第59話 助走に入りました
ルイはまた三日後に城に参上した。それはこの国ノーズレスクの王と謁見をして、また多くの貴族の前で説明をする事になったのだ。キャラハン公爵とフィロデンが主導しルイは補足するという感じで打ち合わせをしていたが、ノーズレスクの貴族からルイは怒涛のように質問を浴びせられた。
かの国の住民たちと自分の命を守る為には、どこかの国に協力をしてもらわなければならない。しかし小娘の要望など聞く耳を持ち合わせていないノーズレスクの貴族たいからは、協力など期待できそうになかった。しかし居合わせたサウーザの王子たちが味方になってくれた事で助けられた。協力してくれた暁には水の粉を提供するとしている、他にもかの国から提示されていたようなレシピを無料提供するのだから損はないではないかと、口添えをしてくれたのだ。
なんとか、ノーズレスクの貴族たちに納得をしてもらい協力を得た。
「シオン王子、ありがとうございました。これで前に進みそうです」
ルイはサウーザにはなんの利益もないのになぜ助けてくれるのかとシオンに聞いた。
「サウーザはこの大陸で一番国なのだ。その国が助けを求めている者に対して利益がないから支援はしない、などとそんな恥じさらしな国家ではない!サウーザは誇り高き国なのだ。利益だけが目的的ではない。だが損するような事もしないよ」
シオンはルイににっこりと笑う
まあ、荒れ地をかの国の住民に押し付けてしまえと思っているのだろうが、こちらには神獣がいる。こうなったら私が面倒みるよ。祖国の住民が死なれでもしたら後味悪いしね。
ルイはキャラハン公爵とシオンには、ルイ特性のFAXもどきを贈呈した。これはお互いが持っていないと使えないニコイチ商品だと説明して緊急の時はこれを使ってくれと渡した。
キャラハン公爵はルイをFAXとルイを交互に見ている。
「ああ、君だったのか」
と、呟いた。
そしてロザージュからの話だと過去に帰って来なかった子供の親や親族たちが結束して住民に話をしてくれているらしい。特にお年寄りはこの地で死ぬと話を聞いてくれないとかで、なんとか説得を続けてくれているようだ。
若い人たちは未来がないのなら国を出る事に積極的で王族にバレないように移住の話を進めている。農家や酪農をしている人たちは城から離れている事もあり家畜たちも連れて移住出来るように準備を進めているようだ。
まず、パルドブロムに移住をしてもらう事にした。パルドブロムには帰りにシオンたちがノーズレスクの帰りに立ち寄ってもらい話を付けてくると言っていた。パルドブロムには支援をたくさんしているので我が国の言いなりなのだと、シオンは言っている。時々口が悪くなるシオンであった。
◇
「ハート、ハートはどこにいるの?」
ローズがシオンと共に帰ってきていた。ローズは帰って来たその日にハートを捜し回りお付きのメイドや教育係を困らせていた。ハートは付与師の件やかの国での件で夫フィロデンと共に忙しくしていた。
「ハート、見つけたわ」
と、腕を取られたのはキャラハン公爵やフィロデンがいる会議室だ。
「ローズ、こんな所まで…申し訳ございません。下がります」
「ああ、任せるよ」
「ローズ、やめて。私は夫と一緒に仕事をしているの。こんな所まで押しかけてこないで」
「仕事って、、何言っているのハートったら。女は家で旦那様を迎えるのが仕事よ」
「あなたはそうかもね。でも私は違うわ」
「ハート?」
「ローズ、あなたにも国民と夫を支える仕事があるのよ。妃教育を逃げ回っているんでしょ?私にさせようという貴族がいるけど、私は王太子の妻ではないから妃教育なんて受けないわ」
「でもでも、ハートの方が頭がいいし、ハートが裏で私の代わりにお仕事をして私は国民に手を振ったりするわ。陛下もそんな感じでしょう?」
「陛下は他の国々の王族たちと対等に渡り歩いているわ。それにローズ、それって私になにかメリットがあるの?」
「え?」
「どうして私がローズの代わりに裏の妃の仕事をしなくちゃいけないの?」
「そ、それは…ハートの方が優秀で…」
「私にも私の人生があるわ。もうお互いに人妻なのよ?守るべきものがお互いに出来たわ。私はフィロ、あなたは王太子様をあなたなりに守らなければ」
「ハート…」
「もう無断でこちらに押しかけないで、見張りや執事にも予定のないお客様は通すなと今後厳しくするわ。あなたもよ、ローズ。騎士を呼んで取り押さえてもらうわ」
「そんな…」
ローズは泣きながら自分の住まいに戻った。ローズとハートは城の別の棟に住んでいる為、すごく近くに住んでいた。近い事をいい事にローズは毎日のようにハートの住まいに来ていた。心休めないのがフィロデンだった。王太子の妃の為、そしてそんな妃の態度に煮え切らないハートに呆れ、フィロデンも強く言わなかったのだ。
泣き返ったローズは国王とキャラハン公爵との謁見が終わり休んでいたシオンとカインの所に訴えに行った。
「ハートがひどいのよ!」
わあわあと、泣いているローズをなんとかすると言い部屋に戻した。
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