第4章「崩壊・そして脱出」
第二十六節:秘密の花園…
あたしの決心は変わらなかった。この学園の何もかもが気に入らない。従って、生徒会長選挙に立候補するなどと言う事は、万に一つも有り得ないのだ。
あたしは放課後、再び生徒会室に足を運んだ。生徒会長と話をつける為に。
「良く分っているわ、ニーナさん。あなたは、この学園の本当の素晴らしさを知らないから、そんな事が言えるのね。いいわ、たしと一緒に来て…全部お見せするわ。返事はそれからで宜しいですわ」
生徒会長は、そう言うと、席からゆっくりと立ち上がり、ドアに向かって歩き出した。それに何時もの取り巻きが続く。
学園の中央には一際目を引く大きな花壇が有った。その中央には丸屋根でガラス張りの小さな温室。かなり古い作りで、今現在は、温室としての機能をほとんどしていない。放っておけば数年以内に、その姿を消してしまうだろうと思われる物だった。
生徒会長は、その入口の扉を開いて、あたしを中に招き入れる。取り巻き二人は、入口を守る様に、その場に残った。外観通り、その中は狭くて人が三人も入ればいっぱいに成る位の広さの温室…
「よく見てて」
生徒会長は壁に取り付けられている小さな温度調整用の端末に認証番号と思われる番号を打ち込み、リターンキーを押した。そして、ぴっと言う音がして番号が認証された事をあたし達に告げた。同時に地面が沈み込む。
「な…何?」
困惑するあたしの表情を楽しんでいるかの様に生徒会長が微笑む。
「大丈夫、心配する事は無いわ。ただのエレベーターよ」
生徒会長は、落ち着いた表情で、あたしを見詰めてにこりと微笑む。その微笑みは相変わらず氷を連想させる。彼女の言葉通り、エレベーターは間も無く止まり、あたりが暗闇に包まれた。
「クリス・アロンです」
生徒会長が、そう言うと同時に室内の照明が点灯された。そして、目の前には、このクラシカルな学園とは不釣り合いな、金属質の扉。横にはタッチパネル。
そのタッチパネルの電源が自動的に入り、キーボードが表示された。生徒会長は、そのキーボードから再び認証パスワードを入力する。そしてそれは受理されて、ゆっくりと扉が開いて行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます