父と母……オヤオヤ (>ω<)

 実はね……もう、三回、お父さん、お母さんが、変わったよ。そう、処分されちゃったの。そのつど最新式の先進テクノロジーを駆使したAIロボに交換されるみたいだけど。

 去年とその前の年は、ニキビができなかったから。

 あ、そういえば、あたしがゴネて〈ニキビのもと〉を飲まなかったこともあったかしら。


 今度はどうかな。

 いまのお父さん、お母さん、かなり気にいってるんだ。なんだか、より人間に近づいてきたっていうか、たまにポカしたり。あ、おそらく、完璧をめざさず、ときおりとんでもないミスをしでかすようにアルゴリズムを書き換えたみたいだよ。

 なぜそんなことに詳しいかといえば、こう見えてあたしは、知る人ぞ知るハッカーだから。うふふ。でも、ヤバイことはなあんもやってないし。ちょこちょこ悪戯する程度かな。

 あ、そんなことコクってる場合じゃないよね。〈明日のたね〉の土壌になるニキビができても、芽がでないことが多いからね。

 隣のクラスのアキちゃんは、去年、芽が出たとき、とっても誇らしそうにテレビに出て一躍スターになったけど、途中でね、芽が枯れてしまって……親切で、やさしかったアキちゃんのお父さんお母さん、育て方が悪いせいだと怒鳴られて、町内会のみんなが袋叩きにして、頭も腕も足も、もぎとられて、壊れちゃったんだもん。ひとごとではないし、ね。それを知ってるから、あたし、おもったんだ。

 ……もし、芽が出て、その芽が枯れかかったら、誰にも知らせずに、枯れていないことにしよう、って。

 だから、ペイントグッズも筆も用意してるよ。

 緑、黄、白、赤、黒の絵具も。あと、つや出しスプレーや針金、ミニペンチ……

 自分で、芽を描いてやるんだ。うふふ。

 こればっかりは、ハッカーのあたしでもどうしようもないよね、とことんアナログでいかなくっちゃ。

 それって、べつにイヤじゃないんだ。

 さて……まだ、他にもなにか必要かしら。早いうちに準備しとかなくっちゃ。

 それに定期検診をどうやれば、うまくごまかせるか、パスするか……それがいま一番のあたしの心配事しんぱいごと……。

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