【 第8話: 再来 】


『ザザァーーーーッ!!』


 雨は勢いを増して、私の小さな体を容赦なく打ちつける。

 もう全身ビショ濡れだ。

 濡れた髪からは、次々と雨が伝って大きな雫となり、顔を濡らしていく。


「抜けない……。助けて……、誰か……。うぅぅ……」


 雨で車椅子のハンドリムが濡れ、その金属部分が滑り易くなり、全く動かせなくなった。


 どれくらい立ち往生していただろう。

 立ち上がることが出来れば、ここから抜けられるのに……。

 でも、あの津波のことを思い出すと、どうしても震えて立つことが出来ない……。


『ゴゴゴゴ……』


「えっ……?」


 すると、どこからともなくまた、あの音がしてきたんだ……。

 何か変なほこりのような匂いも感じる。


『ゴゴゴゴゴゴ……』


(な、何かまた近づいてる……)


 私は、何か危険が近づいていることを感じ取った。

 その時だった!


『ブワァーーッ! ドドドドドドォーーーーッ!!』


 私の背後から、横の川を伝って上流から一気に濁流が押し寄せた。


『ドバァーーーーッ!!』


「きゃーーーーっ!!」


 数日雨が続いていた影響で、水分を含んでいた地盤が限界に達し、鉄砲水を引き起こした。


『ザバァーーーーッ!』


 私は水の勢いで、車椅子から落ち、川の方へと流された。


「きゃーーっ! ぷはっ……」


 私は目をつむったまま、咄嗟に何かを掴む。


『ガシッ!』



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