白昼夢の後

 白昼夢のようなひと時から、丸一日が経った。手持無沙汰なこの休日、私はクッションを枕にして床に寝そべり、昨日の出来事を反芻していた。

 私はそっと、自らの下腹部を撫でた。今でも自分の中に彼がいるような、そんな気さえしてくる。


 ――ああ、また彼の腕に抱かれたい。


 初めての時は痛い思いをする、という話を聞いていたけれど、そんなことはなかった。薄暗いあの美しい人型機械は、私に体験したことのない忘我悦楽を与えてくれた。


 ――私は、はしたない女になってしまったのだろうか。


 なぜ私の両親が頑なに私から男を遠ざけようとしたのか、今なら分かる。こんなものを若い内に経験してしまえば、きっとそぞろ神に憑かれたかのようになって、取るものも手につかなくなってしまうだろうから。

 ツカサくんは、今日も客を取っているのだろうか。甘い言葉を囁いて、吐息を客に吹きかけているのだろうか。自分は汗をかかないのに、相手の女を汗にまみれさせているのだろうか――想像がさらなる想像を呼び、私の心を茨のように刺してくる。暗渠に沈殿するへどろのように、黒々とした嫉妬心が心の底に溜まっていく。

 けれども――私の悪い想像は不意に止んだ。そもそも、機械の彼が人間を愛するはずなどないのだ。彼の言動も行動も、その全てが商業化されたものでしかない。私に快楽を与えてくれるのは、私の財布から金を出させるためだ。私がどんなに彼を想っても、それは一方通行でしかない。虚しいだけだ。

 そもそも、作り物セクサロイドとの行為は、本当に処女喪失として扱ってよいのだろうか。人が作ったものという点において、セクサロイドは大人のオモチャと呼ばれるようなものと全く変わらない。結局、処女を脱するという私の目的は、こんな方法では果たしようがなかったということになる。

 取り留めもなくあれこれと考えていても――私はツカサくんの影を、頭の中から消し去れなかった。あの切れ長の瞳が、私の体を抱く細腕が、粘性を持って私の脳裏にこびりついてくる。ただ一度、粘膜を擦り合わせただけの相手なのに、どうしてこうも私の心を捉えて離さないのか。

 

 その答えは、いつになっても出せないのだろう。

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執人形 武州人也 @hagachi-hm

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