第4話 図書室にて情報収集

 私は少しでも、現状を再確認するためにも黒居家で一番多く保管されている図書室へと向かった。まだ胸元がずきずきと痛むが、そんな甘えたことばかり言ってられない。

 少なくとも、この世界が私がいた世界にしてはおかしい点がいくつもある。

 まず、転生前の黒居詐夜子、いや、私の記憶によるだけで全て決定するには情報が少なすぎる。


「はやく、調べないと……っ」


 私はもたつきながら、日奈に確認しておいた図書室の道をひたすら歩く。

 胸の傷がまだ痛むが、ここで行かないと始まらない。


「……ここで合ってる、わよね」


 私は壁に手を伝いながら、両開きの質素な装飾が施された扉のドアノブを捻る。

 開かれた場所にはたくさんの書物による紙とインクの香りが漂ってくる。

 間違いない、ここが図書室だ。


「……どれから読めばいいかしら」


 適当な本を手に取り、本のタイトルの表紙が知らない言語で描かれた文字だ。


「……世界のマナーについて?」


 私が自分の口から出てきた言葉に驚き一度口元に手を当てる。私は慌てて他の人がいないか、周囲を見て一度息を吐いてから再度手に取った本を見る。

 おそらく、転生した時の場合、前世の記憶を自覚する前の記憶はゼロじゃないことがほとんだった。

 今回もその例に漏れず記憶を中質で来たということを良しとしよう。


「……まず、この世界の名前は地球かどうか、よね」


 私は早速、手頃な本を読むために流し読みはせずしっかりと本のタイトルを確認して複数チョイスした本を使い古された形跡のある机に何冊か置く。


「……まず、この世界について、よね」


 私が選んだ本は他の他国のことの本や、おそらく私のことに関する本を並べる。

 私はまず、黒居家の歴史を紐解くことにした。


「どれどれ……?」


 本の内容をさらっと読んでいくと、黒居家と言う家系は告鵺国という国の王家であるということだ。そして、それの祖先のことなども載っている本だった。

 ページの隙間に最新の家系図の紙が挟まっていた。誰かがわざと入れた物だろう。

 家系図の中には、黒居詐夜子の家族のことについて載っていた。


「……私、地球にいないということなの?」


 まず感じたことは、地球ではありえない話ということだ。地球なら天皇がいる日本、共産主義の中国の二つは間違いなく考えられない。いや、アジア圏でも漢字を使う国が新しくできたとしても、そう簡単に感じが採用された国の名前があるはずがない。しかも他の本を探してみるに、他の他国の名前は私が知らない名前の物ばかりで驚きしか覚えない。

 そして別の本では、この世界のことについて載名称についてのことも載っていた。


無冠之檻むかんのおり……、がこの世界の、名前なの?」


 転生は転生でも異世界転生なんてサイテーだ。

 そんなの地球で積み上げてきたおばあちゃんの豆知識的な物から、専門的な知識についてのことまで……無駄になってしまうってことじゃないか。

 頭がくらくらと眩暈を覚え始める。


 ――あ、これ、ダメな奴だ。


 情報過多に頭がオーバーヒートしたのか、私は床に倒れこむ。


「詐夜子様、こんなところにいらっしゃったんですね!? って……詐夜子様? 詐夜子様!? 詐夜子様ぁああああああああああああ!!」


 日奈の叫ぶ声がするのを最後に私は思考を手放した。

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