第3話 新しい生活が精神的にハード

 グレーンで新たな生活が始まった。

 グレーンでは、一日の時間割がある。

 起床時間、朝食の時間、午前の仕事の時間、昼休憩の時間、午後の仕事の時間、夕食の時間、入浴の時間これらが決められている。

 そして、グレーンではみんなに仕事が与えられている。

 

 僕が与えられた仕事は・・・・いっぱいある。

 その全てが、誰でもできる仕事だが。


 なぜ僕がこんな仕事をしないといけないんだ。

 とはじめは思ってたよ。

 だけど、周りを見れば、まあそうなるよね、仕方ないよね、と思ってしまった。


 だって、僕意外みんな超能力使えるもんね!


 一緒にいたら、超能力使えない僕は仕事の邪魔になるもんね!


 みんなの邪魔にならなくて、必要な仕事っていったら掃除や飯づくりくらいしかない。

 この世界は、地球よりはるかに進んだ技術を持っているから、僕の持っている知識など一ミリも役に立たない。そもそも、記憶がないことになってるけど。


 仕事が決まり、僕の一日のスケジュールはこうなった。


 起床。

 朝食。

 午前は全員の衣類の洗濯。

 それが終わったら、厨房に行き昼食の準備。

 昼休憩。

 昼休憩が終わると、昼食の後片づけ。

 午後は船内の掃除。

 それが終わったら、洗濯を取り込みたたむ。

 それが終わったら、また厨房に行き、今度は夕食の準備。

 夕食。

 そして、夕食の片づけと朝食の準備。

 入浴。

 自由時間。

 就寝。


 正直、日本でサラリーマンやってるころの方が楽だった。

 自由時間もセイナに文字を教わる時間以外は、暇ですることがない。

 

 日中は忙しく、夜は退屈。話にはついていけないし、あまり役に立てていないから肩身も狭い。

 僕は、グレーンでそんな日々を送っていた。

 そして、セイナに文字を教わり終わって、いよいよ自由時間が完全に暇になったその日、自分の部屋でごろごろしていたらコンコンと誰かが扉をノックしてきた。

 部屋に入るよう促すと、扉を開けて入ってきたのは、ここの中心人物の一人ミアだった。

 大げさではなく、驚きのあまりベッドから落ちそうになる。

 そもそも、これまで誰も訪れてこなかったのに、初めて訪れてきたのがミアだなんて。

 ミアは僕が初めてここに来た時に、リーダーと一緒にいた人物の一人だ。

 ミアはまっすぐ伸びた綺麗な銀髪に、水色の瞳を持った美人な女の子だ。


「僕に一体何の用かなミア?」

「べつにー。特に用なんてないけどー、きちゃった。」


 かわいい。反則級にかわいい。


 顔がかわいいのに、かわいい声に、かわいい仕草。

 かわいすぎる。

 僕があまりのかわいさにうろたえていると、ミアはこちらにゆっくりと近づいてきた。


「ちょっ、ミアどうしたの。なんで近づいてくるの。」

「なんとなくだけど。」

「なんでこんなことするんだ。からかってるのか。」

「ちがっ、べっ、べつにからかってなんかないし。」


 あー、ミアが目前まで来た。

 四つん這いになっていて、ダボっとしたパジャマを着ているからか、胸元が丸見えだ。

 

 なっ!なんということだ。

 ミアは・・ブラジャーをしていない・・・だとっ。


 もう少し、もう少し前に来い。

 そしたら、そしたら、念願の初生乳首が拝める。

 来い。あと一歩。


 ぎゅむっ。


「にゃにしゅんらミア。」

「リオがさっきから私の胸ばっかり見てるからよ。」

「べちゅに胸ばっかり見てにゃんかにゃい。」

「嘘ばっかり。」


「胸ばっかりじゃなくて、私の顔見なさいよねばかっ。」


 ミアが小さな声で言った言葉は僕には聞こえなかった。


「にゃんか言った?」

「いーや、なんにも。それに、なにか言ってたとしてもリオには教えない。」

「にゃんでらよ。」


 ふふっと笑うと、ミアは僕から離れた。


「また明日ね。リ・オ!」


 そう言ってミアは僕の部屋から出ていった。

 その日から、ミアは毎日自由時間に僕の部屋にやってきた。


 仕事には慣れてきたとはいえ、グレーンであんまり役に立てていないのに、中心人物でかわいいミアと特に仲良くしていると周囲に思われてから、男からの視線がすごく痛い。

 それに、かわいいミアがパジャマで遊びに来てくれるのはいいが、からかわれてばっかりでストレスが溜まってきた。


 はぁ。

 ここでの生活は精神的にハードだ。

 



 

 

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