第10話 告白、そして寝れない日Ⅱ

月曜日、亜以子に告白された余韻残るまま大学へ行った太一。

そんな太一にこの後嘘みたいな出来事が起こることをまだ誰も知らなかった。


その日の放課後、学内のとある教室で太一を待っていたのは、テニスサークルの先輩である長谷川礼那だった。

「太一くん、いきなり呼び出してごめんね」

「どうしたんですか?礼那先輩」

「ちょっとね、今日はサークルのことではないんだけど・・・太一くんに伝えたいことがあって」


「私がサークル初日に太一くんにテニスを教えたじゃない?」

「はい」

「そしたら太一くん、みるみるうちに上達して・・・そんな太一くんを見てたらかっこいいなと思いだした自分がいて・・・」


この時、数日前に起きた亜以子との出来事が太一の脳裏をよぎった。


「こんな私でよければ・・・付き合ってくれませんか!」






その日の夜、自分のアパートに着くなり太一はベッドに横たわり、この数日間に二度も起こった信じられないような出来事を振り返っていた。


(ま、まさか、小さい頃から本が友達、俺から本をとってしまえば何のとりえも残らないような男が、女子に続けざまに告白されるなんて。)



気づけば時計は深夜の1:00を回っていたが、亜以子に告白されたときと同じように、このことが一晩中頭から離れなかった太一は、この日も結局一睡もできずに翌日の朝を迎えるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る