第三十五節:攻撃
最後の夜を迎えた。
静かな夜だった。寮の部屋から見えていた近隣の明かりもまばらになっていて、人通りも少なくなっていた。星の住人の大部分が脱出したからであろうか。元々人口の少ないこの星において、全人口が脱出すると言う行為は、意外と簡単に出来るのであろう。シャトルも大幅に増便されて宇宙空港は、大型の国際空港並みの混雑状態を呈している様だった。
あたしは、悪だくみ同好会の面々と一緒に再び、コロナの元を訪れた。
「どう、準備は出来てる?」
『ありがとう、ニーナさん。準備、ほぼ終わりました。明日の朝には、飛び立てると思います』
「ねぇ、コロナ…コロナの星って、どんな星なの?」
あたしの問いに、コロナは少しはしゃいだ様な口調で答えた。
『とても住み易い星ですよ。空が綺麗で、私達の様な、機械生命体と、純粋な生命体が、お互いの事を思いやって暮らしてる星です』
「へぇ…」
『空気も綺麗だし、エネルギーは潤沢に有って、所謂、ダイソン球っていう、太陽の周りに廻らせた発電機見たいので潤沢に電気が発電できてるのでエネルギーには困ってません。一時期、二酸化炭素が問題になった事は有りますが、ライフスタイルの変化や、技術革新も有って…自然も有るし、ハイテクもある。そんな星です』
ニーナは思った。要するに、昔の地球みたいな環境なので有ろうと推察された。地球は機械生命体は実用化されて居ないから、機械と人間の共存と言うのは未だ先の話で有ろうが、そう言う関連の技術は盛んに研究されているし、何時かそういう時が来るのかも知れないとニーナは思った。
『ニーナさん』
コロナが少し改まった口調であたしに向かってそう言った。
「ん?なぁに?」
『本当にありがとうございます。なんとお礼したら良いか。正直、私は、この星で、エネルギーが尽きるまで暮らさなければイケないかと思っていました。正直、この星の人には、好きになれない方もおられましたけど、でも、ニーナさんは私の事を真剣に考えてくれて……』
あたしは、なんだかくすぐったい気持になった。機械にこんなに褒められると言うのも、ちょっと経験出来ない体験で有る事は断言できる。第一に『良い人』と言われる事自体が、恥ずかしかった。
「お、ニーナ、褒められてるぞ」
ケイラがあたしをちょっと茶化す。あたしは、恥ずかしさで、後頭部をぽりぽりと掻きながら照れ笑いを作って見せた。
『警報!』
室内に危険を知らせるアラームが鳴り響いた。コロナは、何か危険を察知したらしかった。
「どうしたの、コロナ」
あたしはちょっと慌てて、コロナにそう尋ねた。
『武装した兵士が降下して来ます。目標はどうやら、ここの様です』
あたし達は皆で顔を見合わせた。おそらく宇宙軍が投入した兵士だろう。そしてコロナの奪還作戦が開始されたのだ。
「コロナ、未だ飛べないの?」
コロナは少し考えてから、少しさびしそうに答えた。
『はい、残念ながら、まだエンジンのチェックが終わっていません。このまま飛び出したら、跳躍航法が出来ない可能性が有ります』
宇宙軍は、コロナが動けないのを良い事に、力で制圧するつもりだろうか?いや、軍の考える事だ、可能性は有るだろう。
「どうなさいます、ニーナ…」
ナルルが少し気弱な表情であたしを見詰める。しかし、相手が軍隊では、ただの女子高生風情に太刀打ちできる訳が無い。しかし、何か手立ては有る筈だ、あたし達にも出来る手立てが。
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