる。
ある程度のところまで近づいてくるとチカチカと明かりが点滅する。
「皇女様、返答はいかに。」
「司教、『許可する』と伝えよ。」
司教と呼ばれた男がボートの照明を操作する。
吸っていた葉巻を海に投げ捨てて到着する船の方へと近づく。
遠くの方でまた光が点滅すると、一隻のボートが我々の船の隣に停まる。
ボートからランタンを持った二人の男が上陸する。
一人は白髪が混じった中年、もう一人は血の通っていないほど白い顔の男。
「お初にお目にかかります。
いやぁ~すみませんね~。こんなところにお呼びしまして。
初めまして、私が『藤巻賢ニ郎』と部下の一人あ~『
「狢・・・なるほど化けるのか?」
「ええ今も貴方を化しておりますよ・・・ほら。」
狢は首あたりの皮を上に引っ張ると目以外に皺が入る、首の下には違った色の皮膚が見える。
目の部分が上に押し上げられて、ポッカリと真っ暗な穴が空いたようにみえる。
顔は別人の皮を被っているようだ。
「皇女殿下まずはあなたの部下をお返しいたしましょう。
貴方方の力と医術の術を持って蘇生に成功いたしました。
ただ・・・まぁ少し以前と変わっていますが。」
男達の背後から黒くて深いフードを被った男が現れる、首元には我が教団の証が下がっている。
以前に比べて一回り大きくなっている。
「世話をかけた。こちらも完成したものの一部と副産品を。」
司教が狢に箱を渡す。
「して、状況はどうなったのだ?」
「はい、映画の普及と同時進行で例のものを流通させています。
財閥が協力してくれています、資金もだんだん集まってきましたし我らに協力するものも増えています。
もちろん各国に散った貴方方の同志へも映画にメッセージを残したのでそのうち『ウォーレン』に集まります。
我々の制作した『プロパガンダ』は資金集めにもなってくれている。
今回の計画の隠れ蓑にもなってくれた!!一石二鳥というやつですよ!!」
「それはそうだろう。私の『フレーシス』という名前を利用したのだから。」
あの撮影旅は元々私が部下へあるものを手渡すために計画したものだった。
だがあの男の発案で、映画を『資金集め』と大陸に散った同志と同胞への『プロパガンダ』の役割を担わせた。
途中にアクシデントはあったが、成果は十分だ。
ふと列車にいた青年とハーフエルフの顔が浮かぶ。
「にしてもあの青年『死神』だったか。面白い・・・気に入った、妾にくれぬか?。」
「お気に召したのは何より、しかし・・・あれは私達のものです。」
そこで藤巻は顎のひげを触りながら話し出す。
「次の計画の話に入ろうと思ったのですが・・・あ~忘れていたな。
まずいな、あいつに知られると厄介・・・だな。」
男が照明の光に映った姿はなんとも不気味だ、魔族の私でさえも少しだけ恐怖を感じる。
「次の計画とは?」
「『ウォーレンを掌握します。』とはいえまだ表では支配しません、裏からこの地の統治軍を掌握します。
そして各地で火種を撒いて混乱を引き起こして我々が支援した者に実権を握らせるとしましょう。
ああ、貴方ではない者ですよ、貴方の出番はまだ後です。」
「妾は何をすれば良い?」
「お好きにお過ごしください、しばらくは出番が無いはずです。」
葉巻を取り出して司教の前に出す。
司教はシガーシザーで先端を切り、火をつける。
「それで・・・今までにだいぶ世話になったが何が望みだ?」
目の前の男は分かりやすくとぼける。
「あ!!いやいや、恩を売りたいわけじゃないんですがね!!
・・・・そうですな~情報をいただきたいな~、なんて・・・。」
「内容による。」
「実は・・・我が国に忍び込んだ奴らがこの大陸で何かを見つけたみたいなんですよね~。
ちょっとそれを教えていただきたいと・・・特に所在を。」
煙を吐く。
「なんだ・・・そっちか。まぁ教えてやろう、ただあれだけだと使えんぞ。」
私は煙をもう一度魔力を込めて吐き出す。
この大陸の地図が鮮明に浮かび上がる。
「ここだ、青原の『旧迷宮』ここの最下層だ。我が父が封印した『凶弾』がある。」
「なるほど・・・。あと、先程別の情報もあるような口ぶりでしたが。」
「それは教えん。妾の楽しみだ。」
狢がそれを聞いて大笑いを起こす。
「はははははははっ!!貴方すっごく分かってる!!じゃあ俺も秘密にしておこう!!」
「狢君まで秘密にするのかい!!も~、君の顔の皮剥いじゃうよ!!」
「残念今日は三枚つけてます。」
目の前で笑う不気味な男達を見ながら葉巻を吸う、今後起きる物語への期待と葉巻の味を味わいながら。
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