第三十七節:生徒会長の決断

 鈍い振動の間隔が、段々狭まって来のが分かる。連邦宇宙軍の戦艦が近づきつつ有るのだろう。長距離射撃で無いから砲塔へのエネルギー注入時間も短くて済む。その分危ないと言う事だった。

 学園の空はコロナが張ったシールドで昼間の様に蒼く見える。そこに着弾する粒子砲の煌めきは、まるで花火の様だった。


 あたし達は自室に戻り、それぞれ荷物を抱えて、再び花壇中央の温室前に集合した。


 縦揺れだった、攻撃の振動は、今度は横揺れも加わり始めた。おそらく、兵士達が地上に降下を終了したのだろう。地上攻撃にもコロナは耐えなければいけないから、立場は益々危うくなる。


 一際大きな振動が伝わる。


 それに合わせて崩落する図書館。重厚な造りで歴史的価値も高く、何よりも貴重な蔵書が失われる事に、あたしは酷く心が痛んだ。


「さ、早く行こう」


 あたし達は連れ立ってコロナも元に急いだ。途中、何度か大きな振動が有ったが、有る時を境に振動はピタリとやんだ。


「コロナ、どうしたの?」


 コロナが空中にモニターを開き、外の様子を見せてくれた。攻撃が終わった訳ではない。今度は地上軍が学園めがけて突入したのだ。艦砲射撃の長距離攻撃から白兵戦に切り替わった瞬間だった。兵士の数は、思った程、多くは無い、が、彼等の装備は最新型で、兵士一人で中隊一個分の戦力が有る。そして、格闘のプロでも有る彼等は、抵抗する者は、たとえ女子学生で有ろうとも容赦しない筈だ。

 生徒会長達、生徒会の面々は、抵抗する意思を見せなかった。寮の中に兵士達が突入するのがモニターにはっきりと映し出され、学生達は皆、素直に投降した様だった。


「正直、生徒会長の事だから、無駄に抵抗でもしたら、どうしようって思ってたんですのよ、良かったですわ」


 ナルルが心配そうな表情でそう言ったが、あたしは生徒会長は、多分、無駄な抵抗はしないだろうと踏んでいた。問題は、この場所を、薄情するかどうかだった。


「あ、あれ、生徒会長じゃ…」


 スェルがモニターの端っこを指差してそう叫んだ。皆の視線がその言ってんに注がれる。


「確かに、そうみたいですわね」


 ナルルもそれが確認出来たらしく、その声に皆の緊張が高まる。

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