21.【夢から連れ出して3】
「その後は気を失って覚えていないの。
でもあの時君が助けてくれたから私は生きてる、けれど君に大きな傷を作ってしまった。
・・・本当にごめんなさい。」
彼女が握る手に先程よりも力が入る。
「いや・・そんな。気にしなくていいですよ麗奈さん。」
僕はその話に違和感を覚えていた。
実は僕が覚えている二年前の記憶と麗奈さんの話が食い違っていたからだ。
二年前、突然入ってきた悪漢に殴られて気がついたら病院で寝てて体がボロボロになっていた。
そして翌日の新聞で事件のことを知ったのだ。
するとそこへ
『フレーシス・マグナレット』、『清水すみれ』『田城小五郎』、『コリー・シャルスレンガー』が来る。
コリーさんの手元には花束が握られている。
田城が僕たちを交互に見て鼻で笑う。
「おっ珍しい白髪エルフの嬢ちゃんと鉄道の兄ちゃんじゃん。
・・・・おっと邪魔したかな?」
麗奈さんは顔を赤くして手を離す。
「いや・・・ちょっといろいろあって。」
「なんだい釣れないな~。」
コリーが笑いながら近づいてくる。
「ハッハッ、女性を泣かせるとは罪な男だねぇ。君・・・ん?」
コリーが肩を触ってくる。
「君細い割にいい筋肉をしている。仕事で身についたものかね?いや違うな・・・格闘技か?
君『月照』の人でしょ。前に教官が『月照』の国民は皆んな格闘技を身につけていると言っていた。
是非戦ってみたい。」
清水さんはオロオロとしている。
「戦うのですか!!それはちょっとダメですよ!!」
フレーシスは少し離れたところで見ていると思えばこちらの方へと近づいてくる。
僕の横に立つと顔を覗き込む。そして僕の頬をなぞる。
「やっぱり面白い。気に入った。」
「あ~あ。お嬢に気に入られちまったなぁ。
あんた明日から毎日町田とお嬢のスカウト攻撃にあうぜ。」
「あはは。ところでその花束はどうしたんですか?ファンの方からとか?」
コリーはニコッと笑うと答える。
「これは私が用意したものです。この地で亡くなった友と恋人へ供えるために。」
コリーは少し歩くと地面に花をおいて祈る。
すみれさんが説明する。
「『ウォーレン革命円隊事件』、『霧江列車襲撃事件』で彼はご友人と恋人を失ったんです。
三人で旅行するつもりで、コリーさんは船を間違えたために少し遅れて『霧江』へ。
着いた時には・・・・。」
「あ~あったな。俺はコリーと『バサナシア』にいたから噂で聞いたぜ。
なんでもイカれた奴らが大暴れしたんだろ。確かボスは捕まって処刑されたんだったな。
魔素だの神だの変な連中が起こした大迷惑な騒ぎだったんだろ。
ん・・・なんかこの映画に似てるよな。なぁお嬢?」
フレーシスはタバコに火をつけて吸うと、田城の顔に吹きかけた。
「この映画はあの事件がモデルになってるのよ、気付かなかったの?」
一同はフレーシスに注目する。
「ゲホッ、はぁ!!何でまたそんなんを・・・」
「理由はたくさんあるわ。
あの事件を風化させないとか、もしもあの時に救いのヒーローでもいれば・・・とか。
後悔やいろんな気持ちが込められてつくられているのよ。
少しはその汚い口調を直しなさい。調子に乗っていると痛い目を見ますわよ。」
一睨みされると田城は走り去っていく。
すみれがフレーシスに尋ねる。
「もしかして・・・あなたがこの映画を作ろうと言い出したんですか?
その・・・事件の被害者のために。」
フレーシスは煙を吐くと微笑んだ。
「私はこの映画を作ろうとは言っていない。私は監督でも社長でもないのよ。私は役者よ。」
「確かに・・・すみません。」
「ハハハ。まぁ、作ろうとは言ってないわ。
町田に映画を撮りたいと言って、監督を探させて、役者を選んだ。
脚本も目を通したわね。」
(いやいやそれって・・・)
「でもあなた達を呼んだのは私じゃないのよ。
他の誰かが必要だと思って呼んだのよ。
役目はきっちり果たしてもらうわ。ふふふ、どう演技するのかしら。」
タバコを携帯灰皿に入れると去って行く。
「僕たちも戻りましょうか。」
「ありがとう。私はもう少し撮影を見てから戻るわ。」
僕は麗奈さんを残して列車の中に入っていく。
私は戻っていく春二くんの背中を見ていた。
そしてさっきまで握っていた手の感触を思い出す。
「やっぱり・・・君じゃない。あの時の君は・・・。」
私は夢の中の彼が抱きしめてくれた手の位置に自分の手を重ねる。
「貴方は・・・誰なの。」
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