11:復讐
夏休みに入るまでの学校生活は苦痛でしかなかった。
私を裏切った2人と一緒に登下校するのはとてもキツかった。
2人が私に向けてくる笑顔を見ると、いつもなら心が幸せになったのだが、裏切られた事実を知った今となっては醜悪にしか見えない。
私は吐き気をなんとか堪えながら、いつも通りを装って2人と接した。
苦しい。
こんな苦しみ味わいたくない。
私は佐久間くんに会いたくなってしまった。
この苦しみを共有できるのは佐久間くんしかいない。
早く佐久間くんに会って、この苦しみをぶつけて慰めて欲しかった。
偽の恋人になった佐久間くんのことが、本当に好きになったというわけではない。
だけど、佐久間くんに依存しているのは自分でも分かっていた。
あれから佐久間くんとは毎日のように夜に会ったり、メッセージや電話をしている。
今は佐久間くんと話しているときが、一番心が安らぐ時間になっていたのだ。
そしてようやく夏休みに入って、あの2人と毎日顔を合わせなくても良くなった。
こうなると私の心もちょっと落ち着いてきた。
コタくんは夏休み期間はバイトを増やすと言っていたのだが、本当にバイトをしているのか、それとも瞳ちゃんと密会しているのか確かめるために何度かストーカーみたいに後を追った。
数日間コタくんの後をつけても瞳ちゃんと会うところを見ることはできなかった。
だけど、あの写真を見てしまっては、2人が浮気をしているのは間違いないだろう。
なので、コタくんや瞳ちゃんから遊ぼうと誘われても、私は佐久間くんと決めた通り予定があると言って全て断った。
断ったのにもし家に来られて、予定がないことがバレると面倒だったので、予定を断った日は佐久間くんと会うことにしていた。
夏休みに入って佐久間くんに会うのが6回目になったとき、公園でお話をしているとまた写真を手渡してきた。
その写真に写っていたのは、コタくんと瞳ちゃんがラブホテルから出てくるところだった。
しかも一枚ではなく似たような写真が何枚もあったのだ。
「あいつらは夏休みも平気で何回も会ってるみたいだな」
「許せない。何回私を裏切ったら気が済むの……」
私は悔しくて涙が自然と出てしまう。
「大丈夫。俺がそばにいるから。三島……いや、弥生。俺に甘えてくれ。俺がお前を救ってやるから」
佐久間くんから弥生と呼び捨てにされて、なんか胸が暖かくなるのが分かった。
なんで?
私佐久間くんに呼び捨てにされて嬉しいって思ってる。
「佐久間くん。ありがとう」
「佐久間なんて呼ばずに、俺のことも名前で呼び捨てにしてくれよ」
「うん。……ミチル、ありがとう」
私が名前を言うと、ミチルは手のひらで私の頬をさすって、顔を近付けてきた。
あっ、キスされちゃう。
私は一瞬躊躇したけど、コタくんが裏切ったことを思い出して、ミチルのキスをそのまま受け入れた。
そして、そのままミチルの家に行って私は初めてコタくん以外の男の子とエッチをした。
正直コタくんとのエッチの方が気持ち良かったけど、私のことを裏切って瞳ちゃんとエッチしているあいつらに復讐をしていると思ったら、なんだか下腹部が熱くなって凄く興奮をしてしまった。
一度エッチをしてしまうと理性なんていうものは簡単に決壊してしまう。
その日を境に、私はミチルと何度も何度もエッチをした。
それこそ、コタくんたちとは夏休みに一度も会わず、毎日毎日ミチルとエッチをしまくった。
ミチルの家は日中は両親が働きに行っているし、夜も遅いので何も遠慮することがなかったのだ。
私はコタくんたちがした裏切りエッチにはまっていた。
ミチルとエッチするたびに、ザマァみろって思ってしまう。
それがまた気持ち良さを高めてくれるのだった。
―
夏休みが終わって新学期になると、私はコタくんと瞳ちゃんを置いて、一人だけで学校へ登校した。
今日はミチルと決めていた復讐をする日だ。
私が教室にいると、コタくんと瞳ちゃんが一緒に登校してきた。
そしてすぐに私の元に来て、「どうして先に行っちゃうんだよ? あと、夏休み家に行ってもいなかったし、メッセージも帰ってこない。何をしてたんだ?」と聞いてきた。
その声は怒った感じではなく、冷静な感じだったのが無性に腹が立ってしまう。
お前たちが私を裏切ってエッチしまくってたこと知ってるんだよ。
私はそうぶちまけたい気持ちを抑えて、「ごめんね。忙しかったんだ。それでコタくん。放課後に体育館裏に来てくれないかな? もちろん一人でお願いね」といつも通りの声でコタくんにお願いをした。
コタくんは訝しげな表情をしたけど「あぁ、分かった。そこで色々と聞かせてくれな?」と言ってきた。
うん。大丈夫だよ。色々とお話ししようね、色々と。
そして放課後になり体育館裏に到着して10分後くらいにコタくんが姿を現した。
「弥生どうしたっていうんだよ? 夏休みに何があったんだ?」
到着するや否や、コタくんは私に夏休み何してたのか聞いてきた。
「予定があるって言ったでしょ?」
「だからそれがなんの予定だったのかって聞いてるんだよ」
「コタくんと同じことしてたんだよ? コタくんも忙しかったみたいだもんね?」
「同じこと? 弥生もバイトしてたのか?」
バイト?
ここに来てまだしらばっくれるんだね。
「ううん。バイトなんてしてないよ。――まぁ、いいや。コタくん。もう私たち別れましょ?」
「は? 別れる? なんでだよ?」
「だってもうコタくんより好きな人がいるんだもん。裏切ったあなたよりも好きなの。傷付いた私を癒してくれた大切な人がいるの」
私がそういうと、体育館の影から一人の男の子が近付いてくる。
その男の子はミチルだ。
「おい、ミチル。なんでお前がここにいるんだよ?」
「今の話を聞いて察してるだろ?」
「何を――」
コタくんが詰め寄ろうとしたそのとき、ミチルは私の顎を掴んでキスをしてきた。
私もミチルの首に腕を回して、キスを受け入れる。
いや、それどころか積極的にミチルの舌を動かして、グチャグチャに絡ませ合った。
「や、やめてくれ――」
横目でコタくんを見ると涙を流していた。
いい気味だ。
その姿を見た私はさっきよりも興奮して、ミチルの下半身に私の下半身を擦り付ける。
ミチルも私の胸を激しく揉みしだいていた。
「あっ……んふぅ……あん………」
キスしながら声が漏れてしまう。
学校というシチュエーションと私を裏切った男の前で、大好きな人とキス以上のことをしていることに興奮してしまったのだ。
すると「オゲェェェェ」という音が聞こえてきた。
コタくんが吐いたのだ。
あははははははは。
コタくんも吐いた。
私と一緒だね。
私もあなたの写真を見たとき吐いたよ。
たくさん吐いたんだよ。
家でも思い出すたびに吐いてたの。
苦しかった。
とても苦しかったよ。
ザマァみろ。
私を苦しめた罰だよ。
「あぁ、汚いなぁ。そういうことだからさ、もう私に関わらないでね、浜崎くん」
私とミチルは嘔吐しながら崩れ落ちてる浜崎くんの脇を歩きながら、「これからエッチしにいこ」とわざと聞こえるようにミチルに話しかけた。
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