第二十四節:サーバーの正体
生徒会長の告白を聞いて、寮に戻ったあたしは悪だくみ同好会を呼び出し、この事を包み隠さず話した。
「やっぱり、生徒会長は、何かとてつもない事を――いえ、そのサーバーとやらの意思で操られて、何か考ええている様ですわね」
リルルが少し不安げな表情で、あたし達に向かってそう言った。生徒会長が、何かを企んでいるのは、この一件で確実になったのだが、何をしようとしてるかは未だに予測の範疇を超えて居ない。
「なんだか、花壇当番が怖いわ。その、『ナノ・マシン』とやらに体を乗っ取られそうな気がして」
ユキがちょっと困惑した表情でそう言ったが、それは皆も同じ考えで、このまま、花壇当番や、赤いスミレに近づくのは危険なのではないかと言う思いに駆られて居た。
「乾いてる時は無害なんだろ、だったらそれ程神経質になる事は無いんじゃないかな」
ケイラが少し楽観的な意見を述べたが、あまり説得力は無かった。何しろ人間の体のほとんどは、水分で出来て居るんだから、ナノ・マシンが活動増殖する環境は整っているのだ。
こんこん…
ドアをノックする音が部屋に響く。あたし達の視線はドアに向かって注がれる。そして、扉の向こうに居る人物が誰であるかが予測できたから、あたし達は、軽いパニック所帯に陥った。
「ニ、ニーナ…出なさいよ」
ケイラが声を押し殺して絞り出す様にそう言った。まぁ、ここはあたしの部屋だから、あたしが出ない訳には行かない。しかし、予想通りの人物だったとしたら、これは怖い。
でも、考えて居ても事態の進展には繋がらないから、あたしは、意を決して立ち上がると扉の前で深呼吸。
「はい」
あたしはそう返事をしてから、ゆっくり部屋の扉を開いた。
「こんばんは、ニーナ」
そこに居たのは、寮長のハルだった。皆がその事を確認して、ほうっと大きく溜息をついた。生徒会長が現れる事を予想して居た皆の意識に安堵の雰囲気が広がった。
「え~と、何か…」
あたしの姿を通り越して、ハル寮長の視線が部屋の中に飛んでいく。そこにいた者に対して、一応の注意。寮長と言う立場上、仕方のない行為だった。
「あら、勝手な部屋の訪問は、一応禁止よ。なるべく早く部屋に戻りなさいね」
まぁ、規則とは言っても、効力無いに等しい規則だから、ハル寮長の口調も、それ程厳しい物では無い。逆に笑顔さえ浮かべて居る。そのハル寮長が、あたしに向かって行為つた。
「ニーナ、ちょっと、来て欲しいのだけれど…」
あたしは、来たなと身構える。ハル寮長も、どうやら生徒会寄りの人物らしい事が段々と分って来たからだ。しかし、良い機会だ、あたしはハル寮長とも話がして見たくなって、彼女の申し出を断る事はしなかった。部屋を出る時、中の面々に軽くウィンクして部屋を出ると、二人連れ立って、寮長室に向かって石造りの廊下を歩いて行った。
「生徒会長からは、話を聞いてるんでしょう?」
ハル寮長が、明るくそう尋ねた。あたしは「ええ」と短く答えて寮長の後ろ姿に目をやった。ポニーテールがゆらゆら揺れる。彼女の見た感じは、本当に頼りになる姉と言う感じなのだが、彼女にも生徒会長と同じ秘密が有るのだろうか。
「さ、入って」
ハル寮長は、寮長室の扉を開くと、あたしを部屋の中に引き入れた。
寮長とは言えども若い女性の部屋で有る。綺麗に整頓され、花等も飾られている。ただそれが『赤いスミレ』と言う処を除けば。
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