【 第7話: 雨 】
その後、私は歩くことができないまま、病院を退院した。
家は流されてしまったので、今は仮設住宅で両親と3人で暮らしている。
私の通っていた高校は、津波に呑まれ使えなくなってしまったため、この仮設住宅から別の高校へ通っている。
車椅子を使って……。
「はぁ、はぁ……」
学校の近くには、コンクリートで囲まれた川が流れていて、川の横のあまり整備が行き届いていない細い歩道を通らなければならない。
この道を車椅子で通るのも一苦労だ。
しかも、今日は学校へ遅刻してしまった。
『ポツ、ポツ、ポツポツポツ……』
「あっ、雨だ……」
私は右の手の平を天に向け、空高い雨雲を見つめながら、傘を持って来なかったことを後悔する。
制服が濡れてしまうのは嫌なので、急いで車椅子を漕ぎ、学校へと向かう。
でも……。
『ガコッ!』
「あっ!」
その時、車椅子のタイヤ部分が、丁度アスファルトの欠けた溝のようになった所にはまり込んでしまった。
「えっ? うそっ? う~ん、う~ん……」
タイヤは完全にはまり込み、抜けない。どんなに頑張っても車椅子は前にも後ろにも動かない。
「う~ん、どうしよう……。う~ん……」
すると、雨は益々強まり、雷も鳴り、大雨となってきた……。
『ゴロゴロゴロ……。ビシャーーン!!』
「きゃーーっ!」
凄まじい音と光。
そして、辺りはどんどんと暗くなり、痛いほどのどしゃぶりの雨が止め処なく、天から落ちてくる。
『ザァァーーーーッ!!』
私はこの大雨の中、完全に身動きが取れなくなってしまったんだ……。
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