第二十七節:慈愛の表情…

 扉が開くのと同時に室内が光で満たされていく。神秘的な光の渦は凛と立つ生徒会長に乱反射して彼女をぼうっと浮かび上がらせる。


「な……」


 そう唸ったあたしに向かって生徒会長は微笑みを見せた。その微笑みはさっきまで見せていた、氷の様な微笑みでは無くて、慈愛に満ちた、全てが許される様な微笑みだった。


「いらっしゃい、こちらよ」


 あたしは、差し出された彼女の手を握ると、一緒に部屋の中に入って行った。


 部屋の中は光のシャワーと言って良かった。中央には大きく煌めくシャンデリアを思わせる構造物。そこからタイルの様に敷きつめられた約30センチ角の箱。それは無数に規則正しく埋め込まれて、上部のシャンデリアに光のケーブルで接続されていた。


「良く見て、これがサーバーよ」


 生徒会長は、陶酔した表情でサーバーを見上げると、それは彼女に答える様に一層光り輝いて見せた。


「これが……遺跡?」


 自分の目の前に有る物が信じられなかった。光の集合体とも理解できるサーバーは低い唸りを上げながら輝く。


「マーチンは、最初これが何か理解出来なかった。そして一人で発掘を続けている間に、偶然これを起動する方法を見つけたの。そして、それを実行に移した」


 あたしは、今目の前に有る物は、早い話が大型のコンピューターで有る事を理解した。冗談では無い。こんな得体の知れない物の信者に成れと彼女は言うのか…


「そして、次に探し出したのが、サーバーとコンタクトする方法。これは、従来のコンピューターとは違って、データの入出力デバイスが存在しない。そして更に発掘は続いて、一見、鉱物と思われた微粒子が、難・マシンで、それは増殖能力を持ち、血液中で有る一定の濃度以上に成ると、自分の体をデバイスとして、このサーバーと通信できる事が分ったの」


 あたしは皮肉を一杯に込めて生徒会長にこう言った。


「機械に支配されてるだけじゃない…あたしの意思は自分で決めるわ」


 生徒会長はあたしの言う事を聞いて、くすりと小さく嗤った。


「支配…違うわ、共生よ。私達は、このサーバーと共存する事に決めたの」

「共生?」


 あたしは生徒会長の言う事が、良く理解出来なかった。


「この星だけじゃ無いわ。全ての星が、このサーバーと共に暮らすの。これは宇宙の全ての知識と揺るがない判断力を持っている。脆弱な連邦政府など、この足元にも及ばない」


 あたしは背筋が凍る様な感覚に襲われて生徒会長の手を振り払って部屋から出ようとしました。


「刺激が強すぎたかしら?」


 生徒会緒は微笑みながら、再びあたしの手を取ると、サーバーの有る部屋から出て二人でエレベーターに乗ると地上に向かって移動した。

 そして、生徒会長は、意外な事に、あたしをそのまま返してくれたのだ。ただし、この件は他言無用と言う条件付きで。

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