第9話 婚約者からの面会の約束
私がようやく胸元の傷がお風呂に入っても傷まなくなってきたとある日のことだ。
日奈が私の髪をブラシで梳いている時、爆弾を投下した。
「詐夜子様、一か月後にジーク様が面会に来られます」
「……ジークが?」
日奈の唐突の言葉に私は改めて思考を巡らせる。
フルネームはサミュエルジーク・エカードだが、他国であるアルスタット王国の王子の一人だ。彼も私と同じように異母兄弟や姉妹を抱えている人で、王位継承権第三位の人物である。私の親友兼、婚約者だ。
心配性な彼のことだから、すぐ駆けつけてくるのかと思ったけどそうでもなかったな。日奈は変に気を負わせないようにか、私の髪を空いたまま会話を続ける。
「はい、アルスタット王国は告鵺国は遠いですから。詐夜子様がケガをしてしまったことを風の噂で聞いたそうで面会を常闇様が受け付けなかったそうです」
「……あの人は、面倒ごとは嫌いだもの」
「……詐夜子様」
日奈は戸惑った息を漏らすので、私は話題をジークの方へと戻す。
「当日の面会は、少し怖いわ」
「ジーク様は詐夜子様のことを大切に思ってくださっているって証拠ですよ!」
「だったら、嫌ではないけど」
他国の王子という立場とは言え、親友のジークの面会を拒否してもらっていたのは正直ありがたいというべきだろうか。
胸元の傷の痛みがようやくお風呂に入っても傷まなくなって来た頃だし。もし傷の痛みがまだ引いてない頃だったら、逆にジークを心配させていただろう。
常闇お父様はそれを察して……なんて淡い期待をする方が間違っているか。
私は転生ゆえの記憶を掘り出して、前世の記憶を思い出す前の自分の記憶を振り返ることにした。
あれは、私が4歳頃だ。
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