7.【龍と獣1】
翌日の午前十時頃、数台の車と十は超える数の馬に乗って統治軍がやって来た。
会社の玄関を取り囲み激しく扉を叩く。
「領主様の命令である!!今すぐにここの扉を開けて赤髪の女を出せ!!」
会社の周りを衛兵達が囲む。
竹田先輩をはじめとした男性社員が出てくると睨み合いになる。
「領主様の命令でもいないもんはいないんですよ!!さっさと帰りな!!」
「貴様!!隠し立てするつもりか、いることはわかっているんだ!!
邪魔をするなら力ずくで突破するぞ!!」
「上等だ!!やってみろ!!」
竹田先輩は兵士の胸ぐらを掴む。
しかし兵士が軍刀を抜き、兵士たちがライフルを構える。
ライフル銃を突きつけられた男性陣が玄関前からどくと兵士たちが会社へと入っていく。
「隊長!!あの女がいません!!」
「な!!そんな馬鹿な。」
ボォォッォォ
会社の裏で黒煙が上がる。
男性陣はニヤニヤと笑いながら兵士たちを見る。
「ここにはそんな女いませんよ。」
そう言うと竹田は煙草に火をつけた。
◆
列車内客室で私は先輩に尋ねる。
列車は走り出して『霧江』からは遠ざかっている。
「先輩よかったんですか?私だけ皆さんに守ってもらって。」
「いいからいいから、君の行方がわからなくなれば諦めるかもしれない。領主が諦めるまでは僕たちが守り抜く。」
先輩が制帽を被り直して客室を出ていく。
「これで本当に良かったのかな・・・」
パリィンッ
部屋のすぐそこで何かが割れる音がする。
「おいおい俺たちが当たりを引いたみたいだなぁ。素人の考えは手に取るようにわかるぜ~なぁ嬢ちゃん。」
『霧江』の通りで絡んできたゴロツキが先輩をひきづって私の前に投げる。
「先輩ッ!!」
床に転がると当たりに血が飛び、私の頬にも先輩の血がかかる。
すぐに先輩を抱きしめる、息はあるが頭から血を流している。
「お前と、邪魔したそこの兄ちゃんはついてきてもらうぜ。散々手間をかけさせてくれたからなぁ。おい縛れ。」
縄で縛られると顔に麻袋をかぶせられる。
そのまま男達に担ぎ上げられて何処かへと連れ去られてしまった。
◆
目が覚めると暗い牢獄の中だった。隣にはナトレータがいる。
「先輩っ。大丈夫ですか!?怪我の具合は?」
「大丈夫。頭を少し切っただけみたいだから。うわっ、血がついてる。」
だけど正直頭がフラフラする。
顔を拭おうにも後ろ手に縛られているからできない。
すると、部屋の奥からコツコツと足音が近付いてくる。
現れたのはいやらしい笑みを浮かべた領主だった。
「ふん小汚いネズミどもが。姑息な手を使ってこのグラーを騙せるとでも?」
階段からグラーと先ほどのごろつき二人組が降りてくる。
「ナトレータ。お前はわしのコレクションだ。だから命だけは見逃してやる。
だがその男にはお前の分の苦痛を味わってもらう。」
領主は懐から箱を取り出して近くの男に手渡す。
「待って!!逃げ出したことは謝るから!!
これからは絶対に逃げ出さないからそれだけはやめてください!!」
「貴様ごときがワシに命令するな!!」
ガァンー
グラーが檻を蹴り、金属音が部屋中に響き渡る。
「貴様ら愚民は我らに支配されていればいい。
我が一族はずっと支配してきた、迷宮に潜る者も持ち帰ってきた財宝も全て我のものだ。
おいあの女を連れて来い、もう一人は・・・やれ。」
檻を開けてゴロツキが入ってくる。
一人はナトレータさんをひきづって領主と一緒に消えていく。
もう一人は箱から注射器を取り出す。
「やめて!!離して!!先輩ッー。」
檻の中には俺ともう一人のゴロツキだけが残っていた。
「僕をどうするつもりか冥土の土産に聞かせてくださいよ。」
「なんだ随分物分かりがいいじゃねえか。泣いたり騒いだりした方が張り合いがあるんだがよ。
まあいいこの注射器でお前の体を変えるのさ。」
男は注射器を取り出して液体を入れる。一歩一歩こちらに近づいてくる。
「それで他国へ売って大金を、他国はそれを生物兵器にすると」
「ああ・・・?テメェ!!何でそれを!?」
男の胴体を蹴る。
男の体が檻に打ちつけられ、手から注射器が転げ落ちる。
関節を外して縄を解くとその注射器を手に取る。
「てってめぇ~。何なんだよ。」
「教えてもいいが、それを聞いたら確実に死ぬことになるぞ。」
男がナイフを取り出して切り掛かってくる。
その手を掴んで注射器を男の胸に突き刺す。
「あっー、ああがああぁぁ」
「証拠消しにくるのも面倒だな、まとめて処分するか。」
牢を出てナトレータを追いかける。
ー数分後ー
「がガガガがあぁあっぁあぁ、グゥゥルルルルルルル」
骨がミシミシと音を立てて全身が膨張していく、肌を黒い毛が埋め尽くし尾が生える。
爪が伸びていき、人間の顔が歪んで形を変える。
口は苦痛に歪み切り、涎がダラダラと垂れる。
男だったものが黒い毛の生えた3M程の猿のような生物へと変貌した。
「グァアッッァァ」
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